転校生と下校

「じゃこれで帰りのホームルームを終了する。みんなあまり寄り道しないように」


やっと一日が終わった。


なんか今日は八時間目まであったんじゃないかと思わせるほど長く感じた。


「よし、響、帰るか」


「ごめん都斗君、今日生徒会活動があるんだ」


響は生徒会に所属している。

あのコミュ力の高さはこういうところで鍛えてるのかもしれない。

勉強もできるし生徒会にも所属してるし、本当に響は模範的な優等生徒だ。


「まぁもうすぐ夏休みだしなぁー。夏休みの活動に向けての準備でもしてるのか?」


「そうだね。ほら、夏休みにこの学校で祭りが行われるでしょ。その準備とかしなくちゃいけないからね」


この学校ば毎年八月の下旬ぐらいに校舎で夏祭りが開催される。

流石私立といった感じだ。

...俺は行くか分からないが。響に誘われたら行くかも。


「じゃあもう私行ってくるね。それじゃまた明日ね都斗君」


「おう、また明日な」


そう言うと少し駆け足で響が生徒会室に向かった。


「じゃ今日は一人で帰りますか」


響が生徒会で忙しいときは大体一人だが。


「ん?」


帰ろうとしているところにちょうど荷物をまとめて一人で帰ろうとしている夜桜が目に入った。

せっかく昼飯も一緒に学食で食べたんだしここは勇気をもって帰るの誘うか。


「夜桜、今から帰るのか」


「うん、一応その予定」


「じゃ一緒に帰ろうか」


「いいけど、私は電車通学だよ?月城君は自転車通学?」


「いや、俺も電車通学だよ」


「最寄りは?」


岡千おかせん駅だけど」


「私はその二駅先の東南とうなん駅だからそこまでは一緒に帰れるね」


なんか会話が凄い冷静だな。


とりあえず学校の最寄りの席まで一緒に歩く。


「...ねぇ、さっきは月城君と響さんは付き合っていないって言ったけどほんと?」


一緒に歩いていたら突然またそんなことを聞いてきた。

そんなに気になることか?


「ああ、本当に響とは付き合っているとかそんな関係じゃないよ。異性の親友っていう感じかな?」


これは紛れもなく俺の本音だ。


確かに中学のころから一緒にいて、響のことは凄く可愛いと思っているけどそういう恋人関係になりたいとかいう願望は持っていない。

それはおそらく響も同じだろう。


「よかった。あなたたちは違うんだね」


「?」


また安心した顔で妙なことを呟く夜桜。


「なぁ夜桜、ずっと俺と響の関係性を気にしてるようだけど、逆にお前は異性の友達とかはいないのか?」


そう俺が訊くと何か思いつめたような顔になった。


...なんか訊いちゃいけないこと言っちゃったかな。


「......」


しばらく無言のまま歩く夜桜。


なんかだんだん歩くペースが速くなっている気がする。


「......」


俺もなんだか無性に気まずくなったので沈黙したまま夜桜の後を追う形になった。


しばらくそうして歩いているとふいに夜桜が口を開いた。


「私も...」


「ん?」


「私も親友と呼べる異性の幼馴染がいたよ」


なんか涙声になってないか?


「いや、違うかな。私たちの場合は親友じゃなくて恋人関係だったって言った方がいいのかな?」


まぁ夜桜ほどの美顔の持ち主だったら彼氏の一人や二人いて不思議ではないが。


「でも、その関係はすぐに崩壊したけどね」


「......」


俺の勘だがこの話はここでするようなもんじゃないな。


「夜桜、とりあえず駅まで行こう」


「...うん」


そこからは俺も早足で駅まで行った。


電車に乗るとこの時間なのに意外と空いてるのは幸運だと思う。


普段は絶対開いていない席に座りさっきの話の続きを訊こうとする。


「ねぇ月城君。今日これから時間ある?」


「え?とくには予定ないけど」


「それなら私の家に来てくれない?」


「え?//」


まさか転校美女の家に初日に招かれるとは!


これは逃してはならないな。


「ああ分かったよ」


「ごめんね、いきなりこんなこと言って」


口調からするにさっきの話の続きをするみたいだ。

おそらくシリアスの雰囲気になるだろう。


まぁそれでも美女の家に呼ばれたって事実は変わらないがな。


俺は少しドキドキしながら夜桜の家の最寄り駅の東南駅に着くのを待った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る