響視点の物語9

三人で生徒会室の前に来た。


なぜこの女もついてきたのか不満でしょうがないが、都斗君を困らせるわけにはいかない。


生徒会室に入ろうとするも鍵がかかっているようだ。


「ちょっと呼びに行ってくるね」


本当は二人きりになんかしたくなかったが、一刻も早くこの女を帰らせなければならない。


「おや、君たち今日はずいぶん早いじゃないか」


ちょうどタイミングよく、私が職員室に向かおうとした瞬間、千宮司先輩が少し遅れてきた。


ただ遅れておいてその態度は気に食わないので一応言っておく。


「こんにちは千宮司先輩。私たちが早いんじゃなくて先輩が少し遅刻したのでは...」


「まぁそう言わんでくれ。少し帰りのホームルームがが長引いてね、これでも急いできた方なんだが」


言い訳だけは一人前だ。


すると千宮司先輩が衣珠季ちゃんの方を見た。


「ところでそこの君は誰かな?確か今日は桐生君と月城君を呼んだと思うんだけど」


よしきた!


さっさと断れ!


「初めまして千宮司央花先輩。私は夜桜衣珠季と言います。先日こちらの学校に引っ越してきて月城君と響ちゃんと同じ二年C組の生徒です。以後お見知りおきを」


「そ、そうなのか」


なんでちょっと押されているんだ!

こいつは本当に生徒会長か!?


「それで夜桜君、君は生徒会室に何のだい?」


「はい、響ちゃんから聞いたのですが今日生徒会室のプリント整理を人手不足だから生徒会に所属してない月城君にまで頼んだと聞きまして、私でよければ役に立つのではと思ったのです」


「そうか。それは大変助かる話だ。ぜひともお願いしたい」


やっぱりこいつは生徒会長なんかじゃなくただの戦犯野郎だった。


結局四人でプリント整理をすることになった。


「じゃ二手に分けようかな。私と月城君が手前の席のプリントを片付けるから夜桜君と桐生君は後ろの席のプリントを整理してくれるかな」


なんで私とこいつが!と思ったが、都斗君と二人で作業させるよりはマシだ。


かくしてプリント整理が始まったが、


「衣珠季ちゃん、それは捨てちゃダメなプリントだよ。なんで私に捨てていいかどうか訊かないのかな?」


「生徒会に所属してない身である私がそんなことわかるわけないでしょ。なら私が捨てる前に響ちゃんが言ってくれればよかったじゃない」


本当にこの女は使えなさすぎる。

しかも注意すると何らかの屁理屈で言い返してくる。


ごめんね都斗君。やっぱり私我慢できずに手を出しちゃいそう。


「だ・か・ら!何回言えばわかるのかな?今までの体育祭についてのプリントは捨てちゃダメなの」


「そんなに大きい声出さないでよ。これも私の行動をちゃんと見てなかった響ちゃんの責任」


「...っ」


お願い千宮司先輩。さっさと終わりにして。

じゃないと私本当に手が出ちゃいそうなの。


それから私は手を出そうとしては堪えてを何回も繰り返した。


「ありがとう三人とも、予定以上に早く終わったよ」


一時間ぐらいかかって、ようやく終わった。


あ、都斗君汗だくだ。

可愛い//


「それじゃ私はこれから塾があるから失礼するよ」


戦犯かましたくせに一番早く帰る千宮司先輩に冷ややかな目線を送った。


「お、俺たちも帰るか」


千宮司先輩に続いて私たちも帰宅する。


駅に向かっている途中に


「...そうだ。ねぇ月城君。この際だから私たちも生徒会に入らない?」


衣珠季ちゃんから予想外の提案が出た。


「響ちゃんもその方がいいんじゃない?今日みたいに早く仕事終わるしさ」


「......」


確かにそれは私からしても凄く魅力的だ。


もちろんそれは仕事が早く終わるkらという意味ではなく都斗君と一緒にあのクソ長くて無駄な活動ができるということだ。


だがこの女も付属としてついてくるというマイナスポイントは大きい。


ここはあえて


「月城君はどうするの?」


「お、俺は」


「無理しなくても良いよ都斗君」


断ってみよう。


「確かに私は都斗君が生徒会に入った方がうれしいけど、でももし都斗君がそういうのをあまり積極的にやりたがらないっていう性格を知っているから都斗君が無理をしてまで入ってきたところで私はちっとも楽しくなんかない」


「ひ、響...」


よし、いい感じに都斗君に響いている。


こうやって私が自分の気持ちよりも都斗君の気持ちの方を優先したとアピールできた。


「ふ~ん。ならいいけどさ」


ふん、ざまぁみろ!


誰がお前の案なんかに乗ってやるか!


「それじゃまた月曜日な夜桜」


「うん、またね二人とも」


岡千駅に着き、やっとあの女と別れた。


「ねぇ、都斗君」


「ん?」


「明日楽しみだね」


「ああ」


都斗君とこの会話ができた時点でわつぃは自分の価値を確信していた。


...だが、今にして思うと、ただ自分に酔っていただけかもしれない。

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