女親友と登校

「...ん」


スマホのアラーム音で目覚める。


いつもよりは目覚めがよかった。


起きるとまず一階の洗面所に向かい顔を洗う。


顔を洗っていると母から


「もう響ちゃん来てるわよ」


と言われた。


俺と響は毎朝一緒に登校している。


「これは急がないとだめだな」


自室に戻った俺は急いで制服に着替え背宅をする。


朝起きてから行ってきますと言って玄関に出るまで10分もかからなかった。


ドアを開けると響がもうスタンバイしていた。


「おはよう都斗君」


「おはよう響」


響と一緒に登校するのもなんか久しぶりな気がする。


というのも生徒会活動は朝も挨拶運動を行うことが多く、通常よりも早く登校しなくてはならない。


「珍しいな、千宮司せんぐうじ先輩が休みをくれるなんて」


「うん、私も不思議だったんだけど、多分テスト期間が近いからかな?」


千宮司せんぐうじ先輩は常に学年一位をキープしているため、テスト期間中は自分の勉強に精一杯なのだろう。


「それでさ都斗君。衣珠季ちゃんとだいぶ仲良くなったって言ってたけど具体的にはどれぐらいの関係になったの?」


「え?」


変だな。響がこんな言い方をしてくるなんて。


「まぁ普通に雑談をかわせるぐらいの関係だよ」


「あ、そうなの。よかった」


凄いホットした顔してるな。


「そういえば夜桜めっちゃ明るくなって雰囲気が完全な陽キャになったんだよ」


「へぇ~。衣珠季ちゃんを一日で変えるなんてやっぱり都斗君のコミュ力は高いんだね」


「?」


響が嬉しそうに喋ってるのは分かるが、それと同時にちょっと寂しそうなオーラを出してるのは気のせいか」


「......」


何故か響が無言になってしまったので話題を変えることにした。


「そ、それにしてもさ、千宮司せんぐうじ先輩ひどいよな。響に雑用とか押し付けてくるしさ。もういっそのこと今度のテストの学年順位最下位とかになればいいのにな」


「...私が何だって」


「!?」


突然後ろから絶対零度を放つような声が聞こえてきた。


恐る恐る後ろを振り返ると


「おはよう君たち。さっきは随分私の話題で盛り上がっていたじゃないか」


そこには一部の男子から王子様系女子と言われている千宮司央花せんぐうじおうか先輩が立っていた。


「どうした月城君、さっきの話の続きをしたまえよ」


...これは何を話していたか完全にバレているな。


顔は笑っているが目が全く笑っていないのが何よりの証拠だ。


「え、えーと」


俺が何か言い訳をしようとする前に


「おはようございます千宮司先輩。私たち急いでいるんで話はまた後にしてもらいますか?」


響が不機嫌さをあらわにして言い放った。


「...へぇ~。桐生君がそこまで言うのはちょっと驚いたよ。どうしたんだい?今日は随分ご機嫌斜めみたいだけど」


「...別に何でもありません」


俺から見ても不機嫌なのが伝わるんだが。


「ほら行こう都斗君」


そう言って俺の手を掴むといつもより早いペースで先に進もうとする。


「そ、それじゃ千宮司先輩、また今度」


「はぁ~。まぁ今日のところは桐生君の圧に免じて見逃してあげるよ。ただ月城君、人の陰口を言うときはもう少し声の音量を下げた方がいいぞ」


的確なアドバイスをもらって、俺たちは千宮司先輩から離れて行った。


「ひ、響?もう先輩見えなくなったから手を放してくれてもいいんじゃないかな?」


「あ、そうだったね」


放された手を見ると手首が赤くなっていた。


「それにしても響、今日は本当にどうしたんだ?なんでそんなに不機嫌なんだ?」


「え?そ、そんなに不機嫌だったかな...」


あれ?今はもう機嫌が戻ってるな。


もしかしてテスト勉強による突発的なストレスとかかな?


「そ、それよりもちょっと早く着きすぎちゃったね」


「確かにな」


響がやけに早いペースで歩いたため学校につくのがいつもよりだいぶ早くなってしまった。


「多分まだ教室誰もいないよね」


「日直でもこんな早く来ないからな」


だがついて着いてしまったものは仕方ないので、教室まで向かうことにする。


「あれ?明かりついてるぞ」


おかしいな。

この時間はまだ日直当番も登校してないはずだが。


教室に入るとそこには


「あ、月城君。待ってたよ!」


輝かしい笑みを浮かべている夜桜がいた。

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