第6話 勝手にやってろ

「死ぬギリギリに、私がヒールしてやる」


ローファさんの考えた作戦はシンプルだが、これ以上なく俺に向いた戦い方だった。


「お前の痛みへの鈍感さは常軌を逸してる。初めてお前を見かけた時、余裕で内臓が見えてたくらいだ」


これが冗談なのか事実なのか分からないくらい、殺し合い中の俺は気持ちが悪い。故に、ヒールで死のみを避けて、半永久的に戦い続けるこの作戦は俺に向いていた。


「ところで、なんで死ぬギリギリなんですか?」

「その方が面白いから」

\



「‥‥‥」


大蛇に感情があるのか分からないが、ウンザリしているように見える。

もう、付き合いきれないと。


ローファさんに至っては寝ている。

ヒールをかける役割だから、俺達とそこまで距離が離れているわけでもないから危険なのだが、3日も付き合わせているから、起こしたらブチ切れるかもしれない。


面白がってないじゃないか。


大蛇は、諦めたように目を瞑る。


<もう分かったよ。お前の勝ちだよ>

そんな幻聴が聞こえた。


<殺せ>

良いのか?

そんな投げやりで。

自分よりずっと弱い人間に殺される最後で良いのか?


<みんなお前ほど、生きることに執着してないんだよ>

俺がか?


<そうだ。お前は弱いくせに生きる力が強すぎる」

……いやいや、俺はいつ死んでも良いと思ってるんだが?


<懇切丁寧に説明するのも面倒くさい。あそこでスヤスヤ寝てる女が起きたら聞いてみろ。3日もお前に付き合ったんだ。色々思うことがあるだろう>

そうか。3日も付き合ってくれたのか。


俺なんかに。


<もう私は疲れた。後は人間同士で勝手にやってろ>

「ふむ」

と、俺はローファさんの相槌を真似してみた。


「了解、楽しかったよ。蛇」

<私は楽しくなかった>


友達と遊んでいたら、楽しいのは自分だけだったと知った時と同じような寂しさを感じながら、最初から狙っていた眼球に短剣を刺した。


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