雑務を三人で
「ここが生徒会室なんだ」
放課後に三人で生徒会室の前までやってきた。
「まだ千宮司先輩は来てないみたいだな」
生徒会室の中に入ろうとも鍵がかかってるため入れない。
人を呼びつけておいて自分は遅れるとはとんでもないな。
「ちょっと呼びに行ってくるね」
響が二年生の教室まで先輩を呼びに行こうとすると
「おや、君たち今日はずいぶん早いじゃないか」
後ろから聞いたことのあるような上から目線の声が聞こえてきた。
「こんにちは千宮司先輩。私たちが早いんじゃなくて先輩が少し遅刻したのでは...」
ずばずば言う響。
「まぁそう言わんでくれ。少し帰りのホームルームがが長引いてね、これでも急いできた方なんだが」
その割にはずいぶん余裕のある感じがするが。
「ところでそこの君は誰かな?確か今日は桐生君と月城君を呼んだと思うんだけど」
千宮司先輩が夜桜の方を見て言う。
「初めまして千宮司央花先輩。私は夜桜衣珠季と言います。先日こちらの学校に引っ越してきて月城君と響ちゃんと同じ二年C組の生徒です。以後お見知りおきを」
「そ、そうなのか」
あまりにも優雅な挨拶に千宮司先輩も驚く。
「それで夜桜君、君は生徒会室に何のだい?」
「はい、響ちゃんから聞いたのですが今日生徒会室のプリント整理を人で不足だから生徒会に所属してない月城君にまで頼んだと聞きまして、私でよければ役に立つのではと思ったのです」
「そうか。それは大変助かる話だ。ぜひともお願いしたい」
「ありがとうございます」
こうして千宮司先輩、夜桜、響、俺の四人でプリント整理を行うことになった。
生徒会室に入ると予想以上にいたるところにプリントが散らばっていた。
正直なんでこんなに散らばっているのか無性に気になる。
「じゃ二手に分けようかな。私と月城君が手前の席のプリントを片付けるから夜桜君と桐生君は後ろの席のプリントを整理してくれるかな」
なんでその人選にする!?
と思ったがまだ千宮司先輩は響と夜桜の不仲説を知らないどころかさっき夜桜と初めて出会ったばかりだから無理もないと思う。
四人とも無言でプリント整理をする。
プリント整理をすると言ってもただやみくもに散らばっているプリントを捨てればいいという問題ではなく、しっかりとこれは捨てていいのかといちいち千宮司先輩に確認しなければならない。
「月城君、月城君」
集中して整理に取り掛かっていると千宮司先輩が俺のことを呼んでいた。
「なんですか先輩?」
「なんかあの二人険悪な雰囲気になっていないか?」
「え?」
夜桜と響の方を向くと
「衣珠季ちゃん、それは捨てちゃダメなプリントだよ。なんで私に捨てていいかどうか訊かないのかな?」
「生徒会に所属してない身である私がそんなことわかるわけないでしょ。なら私が捨てる前に響ちゃんが言ってくれればよかったじゃない」
小声とかではなく普通に大きな声で言い合っている。
「あれですよ、今日二人ともちょっと喧嘩しちゃって」
「桐生君がかい?」
先輩が驚くのもわかる。
響は普段はとても明るくて優しい子なのだ。
最近は妙に千宮司先輩にたてついているが、普段は凄く従順である。
「まぁ桐生君もテスト期間が近づいていることでストレスが溜まっているんだろうな」
それはアンタだろうと言いそうになるのを堪える。
それからは整理も順調に進み、意外と早く終わった。
「ありがとう三人とも、予定以上に早く終わったよ」
俺は使えすぎて汗をかいているが他の三人は呼吸一つ乱れていない。
「それじゃ私はこれから塾があるから失礼するよ」
そう言うと千宮司先輩は去っていった。
「お、俺たちも帰るか」
ずっと不機嫌そうに黙ってる二人を連れて駅まで向かう。
「...そうだ。ねぇ月城君。この際だから私たちも生徒会に入らない?」
「え?」
まさか夜桜からそんな提案をされるなんて思ってもいなかった。
「響ちゃんもその方がいいんじゃない?今日みたいに早く仕事終わるしさ」
「......」
響はずっと黙っている。
正直生徒会に入るなんてだるいという言葉でしか表現できないが。もし夜桜だけ入ったら何か大事件が起こりそうな気がする。
「月城君はどうするの?」
「お、俺は」
「無理しなくても良いよ都斗君」
了承する前に響が声を遮ってきた。
「確かに私は都斗君が生徒会に入った方がうれしいけど、でももし都斗君がそういうのをあまり積極的にやりたがらないっていう性格を知っているから都斗君が無理をしてまで入ってきたところで私はちっとも楽しくなんかない」
「ひ、響...」
まさか響がここまで思っていてくれていたとは。
「ふ~ん。ならいいけどさ」
夜桜がどこかつまらなさそうに呟く。
それからはまた沈黙に戻ってしまう。
だが気づけばもう駅までついていた。
「それじゃまた月曜日な夜桜」
「うん、またね二人とも」
最寄りの岡千駅に着いたため夜桜と別れて家に向かう。
「ねぇ、都斗君」
「ん?」
「明日楽しみだね」
「ああ」
まるで付き合いたての恋人みたいな会話をしながら帰った。
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