何かが欠けた日

今日も晴れて恋人関係になった夜桜とイチャイチャしながら登校した。


だが、気になったのは、響が俺の家まで迎えに来なかったということだ。


流石に俺と夜桜の関係を見て自分がいるべきではないと思ったのか。


または...

いや、あの響に限ってそれはないな。


教室に入るが響の姿がない。

念のために湖三に訊いてみる。


「なぁ、今日響まだ来てないのか」


「まだ来てないわよ」


ってことは休みか?


とうとう六年間皆勤賞の響の記録が破られるってことか。


「アンタ、私に響が登校してきてないか訊いてきたってことは響が心配なわけ」


「そりゃな」


今まで一階も遅刻も欠席もしなかった響が来てないとなると心配になるだろ。


「ただ、アンタは今響のことを心配するべきではない」


「どういうことだ」


「今はあの転校生のことだけを考えるべきよ。アンタはあの子を救った。そしてあの子は自分を救ってくれたアンタが消えたらまたすぐに壊れてしまう。壊れないように一緒にいるのがあの子を救ったアンタの責任」


「お、おう」


また湖三に言いくるめられた。


こいつ見た目は不良女子だけど案外普通の女の子なのかもな。


「...なんか今ムカつくこと考えてなかった?」


「いえ、何でもありません」


まぁ湖三自信は自分のことを普通の女子と思っているようだが。


朝のホームルームが始まる。


「はい、今日の連絡事項場特にありません。あ、そうだ。どうやら桐生がしばらく休学するそうです」


休学!?


響のことだ、高校一年生で海外に留学したりしてもおかしくないが。


一時間目が始まる。


もうテスト直前なのでほとんどの時間が自習だ。


自習とは言っても夜桜と教え合いという名のイチャイチャすることだが。


「えーっとここの長文を訳すと」


「夜桜」


「ん?何月城君?」


「えーっとひ」


「......」


やっぱ言えない。

夜桜の前で響の話題は出せない。


ただ表上は夜桜も響のことを響ちゃんと呼んでいたのだから友好関係は築けていたはずだ。


心では心配しているはずだ。


少なくとも何とも思ってないということは...


いや、やめよう。

さっき湖三に言われたばっかりじゃないか。


「そういえば月城君。私ずっと気になっていたんだけど」


「な、なんだ」


ちょっとドキドキする。


「私たちそろそろ名前で呼び合わない?」


確かにそれは思っていた。


「そ、そだな。い、衣珠季」


「う、うん。み、都斗」


そういえば俺が女子のことをs他の名前で呼んだのは衣珠季が響に続いて二人目だ。


「そ、それで都斗。私も都斗に教えてもらいたい部分があるんだけど」


「あ、ああ。どこかな?」


やっぱり衣珠季もまだ都斗呼びは慣れていないみたいだな。


そういえばさっきからまたこそこそ話が聞こえる。


「おい、聞いたか。とうとうあの二人名前呼びになったぞ」


「カップルだし当たり前じゃね?」


「てか今まで苗字呼びだったのかよ」


「やっぱり月城に何か弱みを握られて無理やり付き合わされてるんじゃね?」


最後のは本格的に訂正してもらいたい。


四時間目が終わる。


「......」


多分今日も衣珠季が俺のために弁当を作ってきてくれているはずだ。


だが、俺から言うのもなんか情けない。


「ねぇ都斗」


「ん?」


ん?と訊き返すが、用件は分かっている。


「今日は教室以外で食べない?」


「え?」


教室以外?


「だってほら...」


衣珠季が向く方にはクラスの男子だけでなく、どこから噂を聞きつけたのかは分からないが他クラスの奴まで俺を裏切りもののように凝視している。


「確かに...」


「だからその...どっか二人きりになれるようなところはないかな?」


「そうだな」


この学校で二人きりになれる場所と言えば。


「屋上だな」


まるで青春アニメのようだが、この学校は屋上に入ることが自由となっている。


早速衣珠季と一緒に屋上に行ってみると。


「お、これは奇遇だねぇ~。月城君と夜桜君」


「......」


Uターンしよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る