新しい生活
「お、お姉ちゃん。もうすぐ学校に登校する時間だよ」
「今行くよ心春」
私は妹と共に一回に降りる。
「お母さん。私たちはもう学校に登校するね」
「あら?まだ登校するのは早いんじゃない?」
「今日は私の初の登校日だよ。これぐらい早く登校しないと印象悪いじゃない」
「そ、それもそうね。それじゃ行ってらっしゃい」
「ええ、行ってきます」
「い、行ってきます」
妹共に家を出る。
妹の通っている中学校は私のこれから通うことになる正徳高校のすぐ近くにあるため、一緒に登校することができる。
「心春、受験勉強は進んでいるの?」
「う、うん。お姉ちゃんと同じ正徳高校に合格できるぐらの力はついてきたよ」
「そう。でも油断は禁物。本番にはどんな問題が出題されるかなんて誰にも分からないんだから」
「そ、そうだね」
心春がぎこちなく返事をする。
なんだか最近妹が私に対して歯切れが悪い気がする。
そりゃ”今まで”妹につらく当たってきたっていうことはあるけど。
でもあれは心春が全部悪いんだよ?私に対して心遣いができていなかったんだから。
「お、お姉ちゃんはさ」
「うん?なに心春?」
「これからの新しい学校生活とかに不安はないの?」
心春がこんなことを訊いてくるなんて珍しい。
「別に不安とかは特に感じてないかな。今までもうまく人間関係は築けてきたんだし」
「で、でもこれからはいないんでしょ?」
「いないって...誰が?」
「いつもお姉ちゃんと一緒に遊んでいたみ...ご、ごめん。何でもない」
ハッとしたように押し黙る心春。
「別に言っても良いよ。都斗君のことでしょ」
「う、うん。お姉ちゃんあの都斗さんにぞっこんだから大丈夫なのかなって...?」
随分遠慮がない言い方。
「もちろん都斗君のことを忘れたわけじゃないよ。でも、都斗君にはちょっとお仕置きが必要なんじゃないかなって思っているだけ」
「お、お仕置きって?」
「そうだなー。とりあえず一回都斗君と恋人だとか夢見てる衣珠季ちゃんを生き地獄にでも突き落とそうかな。でも優しい都斗君はきっと衣珠季ちゃんを一人にさせないため一緒に地獄に落ちる。それが都斗へのお仕置きかな。でもある程度時間がたったら私が都斗君だけを地獄から連れ戻す。そうすれば邪魔な衣珠季ちゃんは消えて私と都斗君がともに生きることになる。うん!十分すぎるハッピーエンドだよね!」
話している途中で心春の顔が真っ青になっているのが分かる。
でも心春が訊いてきたんだから仕方ないよね?
そこからはお互い沈黙して学校まで歩く。
「あ、見えてきたね」
正徳高校の校舎が見えてきた。
外見は明善高校と同じぐらい綺麗。
でも規模は明善高校と日にならないぐらい大きい。
「それじゃ心春、学校頑張ってね」
「お、お姉ちゃんも転校初日の高校生活頑張ってね」
正徳高校の校門の前まで来たので心春と別れる。
早速校舎の中に入り、職員室を目指す。
外見こそ明善高校と変わらなかったが、校舎の中は天と地ほど差がある。
「さすが進学校。学費とか半端ないんだろうな」
親に負担をかけていることは分かっている。
でもしょうがないよね?お母さんたちも今まで私に対して興味を失ってたんだから。
これぐらいの報いを受けるのは当然だよね?
職員室に入ると、私の担任の先生と思わしき人が近づいてきた。
「貴女が桐生響さん?」
「はい、そうです」
「私は貴女の一年2組の宮ノ
宮ノ木と名乗った先生が私の生徒手帳を渡してくる。
「それじゃ早速行きましょうか」
進学校と聞いていたからもっと堅いおじさんの先生ばかりだと思っていたがそういうわけではなさそうだ。
「桐生さんは確か明善高校から転校してきたのよね」
「そうですけど」
「確か明善高校とこの正徳高校とじゃ偏差値にかなりの差があったのだけれどよく受かったわよね?」
普通教師がそんなこと訊く?と思ったが、ここは進学校なのでそういう話題しかないのかと納得する。
「私、もともと正徳高校には受かるぐらいの学力がありましたけど、諸事情で明善高校に入学しただけです」
「フーン、諸事情ねぇ~」
宮ノ木先生はまだないか言いたそうな顔をしているが、ここは迷惑顔をしてこれ以上話しかけられづらい雰囲気を作ってやろう。
私の計画通り、そこからは特に話題をすることもなく、一年2組に着いた。
先生が教室のドアを開ける。
「はい皆さん。おはようございます」
先生が適当に挨拶をしている横で、生徒たちの顔を一通り見る。
やはり進学校とは言っても全員が全員が利便みたいな感じじゃない。
このクラスの中でも様々な種類の人間がいることが一目でわかる。
「それでは桐生さん一言お願いします」
いつの間にか私の紹介を終えていたみたいだ。
「桐生響です。これからみなさんと仲良く学校生活を送っていきたいです」
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