第16話 死体と2人きり

2時間コースなのに、15分で終わってしまった。

こう言うと、風俗での早漏エピソードみたいだけど、殺し合いの話である。


黒いだけの空間で、死体と2人きり。

……あと1時間45分この状態かぁ。


暇なので、死体から使えそうなものを物色する。

まるで『羅生門』のババァだけど、ここには空気の読めない下人はこれない。


時間もたっぷりあるので、ゆっくり服を脱がす。

中世ヨーロッパの貴族が好んで着ているイメージの高級ということ以外は褒めることところが無いダサい服は、質屋に出してみよう。着るわけないし。


こいつは、おしゃあにこだわりがありそうなものだが、こんなもんを着ていて恥ずかしくなかったのだろうか?

着るしかない雰囲気に押しつぶされたとしたら、少し可哀想だな。


そう言う俺の服装はどうなんだというと、上下グレーのジャージに似た動きやすい安物だ。

初めてこの世界にきて買った服なので、思い入れがあり、同じものを10着持っている。

服ってのは、着やすいのが1番だ。


さて、パンツまで脱がせたが、何かを隠し持っていたわけでもないみたいだから、その高級ダサ服を調べる。

謎にポケットがたくさんついていて、面倒だったが、今は時間だけはあるから、大してストレスを感じずに作業を進める。


「‥‥‥なんで宝石持ち歩いてんだ?」


そこそこの重さの綺麗な石が出てきた。これをポケットに入れるのに、何の意味が……?

持っているだけで防御力が上がるみたいなやつかな?後でローファさんに聞いてみよう。

できれば、回復アイテムとかが良いをだけどなぁ。

しかし、出てくるのは綺麗な石やら指輪ばかりで、実用性がありそうなものはなかった。

最後のポケットを探っても、やはり宝石だった。


「またか」


多少ウンザリしていた。死体漁りしているくせに申し訳ないけど。

しかし、今までの宝石は赤や青、緑と明るい色だったのに、最後の石は、真っ黒だった。

丁度この部屋と同じタイプの漆黒。


「‥‥‥」


墨野裕也の興味ないランキング6位の宝石。

その宝石に目を奪われている自分が恥ずかしい。ローファさんなは絶対に知られたくない。

俺はそっとジャージもどきのポケットに黒い石を入れた。

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