第4話 2人きりのお茶会。
(右隣にいる串刺姫がスコーンを咀嚼するサクサクした音)
「(紅茶を頂く串刺姫の音→ティーカップの鳴る音)ふぅ…今日の拷問も凄く楽しかったわね♪ …される方の身にもなって欲しい? 五体満足で今こうして
(貴方が紙とペンを取り出してレポートをサラサラと書き始める音)
「(短い溜息)はぁ、仕事熱心であるのは感心するけれど。手を休めるべきタイミングを逃すのは人生において大きな損失よ? (紅茶を飲む音)はぁ、美味しい♪ じいやに暇を与えるのはもう少しだけ引き伸ばしたいところね…」
「(上半身を右に左に伸ばす串刺姫の声が遠のいたり近づいたりする)うう〜ん…はぁ〜…一拷問終えた後の風は本当に気持ちいいわ」
「(不思議そうな声で)…ん、どうして自分の隣に座ったのか? 理由なんて特にないわ。ただ気分としてこの席を本能が求めたというだけの話。(右耳に囁く串刺姫)そもそも、お前の隣に座った…という認識から間違っているわ。座りたい席の隣に偶々お前が座っていただけなの、お分かりかしら?」
(震える手がティーカップを持ち上げて紅茶を啜る音→ティーカップがカタカタと鳴りながら置かれる音)
「(立ち上がって左耳に囁く串刺姫)もう6日も私と寝食を共にしているから忘れているのかもしれないけれど、お前の耳元で語らうているのは帝国第3皇女…近い未来皇帝にすらなり得る存在なのよ? 今のうちから媚び諂い、私にお前の全てを捧げると誓うのならばペットとして側に置いてやらない事もないわ…ふー(左耳に温い吐息を掛ける)」
(暫く考え込む貴方に、焦らすように耳元で微笑んだり息を嗾ける串刺姫)
「どう? (すこしテンションが高い声)結論は出た?」
「——皇帝としての君に興味ない?」
「(一歩後ろに後ずさる串刺姫)(複雑そうな心中を投影するかのような動揺した落ち着きのない話し方)うん? うううん? そ、それではまるで皇帝以外の側面の
「(ひどく驚いた声で)な、内緒!?」
「(串刺姫が抱きついて来る)(幼い少女みたいに)なんでナイショなの!! 教えなさいよー!!! そんな事しちゃイヤー!! ヤーなの!!! (落ち着きを取り戻す)…はっ」
(右隣の席にそそくさと戻り、何事も無かったように紅茶を飲む串刺姫)
「ふぅ…今日も良い天気ね」
(漂う沈黙)
「…今のは何か? (わざとらしい逆ギレ)は? 逆に何が何? おまえの言っている言葉の意味が良く分からないわ。ちゃっちゃかレポートを仕上げてしまいなさいな」
(照れ隠しにスコーンを頬張る串刺姫。サクサクした音が何重にも聴こえて来る)
「(ティーポットを喉を鳴らして一気飲みする串刺姫の音)…っぷはぁ。あー紅茶おいしー(棒読み)」
(暫くの沈黙)
「(串刺姫が貴方の肩に頭を預ける音)はぁ…全部ぜーんぶ、お前のせいだわ。
(頭を撫でられる音)
「特別に許してあげるわ、と・く・べ・つ・に!! おまえにだけなんだからね、こんなに甘くしてしまうのは」
「〜♪」
(暫く頭を撫でられる音と串刺姫の鼻歌、小鳥の囀りや風の音など環境音)
「この歌? 亡くなったお母様がよく口遊んでおられたの。思えば、お母様が亡くなってから帝国の全ては狂ってしまったわね…比喩ではなく、遍くを照らす太陽のお方だったから」
「おまえの大切な人はどうしているの?」
「…1人だけいる? 女? 男?」
「(少し震えた声の串刺姫)おんな…女なのね。母親でしょう? …違う、年が近くて同じ価値観を共有できる素敵でカワイイ女の子?」
(呼吸の荒くなった串刺姫が紅茶を飲む音)
「(また貴方の右肩に頭が戻ってきて食い気味に)名前は? 存命? 婚約はしているの? 本当はたいして好きでもないのではなくって? 向こうは貴方の事なんとも思っていないと思うけど?」
「その人は、近くにいる…?」
「——今、話している人?」
(数秒完全な静寂)
「(抑揚のない串刺姫の声)わたしじゃん」
「え、は…えっ」
「(メチャクチャに驚いた声)貴方の大切な人って、
「カワイイくて素敵で超絶タイプで同じ価値観を持ってる将来のお嫁さんって、私なの!?」
「(静かにはしゃいでいる声)…お嫁さんの部分はまだ分からないけど?」
「(素早く深呼吸する音)スー…ハー…スー…ハー…(自身の席にぴたりと座り直す串刺姫の音)兎に角、お前がゾッコンでもう
「——今、凄いカワイイ顔してる??」
「(テーブルの上の茶器やお菓子、何もかもを串刺姫がひっくり返す激しい音)うっさい!! (声が遠退きながら歩き去っていく串刺姫)(小さな子どもみたいに)バーカ!! バカバカバカバーカ!! アホ!! 女たらし!! イケメン!! ザーコ!!!」
(貴方がレポートの続きを書き始める音)
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