第14話 異物
裸の付き合い。
銭湯で友情を深めることをそう表現するが、俺にはできない。
服という鎧を脱いで、衆目に晒すことに躊躇いがあるのだ。
基本的に他人を信用していないので、もし、最も無防備な状態になることに抵抗がある。
あまりに徹底して肌を見せない俺に、周りは見せられない身体なのかと勘繰っていたけれど、別に普通だ。‥‥‥たぶん。
他の男の裸を見たことが20年くらい無いので、自信を持って断言はできないが、今まで不都合は無かったから、普通なのだと思う。
その延長線で、他人に触れることも触れらることも、大の苦手だ。
異物に触れている感覚で、満員電車は俺の大敵だった。
この面倒な性質のせいで、人付き合いにも影響が出た。
どれだけ付き合いが深くても、警戒心を薄められない俺からは、人が離れていく。
最も困ったのが、性欲は人並みにあるのに、女性に触れることもできないことだった。
カナよりも前に、俺なんかに好意を抱いてくれる女性がいたが、どうしても無理だった。
俺は一生、性の喜びを知らないまま死ぬのだなぁと思っていたある日の新宿歌舞伎町で、キャッチのお兄さんにホイホイついていった。
当時、仕事が上手くいっていなかったことが加わって、ヤケになっていたのだと思う。
あれは確実にぼったくりだった。
信じられない金額を払い、嬢と向き合った。
結果。
最後まですることができた。
高いお金を払ったことで、要らない警戒心が解けたのだと自己分析している。
冗談でも何でもなく、風俗業界は恩人だ。
こんな俺にも、みんながしていることができると教えてくれた、返しきれない恩がある。
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この2年後、カナと暮らすことになったが、やはりできなかった。
しかし、ローファさんに言ったように、しっかり「ちょっくら、風俗に行ってきます!」と報告していたから、トラブルは起きなかった。
だからな、勇者よ。
<性的な行為は愛する人とするべき>ってのができない奴もいるんだよ。
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