会長と二人きりの雑務

今日は日曜日だ。


一応テスト勉強としてこう机ぬ向かっているが、正直もうテスト範囲の内容はどの教科もほとんど勉強したので、今更やることがない。


「とりあえずYoutubeでも見るか」


暇つぶしと言ったらYoutubeだ。


早速Youtubeのアプリを開こうとしたらLINEの通知が表示された。


「これは...げっ、千宮司先輩だ」


あの人が直接俺にLINEしてくるなんて珍しい。


正直未読無視しておきたかったが、そうなると後がめんどくさそうなので仕方なくLINEの内容を見た。


「今おそらく私からのLINEの通知を見てげっ、と思ってると思うが、今日これから学校に来ることはできないだろうか。少し手伝ってほしいことがある」


どうせまた雑務とかだと思うがほかに特にすることもないので学校に向かうことにする。


帰宅部が日曜日に学校に登校するなんて成績不振で親を呼ばれる時ぐらいだ。


電車に乗り、学校の最寄り駅までつく。


「それにしても暑いな」


この気温はもはや殺人である。


それにしても千宮司先輩、よくこんな蒸し暑い中学校に行けるものだ。しかも休日。


学校に到着すると、校庭には誰一人いないのが不気味だった。


通常なら休日でも運動部が校庭で練習しているが、今はテスト期間なので誰もいない。


「厳密に言うと千宮司先輩しかいないってことか」


とりあえず生徒会室に向かう。


「マジで誰もいないな」


よくテレビで見る怖い話の再現VTRみたいだ。


生徒会室に入ると、いつものように千宮司先輩が会長席で偉そうに腕組して座っていた。


「おや、来たか」


「来たか、じゃないですよ。なんですか、こんな休日に呼び出しなんて」


「すまないすまない。私も昨日聞いた話なんだ」


「昨日?」


「まぁとりあえず移動しようか」


そう言うと三階にある男子トイレまで移動した。


「ここだ」


「何がですか?」


「ほら、昨日保護者会があっただろ?その時に保護者から三階の男子トイレの個室が詰まってるって話が出てね」


「...つまり俺に詰まりをとれということ?」


「その通り。ほら、私って男友達が少ないだろ?だから君ぐらいにしか頼れないんだよ」


むかつく話だが、千宮司先輩はその男装っぽい見た目から女子にばっかりモテる。


ただ本人は百合には全く興味ないらしい。


「じゃあさっそく一つ一つの個室の詰まりをとっていくよ」


それから俺と先輩はつまりとりを使って一つ一つつまりをとっていった。


「つ、疲れた」


全部直すころには2時間ぐらいたっていた。


「お疲れ様。いや本当に助かったよ」


先輩も十分動いたはずなのに汗一つかいてない。


「そうだ、月城君のために弁当作ってきたんだ。よかったら食べるかい?」


「え」


あの千宮司先輩が俺のために弁当を?


「なんだい。私が君のために弁当を作ったのがそんなに意外だったのかい?」


「そ、それはもちろん」


「私も女だ。弁当ぐらい作れるさ」


いや、そういうことじゃなくて


「まさか私が君のことを奴隷のように思ってると」


「ま、まぁ」


「失礼なやつだな。君のことはこの学校の生徒で私と仲良くしてくれる大切な友だと思っているよ」


「//」


なんか口説かれてる感じがする。


「とりあえずここではなんだから生徒会室に戻って食べようか」


生徒会室に移動して先輩が作ってきた弁当を拝見する。


どうやら中身は男子が好みそうな唐揚げ弁当だった。


「どうだ。おいしいか?」


笑顔で先輩が訊いてくる。


悔しいがここは正直に言おう。


「...おいしいです」


本当に美味しい。

まさに母さん弁当とはこのことだと思う。


「よかった。私も頑張って作ってきた甲斐があったよ」


「//」


さりげなくそういうこと言うのはやめてほしい。


美味しすぎて手が止まらず予想以上に早く弁当を食べ終わった。


流石にもうやることもないだろうと思い


「それじゃ先輩、今日はお疲れさまでした」


そう言って帰ろうとすると


「月城君、少し待ってくれ」


先輩に呼び止められた。


「あのさぁ。よかったら君も生徒会に入らないか」


一昨日夜桜に言われたことを訊いてきた。


「知っての通り、今の生徒会の役員がほとんど幽霊部員状態でね、もしよかったら月城君も入ってくれないか?」


「...俺も一昨日響に生徒会に入ろうか?って聞いてみたんですけど、無理しなくても良いよって言われちゃいましてね」


響が俺のためを思って言ってくれたことを無駄にはできない。


「だからすみません。今はまだ入ることができません」


「...そうか。もし気が向いたらいつでも相談してくれ」


そう言う先輩の顔は少し寂しそうだった。

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