第9話 性欲を恥ずかしいとは思いません
一大決心をした後に大変申し訳ないが、性欲が溜まってきた。
多めにみて下さい。人間だもの。
しかし、ローファさんという女性がいる手前、自分を慰めることは難しい。そもそも、オカズがない。
「何してんだ、早くこい」
俺の繊細な男心など知る由もないローファさんは、身支度を急かす。
「はいはい」
異世界転生してから、ずっとこの森にいた俺だが、やっと外の世界に出る。
社会勉強ということで、ローファさんの用事に着いていくことが許された。
近くの街にはローファさんが頻繁に魔物の死骸を換金しに行っていたから、道中の心配はない。
歩いていれば少しは気が紛れるか。
聞こえないようにため息を吐いて、小走りでローファさんの元へ向かう。
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森の魔物達に相変わらずちょっかいをかけられながら歩くこと2時間、人工的な光がある街に辿り着いた。
前世の世界と同じように、電気やガス的なものはあるようだ。
久しぶりの文明に目を奪われていると、ローファさんが先のことを言った。
「個人的に会っておきたい奴がいる。お前は少し遊んでこい」
「おぉぉ‥‥‥!」
喜びすぎている俺に興味を持ったのか、ローファさんから珍しく質問される。
「どこか行きたいところがあったのか?」
「風俗です!」
「お、おー‥‥‥恥じることもなく‥‥‥スゲーなお前‥‥‥」
俯きながら感想を述べるローファさんに、大事なことを告げる。
「俺は性欲を恥ずかしいとは思いません」
ここまで自信を持って意見を言ったのは初めてかもしれない。
「た、確かに。すまん、頑張ってな」
「はい!」
こんなに純粋なエールをもらって半端な店に行くわけには行かない。
ちゃんとしたところを選ばなければ。
ローファさんと別れて、情報を集める為に酒場に向かった。
\
「値段とサービスがちゃんと比例しているのは、<大蛇の尻尾>だな」
酒は弱い方だが、酔っ払いは好きだ。ベラベラ情報を喋ってくれる。
この世界の酒は、ただ苦いだけの炭酸の癖に度数はとんでもない。
ローファさんの葉巻もどきといい、嗜好品はやりすぎな味にするきらいがある。
そんな強すぎる酒を命懸けで飲んだ甲斐あって、見るからにエロそうなオッサンから店の場所と必要な金額を教えてもらった。
大丈夫。あれだけエロそうな顔してたんだ。店の見聞きは確かなはずだ。
何より、友達の名前が入っているのが良い。
ワクワクしながら移動する。
スキップしたくなる気持ちを抑えて、周りに急いでいると思われないギリギリの早歩きを意識する。
永遠と思われた道のりを乗り越えて、辿り着いたのは、そういったお店には見えない無機質な建物だった。
多少の不安は感じたが、ビビっていたら楽しめない。
俺は、堂々とした足取りで入店した。
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