なんにもなくしたくなんかないよね
外の空気を吸おうとヒツジヤを出ると、空の縁が白んでいた。
軽く胸を張り、明け方の凍てついた外気を肺いっぱい吸いこむ。清涼感が四肢を満たし、寝不足で重い頭がしゃきっとした。
(星月さんに変な心配させちゃったし、ちゃっちゃと切り替えないと)
洗顔後もうっすらむくんだままの目蓋でまばたきを繰り返す。
ここは私に任せて、少しそのあたりを歩いてきてはどうでしょう――数分前、仕込み中にそう提案したのは星月さんだった。普段通りふるまっているつもりでも傍から見れば違うらしい。
自戒も籠めて従った私は彼女に小豆の煮熟を任せ、ヒツジヤの店先で何をするでもなく暁の空を眺めている。
「……油売ってても仕方ないや。っし!」
両頬を挟むようにパン! と張り、厨房に戻るべく踵を返す。
出入り口の扉を開くと、店を出ようとする人影とかちあった。驚く私と相手の間でカランコロンとドアベルが鳴る。
「わっ!……杏子ちゃん?」
「ひゃっ!?……あ、柊さん。おはようございます」
彼女は初めて会った日と同じ帽子とケープコートを着ていた。背中には身長の半分ほどある大きな鞄を背負っている。ももくりのトラックを手伝いに行く時の装いとは違っていた。
「おはよう。あれ、今日はももくりの仕込みは?」
「今朝は別の約束があったので特別にお休みをいただきました。午後からはレジに入ります」
そつなく説明する杏子ちゃん。原稿を読み上げるような固さがにじみ出ているのが気にかかる。
「それでは、失礼します」
「うん。ところでそれ、サックス? 誰かと吹くの?」
背負い物について指摘すると、彼女の歩みがぴたりと停止した。
「……お店に来てた子いるじゃないですか、眼鏡の。あの子とちょっと合わせます」
「そうなんだ。いってらっしゃい」
ひらひらと手を振ると、安堵したように杏子ちゃんの頬がゆるんだ。こちらに背を向け、ヒツジヤの駐車スペースを足早に横切っていく。
その背中を見送っていると、ふいに網膜が別のものを映した。
「――ぁ、」
薄暗く青みがかった景色を、冷たく乾いた風が吹き通る。
杏子ちゃんの小さな背と、滝野のあの寂しそうな背が、重なった。
「杏子ちゃんは、音楽やめちゃうの?」
無意識に呼び止めてしまっていた。
再び彼女の足が歩を止める。
「……」
おもむろに振り返る杏子ちゃんの目は手負いの獣にも似ていた。
こちらを鋭く睨みつけながら、刺すような声音で問いかけてくる。
「母から聞いたんですか」
「ごめん」
「いいですけど。それで、柊さんは何が言いたいんですか」
詰められてごくりと唾を飲みこむ。
なんでもない。ごめん。
そう言ってこの場からさっさと逃げ出したかった。
けど、両足はまるでその場に縫いつけられたかのように動かない。
「私は、別にいいと思う。たい焼きが楽器の代わりになるなら、たぶんそれでもいいんだよ」
乾ききった口は嘘か本心かもわからない言葉を紡ぎ出す。
他人の言葉で話しているみたいで、変に胸が息苦しかった。
「頑張ろうね、一丁焼き作り。ちゃんとヒツジヤを再現できたらもし閉店しても大丈夫だし」
唇を曲げて、目元を歪めて、お姉さんらしく笑顔を作る。
杏子ちゃんの琥珀色の大きな瞳が、かっと強く見開かれた。
「何言ってるんですか?」
「――え?」
ふざけてるんですか? といった面持ちで杏子ちゃんは距離を詰めてくる。
つま先が触れあうほどの至近距離から彼女は私を見上げた。頭半分小さい身体から烈火のような怒気が立ち上る。
「勘違いしてるので言っときますけど。私はうちのたい焼きが作れればそれでいいわけじゃあありません」
「え?……へ?」
「私は今のヒツジヤを続けたいんです。たい焼きはそのメニューだから、教えてもらってない最後のひとつだから、作れるようになりたいんです。お母さんがやめる店を守るために」
「あ……」
言葉を失う私をよそに杏子ちゃんは一気呵成に言い切る。
「小さい頃から過ごしてたんです。愛着ないわけないじゃないですか。お母さんが店をやめるなら私がやるしかない。閉店なんて、嫌だ」
苦しげに眉を寄せ、最後は下を向いて思いの丈を吐露した。
もうもうとあがる白い息が、私のシャツジャケットに触れては消えた。
「……ねえ、杏子ちゃん」
荒れ狂う夜の海を往くさなか、しるべの星を見つけた航海士。
今の私の気持ちを表現するなら、きっとこんな感じだった。
「怒らせついでに、ひとつ変なこと訊いていいかな?」
今度は意識して質問をする。彼女の目がくりんとこちらを向く。
「なんですか」
「もし私か滝野か、杏子ちゃんがヒツジヤのメニュー全部マスターしてさ。似たような立地で、似たような間取りの喫茶店をオープンしたら。杏子ちゃんは今のヒツジヤが閉店することに納得できる?」
「できません」
「完璧な代わりになるんだよ? なら閉店しちゃってもおんなじじゃん」
「なりませんし、同じじゃありません。だいたい、代わりになるかならないかなんてそもそも関係ないです」
ずれた鞄を背負い直し、杏子ちゃんは視線で私の目を射抜く。
「私は、なくしたくないんだから」
その一言は、この旅で聞いたどんな声よりも凛として響いた。
「どれだけ代わりがあっても、代わりのほうが実は良いものだとしても。私は、私の大切なものがなくなるのは絶対にごめんです」
「――――」
一条の音が胸を貫く。
突き抜けた言葉が視界を晴らす。
先ほどまで感じていた息苦しさが嘘のように立ち消えていく。
(――――なんだ。なんて、簡単な話)
それはあまりにも単純で揺るぎない、ひとりの子どもの答えだった。
「……何きょとんとしてるんですか。それで、もう行っていいですか?」
「……うん、ありがとう。その前に、お礼に見てもらいたいものがあるんだけど」
「はい?」
訝しむ彼女の前でポケットから取り出したスマホを操作する。
動画サイトに接続し、登録中のチャンネルからページを開く。杏子ちゃんは私の隣に回りこんで画面を覗きこんできた。
「外国のミュージックフェス……? わひゃっ!?」
「はい、イヤホン。私オープン派だから、耳に合わなかったらごめんね」
さらに首をかしげる彼女の片耳にずぼりとイヤホンをはめた。突然挿入された感覚に彼女は奇声をあげて悶える。
「再生するね」
「なんなんですかもう!……って、……」
演奏が流れ始めるとともに杏子ちゃんの怒声がぱたりと止む。
「それじゃ私も、と」
もう片方のイヤホンをはめると、澄んだ高音が耳を吹き抜けた。
継ぎ目を感じさせないなめらかなメロディが軽快に踊り、跳ねる。
パーカッションとギター、ピアノが織り成す芳醇な楽曲の世界。それらを先導するように彼女のサックスが空間を駆け抜ける。
絶え間なく、情熱的で、そして何よりも楽しそうな主旋律。弾けるように連符を駆け上がり、かと思えばするりと滑り降りる。
無邪気な音、艶めいた音、深い余韻に満たされた落ち着いた音。めくるめく表情を変える音色はしかしそのどれもが美しい。
壇上に立つのは見知った顔。波打つブロンドヘアーの彼女。
ぴかぴかのサックスを奏でる彼女は眩しいほどの笑顔だった。
(口元塞がってるのに、目だけで充分伝わってくるんだよね)
心の底から楽しそうな人の姿は、それだけで胸を打つ。
「ひとりの時にたまに聴いてるんだ。腐れ縁の演奏なんだけど」
神妙な面持ちで黙りこくっていた杏子ちゃんが面を上げる。
「お友達の……ですか?」
「うん。これはジャズの演奏会だから結構ラフな感じだけど、普段はもっとフォーマルなコンテストとかにも出場してたんだって」
他にもいくつか聴いたけど私はこの演奏が一番好きだ。終始明るくて、ちょっと浮かれてて、幸福感に満ち溢れている。この世の幸せという幸せをいっぱいに詰めて形にしたよう。
聴き慣れた演奏が止み、一抹の静寂の後に拍手が鳴る。
ブラウザを落として杏子ちゃんを見ると、彼女の唇は震えていた。
「……同じサックスだからわかります。この人、すごい。私なんかより全然……柊さんの友達なんですよね? 楽団に在籍してるんですか?」
「やめちゃった」
「え?」
彼女の耳からそっとイヤホンを抜いて、代わりに現在を吹きこむ。
「そいつ、音楽やめちゃったんだよ。高校で私と遊ぶために」
「…………」
言葉を失い、唖然とする杏子ちゃんに小さく微笑みかける。
「いや、恥ずかしい話なんだけどね。私、高校上がる前あたりにちょっぴりメンタルやっちゃったんだ。薬飲んだりなんだりしてないと生活できない時期とかあって」
パンツの脇ポケットに手で触れる。柔らかい感触にほっとする。
「その頃転校してきたこいつと色々あって友達になった。こいつ、普段ちゃらんぽらんな癖に他人のことになると世話焼きでね。全部ヤになって腐ってる私に付きっきりで一緒にいてくれた。高校進学したら入るつもりだった吹部も、あっさり蹴って」
膨らんだ生地の下には彼女に貰ったお守りを忍ばせてある。
「三食のご飯も一緒に食べて、ちょくちょく家に泊まったりもして。休日には引きこもってる私を外に引っ張り出したりもしてた。そいつの妹さんとかミウミウ……友達にも紹介されたよ。当時は迷惑だったけど、今思うと結構ありがたかったかな」
逆のポケットにスマホをしまうと、中でイヤホンのコードが絡まる。
「あの子がすごい演奏者だって知ったのは、高一終わる前くらい」
仕方ないので再び取り出して、くしゃくしゃのコードをほぐしていく。
「ネットでジャズ漁ってたら偶然さっきの演奏動画見つけてさ。慌ててそいつにまだ吹いてるのかって訊いたら『もういいんだよ~』って。もったいないからまた始めなよって言っても『もういい』の一点張り。それで私と遊んでるんだもん。もったいないおばけが出るよ」
「もったいな……?」
「公共広告機構。知らない?」
くるくると巻いてまとめたイヤホンを再度ポケットに収納する。
矢継ぎ早に喋り倒したせいか、無性に喉が渇いていた。
「私さ、後悔してるんだよね。あいつに依存しまくってたこと」
――
どうでもいい軽口で無用な負い目を感じた彼女の献身。それによって今の私が在って、それによって今の彼女が在る。
もしも私の家族が忽然と消えたりしなければ――いや。
彼女が引越してきたりせず、お互い出会わなければ――違う。
強ければ。
私さえ強ければ、彼女は好きに生きられただろうか。
自分の面倒くらい自分で見られる程度には大人だったなら。彼女も道を踏み外すことなく、楽器を続けられたのではないか。
白紙の進路調査票などとは無縁の、充実した人生を――
「杏子ちゃんは、自分の演奏が誰かに喜ばれたことってある?」
「へっ?」
急に水を向けられた杏子ちゃんの瞳がオーロラのように揺らぐ。
視線で答えを促すと、彼女は困ったふうに応じてくれた。
「……今まで色々な場所で色々な曲をいっぱい吹きましたけど。拍手を送ってくれた人たちはみんな楽しそうに笑ってました。多目的ホールのお客さんも、学校の友達も、お母さんも。あんな、私なんかの演奏で」
「なくなってほしくないのは、その人たちもきっと同じなんじゃないかな」
ぴくりと杏子ちゃんの肩が動く。そのさざ波に言葉を重ねる。
「もちろん何をするかは自由だし、期待に応える義務なんてない。けど、心の片隅にくらいなら留めておいてもいいんじゃないかな」
「……」
「杏子ちゃんのサックスが聴けなくなって悲しむ人たちはいるって。……それが自分のせいだって責任を感じる人なら、なおのことね」
ヒツジヤにそっと目線を流すと、杏子ちゃんも自然とそちらを向く。
ガラス張りの扉の内側には誰の姿も見当たらないけれど、奥の厨房では今も彼女の母親が仕込みを続けている。
「――そんなの、」
薄く開いた唇から小さく息を吸う音が耳に届いた。
「そんなの、私だってわかってます。今まで何度も考えたんです。いっぱい考えた上で、私は家業を継ぐべきだと思ったんです」
「……そうなの?」
「私、そんなにサックス上手くない」
押しこめた何かが弾けたような、少しだけ大きい声が響いた。
今度は私が、彼女のあけすけな気持ちをぶつけられる番だった。
「みんな買いかぶりすぎなんですよ。私に才能なんてないんです。背伸びしてごまかして、小手先のテクニックで見栄えばっかり良くして。ないものをあるように見せてるだけなんです。聴く人が聴けばわかる。柊さんの友達とは、違う」
自嘲と自虐に吊り上がった口の端は、昨夜の滝野に似ていた。
「スカウトだって勘違いですよ。私より上手いプレイヤーなんて上を見ればいくらでもいました。逆推薦は嬉しかったけど、よく考えてみると意味わかんない。うちは全国行けなかったのに。私は支部大会レベルなのに」
しなだれるように伏せた長いまつ毛は、いつかの江津さんに似ていた。
「プロの奏者になりたいだなんて無邪気に言える歳じゃなくなったんです。みんなの期待だって重いんです。私、割と小市民なんですよ。身の程はわきまえてるつもりです」
「……杏子ちゃんがお店を継ぎたいのは、音楽をやめにしたいのもあるの?」
「ええそうですよ、私はヒツジヤを大義名分にしてるんです! 逃げるための! 夢に挑まないための! でもそれの何がいけないんですか!? さっきの話だって嘘じゃない!」
恥も外聞もかなぐり捨て、両手を振り下ろして訴える杏子ちゃん。
電線に留まっていた数羽の小鳥がぱらぱらと空に散っていく。
「ヒツジヤが好きなのも本当です! なくなってほしくなんかないんです! わかってます、私の『好き』はずるい! だから、私、こんな、……もう……っ」
それはほとんど悲鳴だった。
きっと誰にも言えず、彼女がひとり抱えこんできた本心だった。
赤らんだ顔で震える杏子ちゃんの目には涙が浮かんでいる。
「杏子ちゃん」
「趣味でいいじゃないですか、楽器なんて」
呼吸を落ち着かせた彼女が、一転してか細い声音を落とす。
「身の丈に合わない道を選んで、ダメで、そのときお店もなかったら。私は何になればいいんですか……? 柊さんは教えてくれますか……?」
「……わからないよ、未来の話なんて。自分のこともおぼつかないのに」
「お店の手伝いなら、小学生の頃からずっとしてきたんです。きちんと修行すれば高校卒業までにはひと通り身につきます。コーヒーの淹れ方も料理も、食材の仕入れや経理だって。私にはそれが一番確実で、失いにくい生き方なんです」
自分自身の心を確かめるように杏子ちゃんは声を発する。
吐き出された音はすぐに霧散し、店先は静寂に包まれる。
「ありがとう、たくさん話してくれて」
「……こちらこそ」
「どうしてそんなに話してくれたの?」
「……」
「本当は、なんて言いたかったの?」
「……」
杏子ちゃんは黙ったままうつむき、整った眉をくしゃりと歪ませ、
「怖いんです」
進路に悩む中学生らしい、等身大の弱音をこぼした。
(ああ、この子もたいがい不器用だな。私の周り、こんな子ばっかりだ)
他ならぬ私自身も含めて。そう思うと肩の力が抜けた。
私たちはまだまだ子どもなのだ。
「私、さっき杏子ちゃんに『なくなるのはやだ』って言われて思ったんだ」
その場で足を踏み変えて切り出す。上目でこちらを見る杏子ちゃん。
「まだなくなるかわからないものを自分から諦めることないな、って」
心の中で、次々に浮かぶ大切なものを指折り数える。
くりすやのたい焼き。江津さんとの約束。友達。滝野。
そして、今はいない――。
「すっごい無責任なこと言うとさ。私は挑んで失敗するより、自分で選んで捨てるほうが怖い」
私は何もなくしたくなかった。諦めるなどもっての外だった。
くりすやの味を再現して、名実共に二代目を襲名して。江津さんの願いを叶えて、滝野とふたりでたい焼き屋を営む。
そうして、帰ってきた家族に私の焼いた一丁焼きをふるまう。
それが私のハッピーエンドだ。
それ以外は、絶対に認めない。
「諦めたことに、これで良かったんだって納得するほうが怖い」
「――――」
伏し目で身を縮こまらせる私を彼女はぼうっと眺めていた。その表情はおそらく先刻私が浮かべたのとそっくり同じ。
呆然と立ち尽くす彼女の瞳に、やがて熱っぽい光が灯る。
「……私、これから出かけるの、最後に
「紗優ちゃんって、あの丸い眼鏡の子?」
「はい。スカウトを辞退したがる私を必死に止めてくれてました」
訊き返すと杏子ちゃんは首肯し、控えめな声で説明してくれる。
「一昨日の昼間にももくりに来て、電話だけど夜にちゃんと話して。うちの店を継ぎたいから、って言ったら結局納得してくれて。それで、最後の思い出作りに何曲かやろうって誘われたんです。そうすればお互いにすっきりして受験に集中できるからって」
彼女の手が自身の腕を掴む。桜貝を思わせる薄桃の爪がコートの袖に痕を残す。
「楽器なんて興味なかった紗優を吹部に誘ったのは私だから。今度は私が紗優の希望に応えなきゃいけないって思いました。でも、違った」
「違うって?」
「私、最後にするの、やめます」
コートを掴んでいた手をほどき、彼女は決然と顔を振り上げる。
まなじりを決した顔は凛々しく、確固たる意志がみなぎっていた。
「紗優に諦めてもらうための演奏なんて、ろくなもんじゃないです」
杏子ちゃんは吹っ切るように短い息を吐き、不敵に微笑んだ。
どちらからともなく頷きあう。
「なんにもなくしたくなんかないよね」
紗優ちゃんにキャンセルの電話を入れた杏子ちゃんがこちらへと振り向く。丸みを帯びた頬は紅潮し、形の良い目はやや潤んでいた。いい友達を持ったのだと思う。泣き出しそうなのに笑っている。
漏れ聞こえた話では、セッションは三月に改めてやるらしい。サックスをやめるからではなく、進路が分かれる前の区切りとして。
彼女はこれからもずっと、楽器もお店も続けたいと願っている。
私はそういう貪欲な彼女の肩を持ちたいと感じている。
「あれこれ済んでからでいいからさ。聴かせてよ、杏子ちゃんの演奏」
「いいですけど、柊さんの友達ほど上手じゃありませんよ?」
「上手い下手の問題じゃないって。そもそも私に細かい音の良し悪しなんて正直わかんないし」
「そういえばイヤホンも安物でしたね」
「むっ、あれ千円近くするんだよ」
「ツッコんでいいんですか……?」
他愛のないお喋りをしつつ私たちはヒツジヤに戻っていく。
夜明けの青い空気はもう消えて、辺りには朝の陽が射していた。
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