舞台裏

「やっとだ、やっとやっとこれで...あの女を殺せる!」


私は今最高にテンションが高い。


千宮司先輩に水責めされたあの日、私が目を覚ましたのは病院だった。


目を覚ますと、すぐにいろいろな検査が行われたがこれと言った後遺症はなかったらしい。


しばらく安静にしているようにと言われて、先生や看護師さんは出て行った。


一人ベットの上で考えをめぐらす。


今日千宮司先輩に水責めされた時は死ぬかと思った。


だが、それと同時に自分のするべきことも見えてきた。


そうか。このままでは今日みたいなことがまた起こってしまう。


なんの障害もなく都斗と愛を育むにはその障害のもととなる存在を排除しなければならない。


そう決心して私はすぐ行動に移した。


まずはこの病院から抜け出さなくては。


私は病室を出て、いろいろと病院の中を探索する。


すると、落としコーナーというのを発見した。


その中には入院着じゃない服も合ったため、すぐに着替えた。


そのまま堂々と病院を出る。


数時間前までは意識不明だったのに、体の回復の速さに私自身も驚いた。


病院の警備が予想以上にゆるゆるだった。


ちょっと変装しただけで病院を抜け出せちゃうんだもん。


病院から抜け出した私は、まず家に行こうとした。


ただ帰るためではない。


母の財布を奪うためだ。


おそらく今頃病院は私が失踪したと大騒ぎになっているだろう。


そうなると当然親に連絡が良く。


だが、多分お母さんはただの家出ということにするだろう。


事実これまでも無断で家出したことは何回もあったのだから。


夜になり、音を立てずに自分の家に侵入した。


当然母はもう寝ており、財布も居間にあった。


こっそりとそれを奪って家を出ると、私は近くのネットカフェで一晩眠ることにした。


次の日、朝起きると、スマホには都斗から大量のメッセージと着信があった。


それを見て思わず泣きそうになる。


都斗はこんなにも私を心配してくれているのだと。


でもごめんね都斗。まだ都斗の前に現れるわけにはいかないんだ。


まずは都斗にこれから害を及ぼす可能性のあるダニどもを駆除しないと...!!


まず私が向かったのは千宮司先輩の家だ。


前に千宮司先輩が私と同じ東南駅で降りているところを発見した。


そのため、家を見つけるのは意外と早かった。


インターホンを押すと、中から厳格そうなお爺さんが出てきた。


私が千宮司央花さんいますか?と訊くと、あんな無断で外出する娘のことなんて知らん!と言われた。


このことから、あの日以来千宮司先輩は家に帰っていないのだと確信した。


千宮司先輩が寝どころにする場所と言えばホテルしかないだろう。


私はそこから近くのホテルを片っ端から張り込みをした。


そしてある日、千宮司先輩の家から少し離れたホテルで泊まっていると、偶然千宮司先輩の姿を発見した。


後つけてみると、泊まっているのは私と同じホテルで、私の一つ上の階にで宿泊してるらしい。


私はフロントに金を渡し、千宮司先輩の部屋の合いかぎをもらった。


正体を見られると面倒なので、事前に買っておいた黒のレインコートを着て、手袋をはめて、包丁とスタンガンをもって部屋の中に入った。


部屋の中に入ると、シャワーの音が聞こえた。


どうやら千宮司先輩はシャワーを浴びているようだ。


私はなるべく音をたてないようにバスルームの入り、後ろから首にスタンガンを当てた。


千宮司先輩は無様に痙攣して、気を失った。


その間に、私は持ってきた包丁と自分のはめている手袋に千宮司先輩の指紋をべったりとつけ、先輩の体をベットまで移動した。


そしてこれから私がすることを想定して、千宮司先輩のスマホにメッセージを送った。


もうここに用はなくなったので、あとはこの包丁でダニを地獄に送るだけだ。


ホテルを出て、外で少し時間を潰して、千宮司先輩の家の庭に侵入する。


流石にこの時間にお年寄りが起きているとは思えない。


庭から家の中に入り、あのダニを探した。


中はそれなりに広い。


だが、外からある一部屋だけ明かりがついていたので、そこを目指す。


部屋のドアを開けると、案の定ダニがスマホをいじっていた。


「え...なんであんたがここに...?」


私の存在に気づいたダニが恐怖で体が固まる。


「また会ったね彩華さん...早速だけど...死んで?」


そう言うと彩華を押し倒して、無我夢中に体に包丁を突き刺しまくった。


刺すたびに血しぶき上げる姿はなかなかにワクワクした。


途中人間と思えないほどの悲鳴が上がった。


とりあえずうるさかったからのどを切ってやった。


のどを切った後も私は何回も突き刺した。


いままでの恨みを込めて。


興奮が収まると、部屋中血の海と化していた。


目の前に転がっている肉の塊は何十か所も刺されて、見るも無残な形になっていた。


「これ...私が...私が」


次に瞬間、のどから出たのは笑い声だった。


「あハハハハハハハハハハハハハッ!!私が殺した!!!ハハハハハハハハハハハ」


あんまり笑っていると、お爺さんが起きてしまうので、何とか抑える。


そこからは私もよく覚えていない。


かすかな記憶の中では庭に包丁を埋めた記憶がある。


そこからは私はまた何日かネットカフェで休むことにした。


その間ずっと


「私が殺した...殺した...ハハハ」


と、つぶやいていた。


「都斗。やっぱり私は冷酷な女なんかじゃなかったよ」


そう、決して冷酷な女なんかじゃない。


「今...私は最高に愉悦を感じてるんだからさ...!!!!!」


...果たして、この愉悦はどこまで続くのだろうか。

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