崩壊

「ああああああああああああああーーーー!!!」


都斗君が叫んで出て行ったあと、私は一人教室で立ちすくんでいた。


「......」


都斗君を怖がらすつもりはなかったのに、結果的に私の感情が爆発してしまった。


「......」


でも都斗君が悪いよね。私を捨てるなんて笑えない冗談言うんだしさ。


「......」


教室の時計を見ると、もう18時を回っていた。


ああ、もう帰らなくちゃね。


「......」


それにしてもひどいな都斗君は。

いくら私が怖がらせたって、私を置いて一人で帰っちゃうなんて。


「......」


明日は文句の一つでも言ってやろ。


「...あれ」


その時に初めて気づいた。


都斗君が出て行ってから一言も言葉を発していないことと


「...なに、これ...」


眼から熱い”何か”が流れてくるのを。


「ああ、そうか」


私、ついさっき都斗君に捨てられたんだった。


捨てられた、捨てられた、捨てられた、捨てられた、捨てられた捨てられた捨てられた捨てられた捨てられたステラレタステラレタステラレタステラレタステラレタ


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


大声で泣いた。


この時間だと警備員さんが学校の中を徘徊しているのを知っていながらも、かまわず泣いた。

泣き続けた。


今の私の心にはただ、”都斗君に捨てられた”という事実しか残っていなかった。


「......」


そこからはどうなったか記憶にない。


覚えているのは大声で泣き続ける私を警備員さんが発見したことだけ。


気づけば私は自室のベットに横になっていた。


「お姉ちゃん...」


ベットの隣では私のことを心配そうに見つめる心春の姿があった。


「あ、ご、ごめんね。今すぐ出て行くから」


私が目を覚ましたことに気づいたのか、また怒鳴られると思って心春は急いで部屋から出て行った。


今の私には怒鳴るほどの気力はないが。


ベットから起き上がる。


「.......」


起き上がってみたはいい者の、本当に何もできない。


この喪失感を埋めるにはどうすればよいのか。


ふと、壁に飾ってある私と都斗君のツーショット写真が目に映る。


「......」


私は壁まで近づき、釘を抜いてその写真を持つと、思いっきり地面に向かって叩き落とした。


写真入れごと落としたため、ガラスの破片がいたるところに散らばる。


そんなことは気にならない。


次に勉強机に飾ってある都斗君との写真を手に取り、これも思いっきり地面に叩きつける。


「...ふ」


何だろうこの気持ちは。


「...ふふ」


今自分がとてつもなくkなしいことをしているっていう自覚はあるのに、楽しくて楽しくてやめられない!


「ふふふふふ」


私は笑いながら次々にいたるところに飾ってある都斗君の写真を叩き落とす。


「ハァーハッハッハッハッハッハッ!」


狂ったように笑いながら次々に都斗君の写真を破壊していく。


そのたびにガラスの破片を踏んで足の痛みが広がるはずだが、今の私は神経もバグっていたのかもしれない。


「はぁーはぁーはぁーはぁー」


一通り怖し終えて、いったん休憩する。


休憩とは言ってもそのままベットに倒れこむ。


「......」


もしかしたらその間に少し眠っていたのかもしれない。


「...ん」


目を覚ます。


「あれ?私確か教室で」


そこで言葉を切る。


いや、正確に言えば切らざるを得なかった。


「...あ」


目の前に広がすガラスの破片。

そして大切な都斗君との写真の残骸。


「わ、私、そんなつもりじゃ...」


どれだけ言い訳しようとも、これを自分自身がやったことは否定できない。


「い」


また”いやぁぁぁぁぁぁぁ”と叫ぼうとしたが、口から出たのは真逆なことだった。


「ハハハ、これ、私がやったんだ...ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」


この日、私は初めて人が壊れる音を聞いた。

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