響の反撃
今日も夜桜と響の三人で登校している。
「二人とも、休日は何してた?」
いきなり夜桜が訊いてきた。
「......」
返答に困る。
別にただ響と遊んだと答えればいいだけだが、なぜかそれは爆弾発言だと俺の第六感が騒いでいる。
「土曜日は都斗君と遊んだよ」
満面の笑みで答える響。
「...月城君、本当?」
夜桜が無表情でそう訊いてきた。
ここは嘘を言う方がまずいだろう。
「...ああ、土曜日は夜桜と新岡千駅周辺で遊んでたんだ」
「...そうなんだ」
それっきり夜桜は黙ってしまった。
ただ、今までみたいに不機嫌そうに黙っているのではなく、ただただ無表情で黙っていた。
「それにしても楽しかったよね都斗君。二人で服を選んだり、ゲームセンターで遊んだり、フードコードで昼食を食べたりして」
響は矢桜にかまわず、土曜日の思い出話を話している。
この状況はとんでもなくまずいと思い、学校まで急いだ。
思っていた以上に俺のペースが速かったらしく、気づかないうちにもう学校の校庭までついていた。
ただ幸いなことにもう結構の数の生徒が登校しているため、前みたいに三人だけということにはならなそうだ。
今のまま教室に三人だけということ以上に気まずいことはない。
「みんなおはよー」
響が元気よく教室の扉を開けた。
「お、おはよう」
クラスのみんなも響の明るさに驚き、少し引きながら挨拶を返している。
響は一応クラスでも友達が多い方だが、陽キャ女子というわけでもない。
その響がこうして元気よく皆にあいさつするなんて今まではなかった。
「あ、衣珠季もおはよう」
「...おはよう」
反対に夜桜はそっけなく返す。
まるで転校初日に時計が戻ったみたいだ。
...てか俺にあいさつがないのが地味に傷つくんだが。
「ひ、響。今日はどうしたの?なんだがいつもより元気がいいっていうか」
比較的に響と仲がいい女子の
「あ~実はね」
そう言って何か二人がこそこそ話をしている。
「え?月城君と!?」
「ちょっと声が大きいよ菜草ちゃん!」
二人の声が大きかったため、クラス中がこっちに注目している。
「......」
なんかいやな予感がする。
今度はクラス中がこそこそ話をする。
「え、桐生と月城が...?」
「確かにあの二人仲いいもんね」
「相変わらず月城はうらやましいよなぁ~」
しかもちょっと聞こえるぐらいのこそこそ話。
「えーと、響さん?」
「ん?どうしたの都斗君?」
「えーと、さっき湖三に何を言ったのかな?」
「?私はただこの土日は都斗君と二人っきりで楽しく遊んだって言っただけだけど」
それがどうしたの?と言わんばかりに首をかしげる響。
そのしぐさはかわいいが、少し言い方を考えてほしい。
しかも土日じゃなくて土曜日だけで、日曜日は千宮司さんと学校で一緒に弁当を食べた...とは今の響きには言えなかった。
「本当に楽しかったよね都斗君!」
大声でしゃべる響。
そのたびにクラス中でこそこそ話が起きる。
「...た、確かに楽しかったよな」
仕方なくひきつった笑みでそう答える。
「あ、そうだ。テストが終わったらどこかに旅行に行こうよ」
なんで今そんな後の予定を立てる?
しかも大声で。
「おーいお前ら、もうホームルームの時間だぞ。さっさと席につけ」
先生が入ってきたことによりこそこそ話が終わる。
だが、ホームルーム中もずっと響がわざとらしく話しかけてくる。
「ねぇねぇ都斗君、今日に昼はどうしようか」
わざと近くの席の人には聞こえるような音量で話す。
そのため、席が近い湖三なんかはあからさまに動揺している。
...これは後で噂が学年中に広まるな。
俺はそんなことばかり気にしていた。
そのため俺は気づかなかった。
ずっと隣の席で夜桜が虚ろな目をしていることに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます