水責め
「都斗!」
横で意識を失う都斗の姿が見える。
「...今月城君の心配をしている場合か?」
さらに強く髪を持ち上げる千宮司先輩。
「ぐっ!」
都斗がやられたように私も千宮司先輩の溝を殴ろうとした。
しかし
「そんな遅い速度で私に当てられるわけがないだろう」
伸ばした拳は片手で受け止められていた。
「さぁそろそろ答えてもらおうか?」
私の目を覗き込む。
「本当に心当たりがないのか?」
「...っ」
その鋭い目で気で問われたら思わず答えそうになってしまう。
そう、千宮司先輩が言っているのは間違いなく彩華のことだろう。
私が掲示板に書き込んだせいで彩華が不登校になったということに気づいたのだ。
でもなぜ?彩華が言ったのか?
「質問の答えはまだか」
問うたびに私の髪の毛を上に引っ張る。
「...彩華のことですか?」
「......」
千宮司先輩は何も言わない。
ただ黙って私の瞳を凝視しているだけ。
「私が掲示板に書き込んだことであなたの妹である彩華ちゃんが不登校になっちゃったんですよね?」
わざと煽るようにちゃん付けで呼ぶ。
「いやぁ~みじめですね!」
「なんだと...?」
その声にはさっきまでなかった怒気が含まれている。
「だってそうじゃないですか。ずっと妹を不登校に追い合った人物が目の前にいたのに気づかずずっとまるで友人のように振舞っていたんですから」
「......」
「で、なんですか?今日はその仕返しってことでここに呼び出したんですか?実に幼稚ですね」
「......」
「さっきから黙ってないで何かいっ...!?」
突然千宮司先輩が私の足を思いっきり踏んできた。
「ギャっ!?」
想像を絶する痛みに立っていられなくなる。
「...やはり君は月城君の彼女にはふさわしくないようだね」
相変わらず私のことを凝視してくる。
だが、その目には憎悪とともに軽蔑するような目線も含まれていた。
それが無性に腹が立った。
「お前に私と都斗の仲をどうこう言われる筋合いはねぇんだよ!妹一人守れないような出来損ないな姉の分際で!」
私はありったけ叫ぶ。
「醜い...」
「は?」
「実に醜いね君は」
そう呟く千宮司先輩は今度は汚物を観るかのような目で私のことを見てくる。
「なぜこんな品性のかけらもない女を月城君は選んでしまったのか...」
「だからお前に言われる筋合いは...!?」
「少し黙っておいてくれよ。これ以上その醜さがにじみ出ている声を聴いていると思わず君のことを殺しそうになっちゃうからさ」
私の頭を掴み思いっきり壁に叩きつける。
「あ、ああ...!?」
おでこから血が流れる。
「少しそこでじっとしておいてもらおうか」
千宮司先輩は掃除用具入れからバケツを取り出し生徒会室から出て行った。
「み、都斗」
意識を失っている都斗の方に行こうとするが足が動かない。
「おや、何勝手に動こうとしているのかな」
「!?」
思ったより早く千宮司先輩が帰ってきた。
バケツに水を汲んで。
私の近づくとなんも躊躇なく頭を掴んできてバケツの中の水に突っ込む。
「ごぼ....ごぼごぼ」
息ができない。
プールは泳げる方だが、息は長く続かない。
顔を上げようもすると頭を押さえつけられているため上がれない。
20秒ぐらいたつと私をバケツの中から上げる。
「...今どんな気持ちだ?」
「ごほっっ...ごほ...こ、これが復讐のつもり?」
それでも私は煽るような笑みを浮かべる。
「なるほど...意地も悪いときたか」
今度は怒鳴るわけでもなく静かに私を観察する。
「...やっぱり桐生君の方が月城君の彼女としては相応しいな」
その一言で頭に血が上ったのを感じた。
「その名を、私の前で口にするなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
残された力を振り絞って抵抗する。
「...これ以上その悪臭漂う口を開くな」
だが、そんな抵抗も虚しくもう一度バケツの中に顔を突っ込まれた。
「ごぼごぼごぼ..ごぼごぼ..ご..ぼ」
水の中でだんだん意識がなくなっていくのを感じた。
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