三人で帰宅
「今日は響ちゃんも生徒会活動ないみたいだし三人で帰ろうか」
放課後になると夜桜がそう提案してきた。
ほんと積極的になったと思う。
「...そうだね。衣珠季ちゃんと帰るのも初めてになるし」
響が断るんじゃないかと思ってドキドキしていたが、その心配はなさそうだ。
三人で並んで学校の最寄り駅まで歩く。
「衣珠季ちゃんは何駅が最寄りなの?」
「私は東南駅だよ。響ちゃんは?」
「私は岡千駅だよ」
「じゃ月城君と一緒なんだ」
同じとはいっても確か響の家は駅から15分以上かかるから距離的に結構離れているが。
「月城君、テスト勉強は進んでる?」
「んん~進んではいるけど内容がしれなりに難しいからな~」
やっぱり明善の偏差値が低いというのも響目線の話だよな。
「何か分からないところがあったらいつでも私に聞いてね!勉強にはかなり自信があるから」
それは英語の時間の教え方で思い知ったよ。
「ぜ、全然私に訊いてもいいからね都斗君」
響がまるで対抗するかのように言う。
「あ、ああ。確か響は日本史や世界史が得意だったよな。その二つを勉強するときはよろしく頼むな」
「う、うん」
力強くうなずく響。
「響ちゃんは社会科目が得意なんだね。私とは真逆」
夜桜は暗記科目が苦手なのか。
「そ、そんなことないよ。世界史と日本史なんて覚えれば誰でも点が取れるし。よかったら衣珠季ちゃんにも教えてあげようか?」
「うん、お願いするね。それでいつか私も都斗君に教えられるようにまでなるよ」
「......」
またもや響が沈黙してしまう。
「ま、まぁ帰りに勉強の話なんてやめようぜ。ほら、改札通るぞ」
改札を通り、ホームで電車が来るのを待った。
「そういえば月城君と響ちゃんは部活入ってるの?」
あまり聞かれたくない質問が来た。
「私は生徒会活動が忙しくて入ってないかな」
「お、俺も...」
「え?月城君生徒会に入ってるの?」
「いや、ただの帰宅部です」
こんなこといちいち言わせないでくれ。
「そうか、なんか安心した」
どう意味かな?
「それにしても響ちゃん生徒会に所属してるとかすごいね」
「い、いやたまたま投票で選ばれただけだよ」
たまたまにしてはかなり表が入っていたが。
「私も選挙に出ようかな」
「え?」
気のせいか?今夜桜が選挙に出る的なことを言っていた気がするが。
そうこうしているうちに電車が到着し、岡千駅に着いた。
「じゃ夜桜、また明日な」
「それじゃ衣珠季ちゃん、また明日ね」
「うん。また明日ね二人とも」
夜桜と別れ家まで歩く。
「そ、それにしても今日一日大変だったなぁ~」
「......」
「夜桜が思った以上に積極的な性格になったから驚いたよ」
「......」
響がずっと無言なので何とかしゃべり続ける。
「それにしても夜桜」
「ねぇ都斗君」
「ん?」
「昨日本当は衣珠季ちゃんと何してたの?」
「......」
響には悪いがこればかりは本当のことを話すわけにはいかない。
だがそれだと響はいつまでも納得しないだろう。
「じ、実は昨日夜桜の家に行ったんだ」
「家に?転校初日の女の子の?」
「ああ、そこでいろいろと二人でお菓子を食べながら雑談を交わしていたんだ」
「......」
これはうまくごまかせたのか...?
「そう。あの都斗君が家まで行ったんだ...」
なんか自己満足してくれてる感がする。
「ねぇ都斗君、今度もし衣珠季ちゃんの家に誘われることがあったら私に連絡して。私も行くから」」
「え?響も?なんで?」
「細かいことはどうでもいいの。いい?絶対だよ」
「あ、ああ」
真剣なトーンで言われたので了承するしかない。
「よかったじゃあ帰ろっか!」
俺が了承すると突然いつもの響の雰囲気に戻った。
正直その切り替えの早さに気味悪さを感じたが、そこはあまり考えないようにする。
そこから俺たちは登校の時と同じように手をつなぎながら家の方に歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます