三人で登校

「...ん」


今日もスマホのアラームで目を覚ます。


今日もいつも通り洗面所で顔を洗おうとすると


「今日は響ちゃんのほかにもう一人女の子が来てるわよ」


「え?」


響のほかに...?


多分夜桜のことだろうが、夜桜に俺の家を教えた覚えはないぞ。

てかこれ早く行かないとまずくないか?


昨日の様子からして響は夜桜と一緒にいると機嫌を悪くする。


俺は顔を洗い、自室に駆け込み学校の支度を済ます。


「制服は...あれ?どこだ?」


なんでこんな時に限って制服が見つからない。


部屋のあちこちを探し回っていると、鏡を見て気づいた。


「...普通に着てるわ」


多分さっき学校の支度をしていた時に無意識に着ていたのだろう。


そんなことに気づかないぐらい自分は今焦っているんだろう。


一階に降りると急いで玄関に向かう。


外に出ると


「あ、おはよう月城君」


「...おはよう都斗君」



まぶしい笑顔を放つ夜桜と、絶対零度を感じさせる顔をしている響がいた。


「え、えーっと、二人ともおはよう」


とりあえず門を開ける。


「な、なんで夜桜がここに」


「?なんでってただ月城君を迎えに来ただけですけど」


「いや、なんで俺の家を知ってるんだ?」


「学校に向かう途中に岡千駅に降りて月城君の家を探していたら響ちゃんを見つけたの」


平然と言う夜桜。


「そ、そうなのか響?」


響は相変わらず夜桜のことを冷たい目で見つめている。


俺に呼ばれたことで正気に戻る。


「え、う、うん。都斗君の家の前で待っていたら衣珠季ちゃんがこっちに向かってきて...」


どうやら本当らしい。

でも普通学校に向かう途中で同級生の最寄り駅に降りるか?


「さ、二人とも早く行くよ。結構ギリギリな時間だしさ」


「え?あ、ほんとだ」


時間を見ると昨日より30分ぐらい遅いことに気づく。


いつも俺は五分ごとにアラームを設定しているのだが、今日は一番遅いアラームで起きてしまったらしい。


いつもより少し早いペースで歩き駅に向かう。


「今日も響ちゃん生徒会活動休みなの?」


「う、うん。来週からテスト期間だからね」


「ふ~ん、そうなんだ」


...なんかこの二人の会話を聞くのがだんだん恐怖になってきた。


「...もしかして衣珠季ちゃんは私に活動をもっとやってほしいのかな?」


「?別にそんなこと思ってないけど?なんだ?」


「だってそうすれば都斗君と二人きりになれるし...」


最後の方は欲聞き取れなかったが、これ以上響にしゃべらしてはいけないっていうことだけは分かった。


「そ、そういえば響、今日の体育多分自習だろ?だからその時に今度は公民を教えてほしくて」


「あ、う、うん!公民は私も得意だし都斗君に教えられるぐらいの学力はあると思う」


とりあえず響の状態を安定させる。


「ふ~ん、今日は英語じゃなくて公民勉強するんだ...」


気のせいかな?今度は夜桜の声のトーンが下がった気がするが。


だが幸運なことに夜桜が何かを言う前に駅に到着し、もう電車が来ていた。


「......」


「......」


「......」


流石に電車に乗っている途中は会話はできない。


ただ夜桜の機嫌が少し悪いということは顔から推測できる。


学校の最寄り駅に着いたので三人で降りる。


「そういえば都斗君、今日の放課後生徒会活動があって、ちょっと人員不足だから都斗君にも来てもらいたいんだけど...」


「え?テスト期間が近いから活動は休みなんじゃ...」


「そ、それがね、千宮司先輩がちょっとプリントを整理したいけど人員不足だから都斗君にも来てほしんだってさ」


「そ、そうなのか。まぁ俺はなんも予定ないからいいけど」


あの腹黒会長。

プリント整理なんかわざわざこの時期にしなくてもいいだろ。


「ねぇ響ちゃん。それって私も手伝ってもいいのかな?」


ずっと不機嫌そうに黙っていた夜桜が突然口を開いた。


「いや、衣珠季ちゃんは来なくても大丈夫だと思うよ。私と都斗君だけで足りると思うし」


冷たく突き放す響。


「響ちゃんは月城君と自分だけで足りると思っているかもしれないけどその千宮司先輩はどう思ってるか分からないでしょ?ボランティアということで手伝えに来ればあの先輩も喜ぶと思うんだけどな」


返しが上手い。


「べ、別にいいんじゃないかな響。もしついてきて千宮司先輩が必要ないって言ったら俺と響で整理すればいいし」


「...都斗君がそう言うならいいけど...」


よかった。

もしここで響が何か言い返してでもいればすごく険悪な雰囲気になっていたに違いない。


一安心して足を進めると学校が見えてきた。


だがこれはあくまで予想というか予感なのだが、今日一日中この雰囲気が続くと思う。

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