盗撮女

「で、なんで千宮司さんが私のことを盗撮してるの?」


「そ、それは」


「というか今誰かと通話してるよね」


「な、なんで」


千宮司さんはすぐにスマホの電源を切った。


「やっぱり図星だったんだ」


「そ、そんなことは」


必死に誤魔化そうとしている。


「で、だれと通話してたの?」


「......」


「あーだんまりかぁ。ねぇ私の予想だけど千宮司さんって誰かに私に対する報復を持ち掛けられたでしょ?」


「...!?」


もう反応が図星なのバレバレ。


「...で、誰に持ち掛けられたの?」


「...誰が」


「うん?」


「だれがアンタみたいなビッチに教えるかってんのよ!」


「...は?」


「アンタさ、転校してから数日で新しい彼氏ができたんでしょ?」


「......」


「ホント尻軽だよねー。あんだけ多鶴に依存していた地雷女だったくせに」


「......」


「ほら、何かいいな」


「...黙れクソ野郎」


「...ひっ!」


私は思いっきり目の前の女の髪を掴み、目一杯殺気を込めた目で睨みつけた。


「は、放しなさいよ!」


必死に目をそらそうとする。


「おい、目を逸らすんじゃねぇよ。私の目を見ろ」


だがもちろんそんなことさせない。


髪を力強く引っ張って目を無理やり合わさせる。


「お前のそのドブの匂いがする口から私の彼氏である都斗のことをとやかく言うなよ。汚れるだろ?」


「...あ、あんた」


女は恐怖で声が震えていて、今にも泣きだしそうだ。


「誰と通話してたんだよ、言え」


「...言うわけないでしょ」


ここまでやっているのにかたくなに言わないのか。


その度胸だけは評価してやる。


「...お前もあの男みたいに多目的トイレ行くか?」


「...そ、それは」


「見たんだろ?あいつがどんな顔をしてトイレから出てきたか」


「......」


千宮司さんが身震いするのもわかる。


あいつの顔はもともと醜かったけど、私の暴力によって顔面土砂崩れになっちゃったから。


本当はこの場で殴ってもいいのだが、さすがに人の目が多い。


今女の髪を掴んでいるのも周りに見えないよううまく調節しているのだ。


「これが最後のチャンスだ。名前を言え」


「...き」


「聴こえねぇよ。もうちょっとはっきり喋れ」


「桐生響」


「だよね。だと思った」


女の髪を放す。


女はその場で縮まって震えている。いい気味だ。


「あ、あのどういたしましたか...?」


その様子を見て心配になったのか駅員さんが話かけてきた。


「あ、いえ。ちょっとこの子が体調悪いみたいで今から電車に乗るところです」


「そうなんですね。よければ手伝いましょうか?」


「いえ、結構です。大丈夫だよね?”彩華ちゃん”」


威圧するように呼び掛ける。


「...は、はい。大丈夫です」


「そうですか。それではお気お付けて」


駅員さんが遠ざかる。


「にしてもやっぱり響ちゃんが一枚嚙んでるんだね」


まぁ分かり切っていたことだが。


「はぁー。なんでこうも邪魔ばかりするのかな。転校して大人しくしてればいいのに」


でも響ちゃんが簡単に都斗のことを諦めるような女じゃないのは知っている。


「これはとことん生き地獄に突き落とさなきゃダメかな」


私は響ちゃんを排除する作戦を考える。


「ん?」


「あ」


突然千宮司さんのスマホが鳴った。


「おい、出ろ」


「わ、わかった」


この電話は間違いなく響ちゃんからだ。


千宮司さんが通話ボタンを押すと。


「あ、もしもし衣珠季ちゃん、聞こえる~?」


気味が悪いぐらい明るい響ちゃんの声がする。


「...響ちゃん、今日の一連の出来事はどういうこと?」


私もできるだけ明るく問い詰める。


「あ~その前にビデオ通話に切り替えよう?」


言われた通りビデオ通話にすると


「あ、見えてる衣珠季ちゃ~~~~ん?」


そこには都斗に馬乗りしている響ちゃんの姿が映っていた。

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