三人で購買へ

「月城君、響ちゃん、今日は私購買に行ってみたいな」


昼休みになると今度は夜桜から誘ってきた。


「購買か」


今の時間ならギリギリ弁当が残ってるかもしれない。


「響も購買にするか?」


「...うん、そうだね。昨日学食行ったから今日は衣珠季ちゃんに購買のことを教えてあげようか」


そうと決まれば少し急ぎ足で行かなければならない。


何せここは四階というディスアドバンテージがあるのだから。


三人で急いで一階の購買まで向かう。

てか夜桜の足が普通に早い。

やっぱりスポーツも万能そうだ。


「よし、まだ三人分の弁当は売り切れてないな」


少し割り込みながら三個の弁当を買った。


「どこで食べようか?」


辺りを見回してみるとちょうどいいところに少し大きめのベンチがあった。


三人でそのベンチに座る。


それぞれの端に夜桜と響が座り、俺が挟まれる形となっている。


「......」


こんな姿をクラスの男子に見られたら今度こそ何かしらの制裁を食らうかもしれない。


「この学校って結構弁当の種類多いんだね」


「まぁ私立だからな。夜桜の通っていた正徳の購買はどんな感じだった?」


言い終えて後悔した。


夜桜にとって正徳での記憶は決していいものではないとわかっていたはずなのに。


だが夜桜は特に気にした様子もなくすんなりと答えた。


「正徳は学食がなくて購買だけだったから多分ここよりも種類多かったと思うよ」


「そ、そうか」


よかった。

俺のせいでシリアスな雰囲気になるのはごめんだからな。


「ね、ねぇ衣珠季ちゃん」


すると今まで黙っていた響が夜桜に話しかけた。


「ん?どうしたの響ちゃん」


「きょ、今日はどうしたのかな?昨日と比べてずいぶん明るくなったみたいだけど」


驚いた。

響がそんなこと聞くなんて。


「私は普通はこんな感じなんだけど昨日は転校初日でいろいろと緊張してあんな素っ気ない態度とっちゃったんだ。だからごめんね響ちゃん」


それは半分事実だな。


「でもね、昨日の帰りに月城君がそんな私のことを元気づけてくれたから今日はこんなに皆に明るく振舞えているんだ」


「......」


そこから響は黙り込んでしまった。


なんとも言えない空気の中三人とも弁当を食べ終わる。


「まだ五時間目まで時間あるし朝の続きしようか」


校舎案内のことか。


俺は全然OKだが響は大丈夫なのか?


「...そうだね、じゃ次は三階を案内しようか」


よかった。響も乗る気みたいだ。


そこから三人で三階を回った。


「ここが調理室でここが」


「おや、こんなところで何をしてるんだい」


「!?」


また後ろからいやな気配を感じる。


そうだった。三階は生徒会室があるんだった。


「こんにちは千宮司先輩。私たちは昨日転校してきたクラスメイトの子に校舎を案内してるんです。先輩こそここで何を?今日は活動はお休みのはずでは?」


「私は次の五時間目が調理実習だから調理室に行こうとしただけだ」


だから手に先輩に全く似合わないウサギのエプロンを持っているんか。


「...月城君。今何か癇に障るようなこと想像しなかったかい?」


「いえ何も」


危な。


「そうかい。なら私はもう行くよ。それと桐生君、放課後の生徒会活動ももう休みだから安心したまえ」


「ありがとうございます」


千宮司先輩相手にこの態度を貫ける響は本当に度胸があると思う。


「...今の人は?」


「この学校の生徒会長だよ。いつもあんな喋り口調なんだよ」


「そうなんだ」


夜桜は興味がありそうに千宮司産廃の背中を見つめている。


「私たちももうすぐ五時間目が始まるね。もう戻ろうか」


響の提案により教室に戻ることにする。


戻ってる最中最中夜桜は何か考え事をしている。


教室に戻りそそくさと席に着く。


「ねぇ月城君。さっきの生徒会長さんって私と同じようにどこからか転校してきたの?」


「千宮司先輩が?そういう話は聞いたことないな」


俺が入学する前のことは知らないが、千宮司先輩が転校生だったなんて話はきいたことない。


「そう」


するとまた夜桜は何かを考え込んでいるようで、それ以上会話は続かなかった。

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