#5 アリバイのありか
ブラック刑事立ち会いのもと、アッシュたちは現場検証を終える。
アフローには自分の尿の始末をさせた。
一方アッシュたちはタイツの遺体に手を合わせて黙祷したのち教会の外へと運び出した。
それからブラック刑事は礼拝堂に全員集合させる。
「天にまします我らの父よ、迷える魂をどうか導きたまえ。永遠の安息をかれらに与え、不滅の光でかれらを照らしたまえ。かれらが安らかに
ピエロ神父の弔いの言葉を一同は唱和した。
礼拝堂に集う顔色はみな一様に暗い。
当然だ。
昨日に比べて4人分が空白なのだ。
模型くんは辺りを周回しながら全員に温かい微笑みと紅茶を配っていった。
アッシュは疑問に思う。
模型くんはどういう気持ちなんだろう。
魔女のことは心配じゃないのか。
そもそも模型くんはどういった仕組みで動いているんだ?
魔女の魔法の類いで生命を得ているのだとすれば魔女はやはりまだ生きているのか。
「大変なことになってきたようだ」
ブラック刑事だけ特別にブラックコーヒーを飲みながら言う。
「死者3名に行方不明者が1名か……。ともあれ、お絵描きのと面を合せなくて済んで俺はせいせいするわけだが……」
模型くんはブラック刑事をキッと睨んでから、刑事のコーヒーにピッチャーのミルクをドバドバと投入する。
「てめ、こら、模型野郎! なにしやがる!」
カップ内の白と黒がとぐろを巻き渾然一体に調和すると、柔らかいカフェオレになった。
「あーあ。これじゃあコーヒーとは呼べねえ代物になっちまったじゃねえかよ!」
ブラック刑事は青筋を立てて激怒した。
不満げに「おぼえとけよ、模型」と言って、カフェオレを一気に呷る。
「じゃあ今からアリバイ調査を始める。一応これが俺の仕事なんでね」
「でも、ブラック刑事。アリバイもなにも……みんな部屋に籠もって寝ていただけだと思う」
アッシュはもの申した。
「昨晩、僕とコスモナウトとナースちゃんは一緒の部屋で寝ていたから、お互いのアリバイはある程度補償できるかもしれないけど……」
き「な、ななな、なんだってだぜえ!」
突然アフローは震え出す。
「オレが
「美女2人って……ナースちゃんはまだ子供じゃんか」
「そんなの関係ないぜ!」
アフローのその言葉にナースは「ふん」と、こまっしゃくれている。
「ロリコンはアフローのほうだったんすか……」
そんなアフローにデニムは白い目を向けた。
「ロリコンは病気です。今すぐ治療しましょう」
「今のは明らかにイエローカードだ。ガチでしょっぴくぞ」
コスモナウトは冷静に提言して、ブラック刑事は主審のような眼差しで警告する。
「オレは無実の罪で十字架に処されそうなんだぜぇ……オー・マイ・ゴッド」
アフローは夜明け前のひまわりのようにうな垂れた。
ブラック刑事は切り替えて。
「つーことは、ミイラ男とコスモナウトとナース以外は特にアリバイはないって事だな」
「ミイラ男はやめてほしいけど……その通りだ」
アッシュは苦々しく同意する。
「奇しくも礼拝堂の鍵はアフローが一晩じゅう見張ってくれていた。だから誰も奪取することはできなかったはずだ」
「犯行は誰にも不可能……密室殺人か」
ブラック刑事は黒くたくましい腕を組む。
「まあひとまず2日目の事件は後回しだ。今から昨日起こった鏡の焼死事件をこの場にいる全員で実演してもらうぞ。反論は認めん」
アッシュたち一同は息をそろえて頷く。
その中にひとりだけ不平不満を漏らす黄色い爆発頭。
「また、オレだけロープに縛られるのかだぜぇ……」
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