響と自習
「確かここは需要と供給が」
今俺は朝にお願いした通り響に公民を教えてもらっていた。
テスト期間が近くなると体育は自習するか外で運動するか選べる。
当然運動音痴の俺は自習を選んだ。
響は運動音痴というわけではないが、俺に公民を教えるために自習を選んでくれた。
夜桜は響が俺に勉強を教える光景を見たくなかったのか外に行った。
「凄いね都斗君、この前教えた時よりも全然できるようになってるじゃん」
「まぁ授業中は寝ないでしっかりと聞いてるからな」
授業中中に寝ないというのが俺の唯一の取り柄だと思う。
「そんなことない」
「え?」
「都斗君の取り柄はいっぱいあるよ。都斗君自信は気づいてないかもしれないけど、わたしは都斗君の良いところいっぱい知ってるよ」
驚いた。
心を読まれたところも驚きだが、響が真剣な顔をして俺のことを称賛するもんだから少し照れてしまう。
「あ、ありがとう」
「ううん、お礼を言いたいのは私の方。普段から都斗君は私を元気づけてくれるもん」
そうなのか?
「で、でも響の良いところもたくさんあるぞ」
「え?」
「ほら、響はこうして丁寧にも俺に勉強を教えてくれてるじゃないか。中学の時からずっと」
「都斗君...」
「それだけじゃない。とにかくたくさんあるけどここで礼を言わせてくれ。響、いつもありがとう」
「......」
響が涙目になっているのが分かる。
「......」
「......」
しばらく二人とも感傷に浸り沈黙が続く。
だが、時間は有限じゃない。
せっかく響に勉強を教えてもらっているためいつまでもこうしているのはもったいない。
「ひ、響?次はここの問題をお願いしたいのだが」
「あ、そ、そうだったね。えーっと、ここはドント式を使って...」
こうして響に公民を教えもらい続けていると授業が終わるのが近づいてきた。
「お、そろそろ自習の時間が終わるな。響、ありがとな」
そう言って席をもとの位置に戻そうとすると
「み、都斗君」
響が呼び止めてきた。
「よ、よかったらさ明日も二人で勉強しない?」
「え?」
明日は休日だ。
「昨日日本史と世界史も教えてほしいって言ってたでしょ?だから明日も勉強しないかなって」
「まぁ響がいいならいいけど」
「...よかった」
「あ、それなら」
夜桜もと言いそうになった口を必死に抑える。
ここで夜桜の名前を出すのは一種のばくちに近いと感じたからだ。
「?何か言おうとした都斗君?」
「い、いいや何でもないよ。それよりも響、せっかく一緒に休日で出かけるなら勉強以外にもどこかで遊んだりしないか」
「いいねそれ!じゃ待ち合わせは
新岡千駅というのは、周りに娯楽施設がたくさんある駅のことである。
「いいよ」
響も凄い乗る気になったので安心する。
授業終了のチャイムが鳴り、運動組がぞろぞろ帰ってきた。
そこには夜桜の姿もあった。
夜桜は教室に帰ってくると一目散に俺の方に向かってきた。
「どう月城君。勉強は進んだ?」
「ああ、響の教え方が上手なおかげでかなり進んだよ」
「ふ~ん、そうなんだ」
やはり響の名前を出すと不機嫌になるな。
だがそれは響も同じことにらしい。
帰ってきた夜桜のことを見るとさっきハイテンションで遊ぶ約束をしていたのが嘘であるかのように顔が冷たくなった。
「ねぇ、じゃあ次の自習の時間は英語を勉強しない?」
「え?ああ、じゃよろしく頼もうかな」
俺が了承した瞬間後ろの響のオーラが一気に不変わったのを感じたが、こればかりは仕方ない。
「...衣珠季ちゃん。あんまりそうやって無理に勉強を教えようとすると都斗君にプレッシャーがかかると思うよ」
冷酷な声で響が言う。
「...それを言うなら響ちゃんも朝月城君に公民を教えるのを無理に勧めてたよね」
「そんな強要したなんて言い方やめてよ」
「事実してたじゃない」
まずい。
だんだんクラスメイト達も二人の様子を見て何かヒソヒソ話している。
「そ、そういえば二人とも、今日は昼食どうしようかな?学食?それとも購買?」
「購買」
「学食」
「......」
まさかここでも意見が食い違うとは。
これは俺がなだめ役に回るしかないな。
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