第11話 勇者(笑)
「性的な行為は愛する人とだけするべきだ。一時の劣情を解放するために金でするなんて、客も店も狂ってる」
勇者様のお言葉だ。
一年前、貴族が魔王を倒す為に伝説な剣を使える勇者を召喚する儀式をしたらイケメンが出てきたらしい。
顔が良い。剣と魔法の才能もある。
瞬く間に権力を握り、豪華なお屋敷で暮らしながら美少女達と魔王軍と戦う毎日を送っているらしい。
まあ、別にそれはどうでもいい。
問題は、風俗を無くすとかいう性犯罪が増加することが分かりきっていることが公的に認められそうになっていることだ。
この世界のことを1%も理解できていないが、風俗業界は、俺が元いた世界とあまり変わらないように思える。
お店によるだろうが、性病対策をしているところがほとんどだし、もう人生を諦めていた人が風俗で生きる気力をもらうことだってある。
その風俗がまるごと無くなったら、俺のような恋愛弱者の中で、女性を狙った犯罪をする輩が必ず出てくる。
勇者とやらは、それが分からないのか?
「分かってないと思うぞ」
俺がぷりぷり怒っていたら、ローファさんが助言をくれた。
「あれはなぁ。性善説を唱えているようで、生まれながらの差別主義者だな。今までもあれの政策で職を失った奴はいるよ」
人を「あれ」と表現しているところを見ると、ローファさんの中の勇者の評価は高くはないようだ。
異世界初風俗から3日。
ローファさんの予定の一つであった買い物も終わり、よく分からないものを運んで森の中の家に帰ってきていた。
その戦利品の中にラジオっぽいものもあった。
ずいぶんデカく、スマホでラジオを聴いていた俺からしたら逆にテンションが上がり、聞かせてもらうことにした。
そこで流れてきたニュースが、冒頭の馬鹿げた革命(笑)だ。
「ほれ、これがその勇者だよ」
新聞を渡されて件の記事に勇者の写真が写っていた。
「‥‥‥お?」
知った顔だった。
異世界で知った顔を見た。
他人の空似にしてみたらクオリティが高すぎる。
整った顔で碇ゲンドウスタイルで写っていたそいつは、俺の中学時代の同級生だった。
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