光となった転校生

いきなり夜桜がまぶしい笑顔で挨拶をしてきたためどう返せばいいか分からなくなっている。


「お、おはよう夜桜」


「おはよう衣珠季ちゃん」


そんな俺とは裏腹に平然と挨拶を返す響。

やっぱりコミュ力のレベルが俺とはけた違いだ。


「あ、響ちゃんもおはよう」


あれ?響の呼び名は”桐生さん”じゃなかったっけ?


「二人はいつもこんなに早く登校するの?」


「い、いや、今日はたまたまだよ」


「そうか。あ、じゃちょっと私に学校案内してくれない?」


「え?」


「私まだ転校してから一日しか経ってないからさ、まだ全然この学校の構造とか知らないんだよねぇ」


「はぁ」


その割には一人でこの教室までこれたじゃないか。


「いいよ、衣珠季ちゃん、案内してあげる。都斗君もいいでしょ」


「あ、ああ」


流石生徒会だ。

突然案内しろなんて言われても対応できるなんて。


「そうと決まれば早速行こう!」


それから俺たちは四階を中心に至るところを回った。


ちなみにこの学校は五階まである。


「そろそろホームルームの時間だね」


スマホの時間を見ると確かにそんな時間だ。


「そうか。もうそんな時間なんだ」


夜桜が少し残念そうにつぶやく。


「ま、まぁ学校案内なんてこれからの生活で覚えて行けばいいんだからそんなに焦らなくてもいいんじゃないか」


「それもそうだね、じゃ教室戻ろうか」


三人で教室まで向かう。


それにしても本当に夜桜は昨日とは別人みたいな性格になっている。


それに反比例するように響がいつもより少し冷たくなっている気がする。


「響?なんかお前今日変だぞ」


と言っても


「え?そうかな?いつもと変わらないと思うけど」


とか言ってはぐらかされてしまう。


今日室に入ると、またもや男子から嫉妬のこもった視線を送られるが


「みんなおはよう!」


夜桜の明るさに全員目を奪われていた。


そりゃそうだろう。

昨日転校してきたばかりで少し暗かった美少女が一日でこんなに明るくなるなんて誰に予想できようか。


「ほら、月城君早く席に座ろう」


大胆にも俺の手を掴み席に向かう夜桜。


「ちょ、そんなことしたら...」


男子たちの方を向くと今度は殺意のこもった目を向けられた。


ホームルーム開始のチャイムが鳴り先生が入ってくる。


いつもホームルームの初めは出席をとる。

先生が一人一人の名前を呼んでいく。


「夜桜」


「はい」


元気よく挨拶する夜桜。


先生も夜桜の変わりようにびっくりして二秒ぐらい固まった。


ホームルームが終わり先生が出て行く。


それと同時にクラス中が夜桜の席に集まってくる。


どうやらまた質問攻めにされているそうだが、昨日と違い愛嬌あふれる答え方をしている。


「しっかしまさかここまで性格が変わるとはな」


「うん、そうだね」


「本当にここまで変わると別人みたいだよな」


「うん、そうだね」


「......」


やっぱり響の様子がおかしい。


今日はちょっと不機嫌なのか?

でもその原因が分からない。


生徒会のストレスとかか?

でも今日は朝活動がなかったからその可能性は低い気がするが。


一時間目が始まる。

今日は昨日と同じように英語だ。


そういえば夜桜はもう教科書を買ったのか?と思い横を見ると、もうすでに持っていた。

いつ買ったのかは分からないが、もう俺が教科書を見せる必要はなさそうだ。


今日の授業内容はテスト期間が近いということでひたすら演習問題を解くというものだ。


「......」


やべぇ。全然わからん。


響いわくこの学校の変札は平均より少し下ぐらいだそうだが、いっちょ前にテスト範囲は広く出してくるし、内容も深い。


こうなったらいつも通り響に頼るしかないか。


そう思い響の方を向こうとすると


「月城君、もしかして分からない問題とかある?」


夜桜が小声で話しかけてきた。


「ああ、たくさんある、ていうかほとんど分からない」


「そうか、じゃ教えてあげるね」


昨日とは逆で、今度は夜桜が俺の机にくっついてきた。


「えーっと、ここはねぇ」


夜桜の教え方は思った以上に分かりやすかった。

流石正徳高校出身なだけあるな。


夜桜に教えられながら一時間目は終わった。


だが俺は気づかなかった。


授業中響がずっと俺たちのことを凝視していたのを。

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