響視点の物語5
「今日は響ちゃんも生徒会活動ないみたいだし三人で帰ろうか」
また衣珠季ちゃんの方から誘ってきた。
まるで昨日私が衣珠季ちゃんのことを利用したように、衣珠季ちゃんが私を利用しているようだった。
「...そうだね。衣珠季ちゃんと帰るのも初めてになるし」
ここで断るのは私のプライドが許さないので帰ってやることにした。
昼食の時と同じように都斗君を挟んで三人で帰宅する。
「衣珠季ちゃんは何駅が最寄りなの?」
「私は東南駅だよ。響ちゃんは?」
「私は岡千駅だよ」
「じゃ月城君と同じなんだ」
まるでそれぐらいのハンデは与えてやるよと言っているような口調でイラつく。
「何か分からないところがあったらいつでも私に聞いてね!勉強にはかなり自信があるから」
いつの間にか都斗君と衣珠季ちゃんの間で会話が進んでいた。
「ぜ、全然私に訊いてもいいからね都斗君」
とっさに言ってしまったが、今のはまずかったかもしれない。
これじゃまるで私がこの女に対抗しているみたいな感じになってしまう。
「あ、ああ。確か響は日本史や世界史が得意だったよな。その二つを勉強するときはよろしく頼むな」
「う、うん」
まぁそれ以外のほとんどの教科もクラスTOPをとれるが。
「響ちゃんは社会科目が得意なんだね。私とは真逆」
だからどうした。
いちいち私と都斗君の会話に割り込んでくるな。
だがそう言うわけにもいかず
「そ、そんなことないよ。世界史と日本史なんて覚えれば誰でも点が取れるし。よかったら衣珠季ちゃんにも教えてあげようか?」
また心に思ってないことを言ってしまった。
「うん、お願いするね。それでいつか私も都斗君に教えられるようにまでなるよ」
「......」
これは挑発しているのか?
三人で電車に乗っていると
「そういえば月城君と響ちゃんは部活入ってるの?」
また衣珠季ちゃんから質問が飛んできた。
「私は生徒会活動が忙しくて入ってないかな」
面倒くさかったので素っ気なく答える。
そこからまた衣珠季ちゃんと都斗君の会話が始まった。
嫉妬で発狂しそうになるのを堪えていたので会話の内容は頭に入らない。
「それにしても響ちゃん生徒会に所属してるとかすごいね」
嫌味に聞こえた。
「い、いやたまたま投票で選ばれただけだよ」
どうしても突然話題を振られると噛んで答えてしまう。
まるで私が焦ってるみたいじゃないか。
「私も選挙に出ようかな」
なるほど。
それはいい。
私の全人脈を使って叩き潰してあげる!
「じゃ夜桜、また明日な」
「それじゃ衣珠季ちゃん、また明日ね」
「うん。また明日ね二人とも」
やっと邪魔な女が帰っていった。
だが私の気持ちは晴れない。
「そ、それにしても今日一日大変だったなぁ~」
「......」
都斗君が必死に私の機嫌を戻そうと話題を振ってくれている。
「夜桜が思った以上に積極的な性格になったから驚いたよ」
「......」
でも、この場であの女の名前を出す無神経さは直してほしい。
「それにしても夜」
「ねぇ都斗君」
「ん?」
「昨日本当は衣珠季ちゃんと何してたの?」
私は我慢できず訊いてみた。
都斗君を疑うなんてことはしたくないけど、こればかりは本当のことを訊かなくちゃならない。
「じ、実は昨日夜桜の家に行ったんだ」
「家に?転校初日の女の子の?」
「ああ、そこでいろいろと二人でお菓子を食べながら雑談を交わしていたんだ」
「......」
何となく気づいていたけど、いざ言われると大きなショックだった。
都斗君が私以外の女の子の家に行ったという事実を肯定したくなかった。
「そう。あの都斗君が家まで行ったんだ...」
やっとの思いで出た声は、自分でも驚くほど低い声だった。
「ねぇ都斗君、今度もし衣珠季ちゃんの家に誘われることがあったら私に連絡して。私も行くから」
「え?響も?なんで?」
「細かいことはどうでもいいの。いい?絶対だよ」
「あ、ああ」
もしまたあの女が都斗君を自分の家に誘ったら、今度こそたたじゃおかない。
「よかった。じゃ帰ろうか!」
今の気持ちを隠すために、都斗君の手を掴んで帰った。
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