響視点の物語10
都斗君とデートできた休日が終わり、今日は月曜日。
いつも通り私と都斗君と衣珠季ちゃんの三人で登校している。
私は自然と自分でも前よりも笑みが自然と溢れていることを実感している。
「二人とも、休日は何してた?」
衣珠季ちゃんがマネキンみたいな無表情で訊いてきた。
「土曜日は都斗君と遊んだよ」
私は迷うことなく笑顔でそう答えた。
「...月城君、本当?」
わざわざ都斗君に確認するほど信じたくないらしい。
「...ああ、土曜日は夜桜と新岡千駅周辺で遊んでたんだ」
「...そうなんだ」
でも残念でした。
もうどれだけ確認したってその事実はなかったことにはなりません。
「......」
早速学校に向かう。
そこからはまた無表情で固まる衣珠季ちゃん。
ここは追い打ちをかけてやろう。
「それにしても楽しかったよね都斗君。二人で服を選んだり、ゲームセンターで遊んだり、フードコードで昼食を食べたりして」
私は凄く明るく大きな声で言う。
衣珠季ちゃんはずっと無表情で黙ったままだ。
優しい都斗君はこの状況が気まずいのか早足で学校まで向かう。
教室の前に着き、元気よく教室の扉を開ける。
「みんなおはよー」
衣珠季ちゃんが豹変したときに負けないぐらい大きな声でクラスメイトにあいさつをする。
「お、おはよう」
周りの引くような本能には若干のイラつきを覚えたが、せっかくのこの雰囲気を壊すわけにはいかない。
「あ、衣珠季もおはよう」
「...おはよう」
良い感じに衣珠季ちゃんが転校初日みたいな状態になっている。
「ひ、響。今日はどうしたの?なんだがいつもより元気がいいっていうか」
菜草ちゃんが話しかけてくる。
「あ~実はね」
私はわざと皆にも見れるように大胆にもこそこそ話をした。
「私休日都斗君と二人でデートしてさ、いい感じになってるんだよね」
「え?月城君と!?」
「ちょっと声が大きいよ菜草ちゃん!」
大きい声で反応する菜草に、わざとらしく注意する。
こうすることで
「え、桐生と月城が...?」
「確かにあの二人仲いいもんね」
「相変わらず月城はうらやましいよなぁ~」
このようにモブどもが勝手に話を広げてくれる。
「えーと、響さん?」
「ん?どうしたの都斗君?」
「えーと、さっき湖三に何を言ったのかな?」
「?私はただこの土日は都斗君と二人っきりで楽しく遊んだって言っただけだけど」
わざとらしく首を傾げてみる。
自分で言うのもなんだが、私のこういうしぐさを可愛くないと思う男子はいない。
まだ都斗君が何か言いたそうな顔をしているが
「本当に楽しかったよね都斗君!」
それを大きな声で防ぐ。
「...た、確かに楽しかったよな」
都斗君も笑顔で応えてくれている。
「あ、そうだ。テストが終わったらどこかに旅行に行こうよ」
立て続けに恋人関係を匂わすことを大きな声で言う。
そこからはいつも通りの授業が続いた。
だが、ずっと衣珠季ちゃんが無表情で私と都斗君のことを見つめてくるのがなんだか気持ちよかった。
お昼になると都斗君に弁当箱を渡し、学食に行くのを防ぐ。
そして一応菜草ちゃんも誘う。
菜草ちゃんを誘ったのはもちろん衣珠季ちゃんが一緒に食べないようにする予防だ。
中身は昨日一生懸命作り、都斗君に私の愛が伝わるような弁当になっている。
「「「いただきます」」」
三人で合掌すると、都斗君は早速ふたを開けた。
「......」
あ、あれは照れてる顔だな//
「都斗君、どう?おいしい?」
食事中私は何回も都斗君にそう訊いた。
そのたびに
「うん、おいしいよ...//」
と顔を赤くして答える都斗君の姿に興奮を覚えた。
だが、五時間目になると急に都斗君がソワソワし始めた。
私はそれまで衣珠季ちゃんなんて眼中になかったから、授業が始まっても戻ってきてないことに気づかなかった。
私としてはこのまま一生帰ってこなくたって別いいのだが、都斗君はそういうわけにもいかないようだ。
しばらくすると授業中にも関わらず教室から飛び出していった。
だが、私は慌てなかった。
あの女を追いかけたって最後は私のもとに帰ってきてくれると慢心していた。
この慢心が、今の絶望を招く引き金になったのに。
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