第13話 校長先生病
「穢らわしい職業から足を洗って、城で働きなさい」
勇者殺害計画を進めているある日、お世話になったあのお店を通りかかったら、そんな世迷言が聞こえた。
「君達は、楽をして金を稼ごうとしすぎだ。俺のように、汗水垂らして良い生活を手に入れよう」
女性達は皆、死んだ顔をしているのに勇者は気付かずに気持ちよく同じような内容の演説を続けている。
俺はこういう人のことを、「校長先生病」と読んでいる。
どこの学校でも、朝礼などの校長先生の話は長くてつまらないだろう。
校長になる試験みたいなので、「いかにつまらない話を長くできるか」という項目があると勘繰ってしまうくらいつまらない。
そうでなくては説明が難しいくらい、あの人達は空気が読めない。
よく、あれだけスベっているのに同じことを繰り返せるものだと感心する。
思うに、「自分の話を聞いて当たり前」と考えているのではないか。
こっちは、忙しくても根気強く聞いてくれている部下ではないのだよと教えてあげたい。
この勇者の年齢は、俺と同い年だから25歳。
まだ若いのに、「校長先生病」に罹ってしまうとは可哀想に‥‥‥。
この患者の話を聞いているとストレスが溜まる一方なので、さっさと通り過ぎることにする。
どうせ数日後には殺すから、別に今どうこうしなくて良い。
通り過ぎる瞬間、聞くに耐えない話を聞いている女性の中に、あのお店のミヤさんがいるのに気がついた。
たった一度、相手しただけの客のことなんか、あっちは覚えていないだろう。
そう思ったが、ミヤさんが軽く手を振った。
俺の後ろに誰かいるのか確認してみたが、胸糞悪い儀式をわざわざ見にくる人間はいなかった。
視線を戻すと、ミヤさんは勇者校長先生に向き直っている。
気のせいの可能性の方が高い。でも、俺がグッときた。
モチベーションを高めるのに、これ以上の理由は要らなかった。
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そこそこの都会にも、人気の少ない謎スペースは必ず存在する。
俺のようなクズが人を秘密裏に消そうとするためにあるような、打ってつけの場所を教えてくれたのは、ローファさんが紹介してくれた貴族だった。
裏切る覚悟をするほどに、性の恨みは深い。
「こんなに簡単に裏切りをさせられるんだなぁ」
ローファさんが男が帰った後、そうぼやいていた。
「そりゃ、そうですよ。風俗の女性としかできない奴もいるんですから」
「いるかよ、そんな気持ち悪い奴」
「ここにいますよ」
ほんの少し、気まずそうな顔をさせてしまった。
俺はと言えば、ローファさんには不思議と何でも言えることに、自分で驚いていた。
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