響とデート

今俺は新岡千駅の改札口にいる。


「えーっと響は」


辺りを見渡して響を探していると


「都斗君、こっち~」


改札の向こうに響がいるのが見えた。


「わりぃ響。どれぐらい待った」


「うんうん、私も今来たところ」


お決まりのセリフだ。


「えーと、今からどうする?」


「そうだね。遊ぶってだけでぐ台的な内容まで決めてなかったからなぁ~」


ここは買い物でも誘ってみるか?


「なぁ響。まずは定番の買い物なんてしないか?」


「そうだね。そろそろ今着ている服もサイズが合わなくなってきたから都斗君に選んでもらおうかな」


そうと決まれば俺たちは早速駅の近くにある大型ショッピングモールの中に入っていった。


「あ、ここ前にもテレビで紹介されてたよね」


「確かに見たことある名前だな。あれ?でもここブランド物の服しか売ってなかった?」


「大丈夫だよ。金は有り余っているから」


「......」


夜桜の家も大きかったが、響の家も匹敵するぐらい大きく、俺とは比にならないほどの金持ちである。


「え~と、これとこれとだったらどっちがいいのかな?」


俺は服についての知識は少ないが、響が手に持っているのはどっちともドレスのようなものだった。


「...どっちも響には会わないんじゃないかな...?」


「え、そうなの?都斗君がそう言うなら他のにしよう」


結局響の服選びに約一時間ぐらい付き合わされた。


そのあとは適当にショッピングモールの中をウロチョロしていたらいつの間にかゲーム店に入っていた。


「あ、都斗君、このゲーム覚えてる?懐かしいな」


響が言っているのは中学校一年生の時によく響の家で一緒にプレイした協力型のホラーゲームだ。


「確か都斗君がラスボスに行く手前でゾンビにやられちゃって私一人だけで倒したんだよね」


「ああ、あそこでのいきなりゾンビはマジで反則だったな」


今思えば響一人でも余裕でクリアできるほどだった気がするが。


「あの時は本当に楽しかったよねぇ~。ほぼ休日は毎週私か都斗君の家で言って遊んだよね」


本当にカップルのようなことをしていた。


「三年生になったら受験勉強に集中しなくちゃいけなかったからあんまり二人の家で遊ぶことができなかったけど」


三年生の時は二人で図書館で勉強していた。


「ねぇ、もしよかったらさ、また前みたいに家でゲームとかして遊ばない」


「え?」


高校生でそういうことをするのはもう恋人というほかない。


「...うーん、さすがに俺たちもう高校生だからなー」


「そうか...うん、そうだよね。私たちもう前みたいに何にも考えなくていい年齢じゃないんだよね」


そう呟く響は目に少し涙を浮かべていた。


「で、でもさ、代わりにこうして前にはできなかったような遊びとかもできるからさ」


「...うん、そうだね」


よかった。

最近はシリアスな空気になることが多いから少しでも明るく振舞わないと。


「よし、じゃ次はゲームセンターでも行くか」


「うんいいね、レースゲームとかで対戦しよう!」


ゲーセンで二時間ぐらい時間をつぶすとお昼のなったのでフードコードに行く。


「俺はオムライスにするけど響はどうする」


「そうだね。私も今日はオムライスにしようかな」


高校生になってからオムライスを食べる機会が減ったと思う。


二人で店に並びオムライスを受け取る。


「都斗君、私がケチャップをかけてあげるよ」


「おお、サンキュウ」


響は俺と自分のに丁寧にけちゃおおうをかけていく。


そんなに丁寧にかけなくてもいいのに...。


そんな風にも思ったが響が凄い丁寧にかけているので口に出せない。


「よし。できたよ」


オムライスの方を見ると


「...これはハートかな?」


「うん、ほら、私のとお揃い」


響のオムライスにもケチャップで綺麗なハートマークが書かれていた。


「じゃ、食べよう」


「う、うん」


自然と顔が赤くなるのを感じる。


中学校までは

しょっちゅうこういうことがあったが、なんとも思わなかった。

だが今はこういうことをされるとわけもなくドキドキしてしまう。


「うん、どうしたの都斗君。スプーンが止まってるよ」


「い、いや何でもない」


恥ずかしさを紛らわすために急いでスプーンを口まで運んだ。


「ふ~食べ終わったね」


「もうお腹いっぱいだな」



早く食い過ぎたせいか、もうこれ以上何も食べられなさそうだ。


「じゃ次は勉強タイムかな?」


「そうだな。もともとそれメイン出来たんだしな」


この新岡千駅周辺は塾がたくさんあり、その自習室は誰でも使える。


「もう来週からテスト一週間前だからみっちり教えてあげるよ」


響はいつにもなくやる気になっていた。


響がこんなにも俺に勉強を教えることに対してやる気になってくれたのを嬉しく思うのと同時に、俺の体力が持つのか不安に思いつつ、塾の自習室に向かった。

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