画面越しの蹂躙
「あ、もしもし衣珠季ちゃん、聞こえる~?」
「......」
衣珠季からの返答はない。
「さっきまでね、都斗君と一緒に衣珠季ちゃんが佐賀暮君と彩華ちゃんに暴行を加えるところを見てたんだ」
響は俺たちの姿をスマホで映しているため、俺もスマホを覗き込む。
すると恐ろしいほど無表情の衣珠季が映っていた。
「まさか衣珠季ちゃんがあそこまで凶暴だとは思わなかったよ」
響はこう言っているが、実際に俺たちは衣珠季が佐賀暮を暴行しているところは見ていない。
「...何が言いたいの?」
無機質な声が聴こえた。
「だ~か~ら~。親友としてそんな暴力女に大切な都斗君を預けるのは危険だと思ったんだよね」
まずい。
ここから響がどんな行動をとるのかが容易に想像できてしまう。
「都斗君のためにも私が責任をもって寝取ってあげなきゃ」
「おい」
無機質だった声が怒気を含むものに変わった。
「昔の女がしゃしゃり出るなよ。もし都斗になんかしたら殺すからな」
いつもの衣珠季とはかけ離れている言葉。
「こわ~い。本性出したね~。でも、しゃしゃり出てるのはそっちじゃないかなぁ」
「...どういうこと」
「だって私たちはずっと両思いだった。どっちもただ想いを伝える勇気がなかっただけ。都斗君は隠しているつもりかもしれないけど私に惚れていたのは気づいていたよ」
「......」
図星なので言い返せない。
「でも、そんな私たちの間にお前みたいな微生物が割り込んできた。ずっと純白だった都斗君をお前が汚した!!!」
響もだんだん口調が荒くなってきた。
「純白の時の都斗君は私を捨てるなんて選択肢を絶対取らなかった。お前が汚したから私を捨てるだなんて言いだしたんだ!!!」
まだ俺が響のことを捨てたと思っていたのか。
「私と都斗君の関係を引き裂きやがって!!!お前ごときに都斗君は相応しくない!!!!」
「響...」
響は本当に衣珠季のことを憎んでいる。
「ふーん、あんたも本性表したね」
憎しみをさらっと受け流す衣珠季。
「...ごめんごめん。衣珠季ちゃんのその醜い顔を見たら取り乱しちゃった」
「私もあんたのその賞味期限が過ぎた顔を見たから取り乱しちゃうかも」
煽り合いをする二人。
当然俺が止められる状況じゃない。
「まぁいいや。話を戻すね。私はこれ以上醜い衣珠季ちゃんに都斗君が汚されるのは我慢ならないからさっさと寝とっちゃうね」
「待て。何をする気だ?」
俺は唐突に本能が危険信号を発していることに気づく。
「何ってこういうことだよ!!」
「ん!?」
いきなり響が俺に口付けをしてきた。
しかも優しいものではなく舌も入れてきて俺の口の中を蹂躙する。
「やめろ」
衣珠季がやめろと口ずさむ。
「やめろよ」
「んんんんんーーーー!!!」
「やめろって言ってるだろ!!!!!!」
衣珠季の叫びも虚しく響は一向に口を放す気配はない。
それから1分ぐらいたってようやく口を放した。
「ぷはっ!やっぱり愛があるディープキスは最高に気持ちいね」
響が満足そうに笑みを浮かべる。
「で、私と都斗君との熱いディープキスをただただ眺めているだけだった気分はどう?」
響が煽るかのように衣珠季に問う。
「どうやら本当に私に殺される覚悟ができたみたいだね」
「...!?」
その冷酷で重い言葉に俺が寒気を覚えた。
「は?なにお前が逆切れしてるの?元はと言えばお前が都斗君を誘惑したのが原因だろ」
「...御託はいいから早く居場所を言え」
言うわけないだろ、と言うと思ったが
「うん言うね。今私と都斗君がいるのは~」
響は平然と答えた。
衣珠季はスマホは通話を切り、すぐこちらに向かうようだ。
「うわ~あの様子だと私本当に殺されちゃうかも」
そうは言っているが、口調は余裕そうだ。
「それじゃあ都斗君。衣珠季ちゃんの対応を頼むね」
「え?」
てっきり俺は響がそのまま俺のことを誘拐しそうだと身構えていたが、そういうわけではなさそうだ。
「え?なに?まさか私がこのまま都斗君のことをお持ち帰りするとでもおもちゃった?」
「......」
期待していたわけではない。
「ダメだよ。君のお仕置きはまだ終わっていない。言ったよね?都斗君を許さないって」
「...ああ」
「だからまだお仕置きが完了するまでは君とは一緒にいてあげない。でも安心して、お仕置きはそう長くは続かないから」
「それはどういう...」
「それじゃあね都斗君。また会おうね」
響は一足先に帰っていった。
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