駒作り2

「さーってと次は」


今度は千宮司彩華せんぐうじいろはにかける。


だけどここでめんどくさいのが私と彩華が会話しているところを千宮司先輩に見られるところだ。


もし見られたら無理やりスマホを奪い取って質問攻めにされてしまう。


「...でもそこは警戒のしようがないしな」


おそらく今の時間帯だったら学校は終わってるが生徒会の雑務を一人でこなしているためまだ帰ってきていないと思う。


「今のうちにかけちゃおうか」


私は彩華の電話番号をスマホに打ち、電話をかける。


今度はコール音が五回鳴るぐらい前に電話に出た。


「......」


あれ?今度はもしもし?さえも聞こえない。


あのクズ男でもそれぐらいの常識はあったのに。こいつ本当に千宮司先輩の妹か?


いくら待っても応答がないので私から話しかけることにする。


「あ、もしもし?いきなりごめんねこんな時間に?」


さっきと同様できるだけ明るい声でしゃべることにする。


「...ーーーーーー」


あれ?切られた?


電話を切る音が聞こえた。


「こいつ...切りやがったな」


わざわざ私がアンタみたいなクソビッチに電話をかけてあげてるのに!!


「ふぅー落ち着け私。明るく明るく」


気を取り直してもう一回電話をかける。


今度はコール音が六回鳴るぐらいのところで相手が出た。


「....何?」


開口一番が何?か。


こいつ本当正徳生?まだ夏木ちゃんがマシに見えるぐらいだ。


「ご、ごめんねいきなり電話なんかしちゃって」


「...アンタ誰?」


これから言うからいちいち訊くな。


「今日から千宮司さんと同じクラスメイトになる桐生響って言います」


「...あ、そう。まぁもう私には関係ないし」


「なんで関係ないの?」


ここはあえて聞いてみる。


「私は今もこれからも不登校として生きていくから」


もう発言が馬鹿丸出しだよね。


「でも、このままずっと学校に来なかったら出席日数が足りなくて留年になっちゃう可能性だってあるんだよ」


「...今更行けるわけないでしょ」


今の口ぶりからして本心では学校に行きたいと思っているのかな。


「...ねぇ、よかったらさ千宮司さんがなんで学校に来れなくなったのか話してくれないかな。私何か力になれることがあるかもしれないし」


「...聞いていないの?まぁ転校してきたばっかだから当然か」


本当は全部知ってるんだけどね。


「私のほかにもう一人クラスで不登校の奴いるでしょ」


「確か佐賀暮君だったっけ?」


「そう。でそいつと私が付き合ってたんだけど、どうやらそいつは私と付き合う前にもう一人の女子とも付き合ってたの。私は何も聞かされていないから知らなかったけど」


「夜桜衣珠季だよね」


「そう。なんだ、知ってんじゃん」


「いや、たまたま私の元の高校で正徳高校あら転校してきたっていう子が夜桜衣珠季って名前だったから」


「そう。こんな偶然もあるんだ。それよりもその夜桜に多鶴の浮気がバレちゃってさ」


この喋り方は全然反省していない。


「それで起こった夜桜が学校の裏掲示板に私と多鶴に関するあることないこと書いたっていうわけ」


まるで自分が被害者だとでも言っているような喋り方だが、悪いのは全部こいつらだ。


やっぱりクズはクズに惹かれ合うのか。


「...で、ここまで聞いて響ちゃんにはなんかできることでもあるの?」


”響ちゃん”という呼び方をされて思わずすスマホをたたき割ろうとしてしまう。


「うーん、この状況を改善するっているのはなかなか難しそうだけど...」


「でしょ?だからこれでこの話はおしまい」


彩華が勝手に話を切り上げて電話を切ろうとする。


「でも、衣珠季ちゃんに何かしらの報復はできると思うけど」


「え?」


電話を切ろうとして彩華がとどまる。


「...報復ってどういうこと...?」


「待って、その前に一つ確認したいことがある」


「何?」


「彩華ちゃん姉っているかな」


「一応いるけど」


「明善高校に通っている?」


「そうだけど...さっきから何?」


これで決まりだ。


「ねぇ彩華ちゃん、話の続きなんだけど衣珠季ちゃんに報復したいと思う?」


「...それは」


「いいんだよ。私でもこんな状況になったら報復したいって思うもん」


「...もちろん報復したいに決まってる。だって私は何も知らなくて多鶴と付き合っていただけなのに掲示板にあんなこと書かれたんだもん」


こいつは何も知らないと言っていたがそれは嘘だ。


佐賀暮と衣珠季ちゃんが付き合っているというのを知っていて佐賀暮と恋人関係になった。


本当にクズって見ていて飽きない。


「それで、具体的にはどうすればいいわけ」


「うん、それはね」


こうして私は二人のクズに報復の仕方を伝授した。

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