第5話 甘トロ♡♡♡ 癒しの密着寝かしつけ♡♡

「ご苦労様…最終日も何なく耐えたわね。まあ大好きなわたしに拷問されたのだから、(動揺する声)あ、愛の力…という奴で乗り越えたのでしょう」


(串刺姫と貴方がベットに腰掛け軋む音)


「今日はどうしていつもの独房じゃないのか?」


「(左耳に囁く声)わたしが、おまえと一緒にいたいからよ。おまえの記憶の、最後のわたしの姿くらいは可愛くしておきたいの」


「…普段からカワイイよ? (心底嬉しそうに)ハイハイ、ありがとう」


「(串刺姫が移動する衣擦れの音)(ポンポンと膝を叩く音)わたくしの膝枕に頭を埋めなさい」


(衣擦れの音・左耳から串刺姫の声)


「(吐息が掛かる囁き声)…あら、拷問によるストレスからか耳の中が地獄のような光景になっているわね。しっかりと掃除して、わたくしの美声を鼓膜に刻めるようにしてあげるわ」


(串刺姫がゴソゴソと道具を漁る音)


「…どうして枕元にわんさか拷問道具を忍ばせているのか? ほら、枕の下に「見たい夢について書き記した紙を入れておくと夢に見る事が出来る」というおまじないがあるのでしょう? それをわたくしなりにアレンジした結果がこれね。ついでに刺客を差し向けられた時に護身用の道具としても使えるのだし」


「(引き続き囁き声)どれだったかしら…お、あったあった♪ じゃじゃん。これは三代前の皇帝が不老不死の薬・仙丹を探しに道士の国へ修行に行った際に授かったという『梵天』という名前の棒よ」


「(毛とヒダの中間の硬さのものを逆立てる乾いた音)ほら、直線状に並んだヒダが独特の心地良さを生み出すの。この先端の反対にはフワフワした謎の白い植物が生えていて、仕上げにこれで耳を撫でてやると凄く綺麗になる…どう、面白いでしょう?」


「では早速、掃除していくわね」


(左耳の中をブラシで優しく擦られる音)


「(静かな串刺し姫の囁き声)どう、気持ちいい? …フフ。聞くまでもなかったわね、そんなフニャフニャした顔をしてしまって♪ まるで仔犬が母犬の懐で寝ている時のようね…全くおまえという子は」


(ブラシが時計回りに耳の中を擦っていく音)


「(暫く串刺し姫の吐息の音とブラシの音だけが聞こえる)…んん…はぁ…ふぅ……はぁ…」


「(ブラシの音が止む)手前は綺麗になったから、もすこしだけ奥の方もやって…(ブラシが左耳の奥へ入ってくる)いくわよ」


(ブラシの先端が優しく丁寧に耳の奥を撫でる音)


「(嬉しそうな串刺し姫の囁き声)あらあら、フフ♪ そんなに気持ちいいの〜? もうスライムの様に溶けてしまいそうな顔ね。わたしも耳掃除のし甲斐があるというものだわ」


「(静かな串刺し姫の囁き)? どうやら大物が眠っていたみたいね…

(ブラシの先端が耳の奥をコリコリと擦る音)動いちゃダメよ?」


(串刺し姫が集中する吐息の音)


「(ブラシがゆっくりと抜かれていく音)…よし、仕留めたわ。(串刺し姫の息の音)ふー…ふー…」


「(静かな串刺し姫の囁き)見違えるように綺麗になったわね。最後に、反対のフワフワで耳の中を仕上げてしまうわね」


(フワフワの梵天が耳の中で炸裂するサワサワした音)


「(串刺し姫の囁き声)眠りたくなってしまったら、このままわたしの膝に頭を沈めてゆっくりと…眠ってしまいなさい」


「(暫くして梵天が抜かれ、串刺し姫の吐息)ふー…ふー…(静かな串刺し姫の声)まだ起きている? …不均一な感じがするのでしょう? 反対もして差し上げるから、右耳をわたしにむけて」


(衣擦れと髪の毛が擦れる音)


「(右耳を覗き込む串刺し姫の囁き声)ぱっと見た感じではあまり汚れていないけれど…奥の方がムズムズするの? 分かったわ」


「(愛おしそうな串刺し姫の囁き声)おまえから甘えられるの、何だか胸の奥の穴が空いた部分に温かいものを注ぎ込まれているみたいで…(少し照れくさそうに)嬉しいわ」


(ブラシの全体で耳の奥を引っ掻く音)


「(静かな串刺し姫の声)カリカリ、と…なるほど、結構奥の方に垢が溜まっていたみたいね。(集中する串刺し姫の息遣い)はぁ…ふぅ…はぁー…ふぅ…」


(ブラシが耳垢を掻き出すように耳の中を這う音)


「(嬉しそうな串刺し姫の囁き声)こうしておまえの無防備な姿を独り占めして眺められるなんて…特等席ね。…わたしの顔を見たい? (甘い感じの大きな囁き声)ダーメ」


(暫くしてブラシが引き抜かれる音)


「(静かな串刺し姫の囁き声)フワフワ、入れるわよ」


(梵天がゆっくりと耳の中全体を撫でる音)


「(静かな串刺し姫の囁き声)右のお耳は浅いところをすっ飛ばしてしまったし、少し念入りにフワフワをしていくわ。フワフワ…フワフワ♪ このフワフワを使って、24時間くすぐり続けたりしたら…人間は笑い死んでしまったりするのかしらね?」


「(梵天に集中する串刺し姫の息遣い)はぁ…わふわ…ふぅ…はぁ…ふぅ…」


(暫くして梵天が引き抜かれる音)


「(串刺し姫の吐息)ふー…ふーー…。よし、どっちのお耳も綺麗になったわね。…まだ、眠ってはいないの?」


「(右耳に大きな串刺し姫の囁き声)では一緒に眠ってしまいましょう」


(衣擦れの音と共に左耳から串刺し姫の心音)


「(右耳から串刺し姫の眠ってしまいそうな囁き声)七日間よく頑張ったわね♪ 正直、早々に命乞いが始まると思っていたのだけど…とんだ見当違いだったわ。おまえは特別…わたしと同じ人間としては壊れた器…でも」


「(串刺し姫の大きな囁き声)だからこそ、おまえに惹かれてしまったのかしら」


「(髪の毛を撫でられる音)(静かな串刺し姫の囁き声)始まりの日に告げた通り、おまえは明日で帝国の貴族となり…同時にわたくしの、その…(恥ずかしそうに)お友達となるわけで…(聞こえないくらいの小さな囁き)あわよくば婚約者に…なんでもないわ」


「(悪戯っぽい串刺し姫の小さな囁き声)それとも、栄光を捨ててでもわたしの側にいたい…かしら? 一向に構わなくってよ?」


(少しの間、串刺し姫の吐息と心音と髪を撫でられる音だけが聞こえる)


「(優しく静かな囁き声)夢心地のまま、しっかりと考えなさい。わたしはおまえの選択を、たとえどんなに覆したくても尊重するわ」


「(愛おしむ静かで小さな囁き声)おやすみなさい、わたしの…」








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