第10話 楽しかった!
「ご機嫌だな」
ローファさんは呆れ顔で言う。
そう。今の俺は機嫌がいい。
蛙の肉とかいう、俺のような都会っ子には敬遠して然るべき食べ物に食らいつく。
今なら、何でも許せる気がする。
「メチャクチャ可愛くて、スタイル良くて、良い人でした」
\
異世界とは言っても風俗のシステムは似たようなもので、高そうなスーツを着た男に嬢の写真を見せられて、ミヤさんという1番お姉さんっぽい嬢を選んだ。
待っている間、俺と同じく劣情を発散させにきた他の客を見ないように心がけた。
お店の外だったら良いが、これからサービスを受ける時に話しかけるのは御法度だ。
「お待たせいたしました。3番の部屋にお入り下さい」
おそらく1時間は待ったが、文句などあるはずもなく、早歩きで部屋に向かう。
扉を開けて、現れたのは30前半くらいのお姉さんだった。
\
(※プレイ内容を書いてしまうと18禁になってしまうので、泣く泣く端折ります)
特筆すべきは、与えられた時間より早く果ててしまったので、10分くらいお話をした場面だ。
いわゆる、ピロートークというやつ。
これが雑なのは、男女ともに俺は許さない。
金の関係とはいえ、人間同士なのだ。コミュニケーションを怠るとは何事か!
刮目せよ!これがピロートークだ!
「お疲れ様でした」
「いや、お疲れなのはミヤさんでしょう」
「でも、スミノさんも私なんかに気を遣っていただいて‥‥‥あれってアドリブですか?」
「俺の場合は全部アドリブです」
「凄いですね!私も見習わないと……あ、葉茶飲みます?」
「ハチャ?」
「はい。疲労がとれますよ」
「じゃあ‥‥‥頂きます」
「どうぞー」
「美味しいです」
「良かった!」
「はは。あ、ミヤさん。お時間過ぎてますよ」
「本当だ!楽しくて気づかなかったです。‥‥‥また、ご指名して下さいね」
「はい。必ず」
\
どうだ!
会話としても心地いいし、次回の約束も取り付ける完璧なピロートークだ!
「良かったな」
「ごめんなさい。言葉が汚かったです」
「面白かったからいいよ」
回想の途中で声に出ていたのは気づいていたが、ローファさんが止めないので続けてしまった。
「楽しそうで何よりだ」
「うん!楽しかった!」
メチャクチャタメ口になったけど、気づかないフリをした。
\
情報が大切だと抜かしておいて恥ずかしいが、浮かれていた俺は、この時点では気づかなかった。
勇者とかいういけ好かない奴が、風俗という概念を消滅させようとしていることを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます