タンコロリン

夕日ゆうや

柿の木

 かしこみ、かしこみ。

 今はもうないけど、昔あった話。

 先祖代々から受けついた柿の木。

 秋には大きな実をつけて、そして

 かしこみかしこみ。

 巫女のいるこの柿の木は人を生み出す。

 妖怪の子だ。

 人に意地悪をし、周りを驚かせる柿の木の妖怪。

 人間に近しいその存在は、人を驚かせる。

 舐めると甘いと言うが、そんなことを確かめる勇気もない。

 私はここで一人、巫女をやっている。

 他に家族もない。友と呼べる存在も。もちろん恋人も。

 かしこみ、かしこみ。

 毎日の日課は欠かせない。

 掃除、炊事、洗濯。

 お賽銭と売店の利益だけで回っている小さな家。

 でも柿の木がある。

 タンコロリン、タンコロリン。

 たまに生まれる妖怪の子。

 私の子。

 半妖半人の私の可愛い子。

 でも失敗作。

 だってみんな逃げていくから。

 タンコロリン、タンコロリン。

 私の可愛い家族はみんな逃げていく。

 死ぬと分かっていても逃げていく。

 今日も私は一人だ。

 タンコロリン、タンコロリン。

 巫女の私が正しいに決まっている。

 みんながバカなのだ。

 私を一人にして。

 タンコロリン、タンコロリン。

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タンコロリン 夕日ゆうや @PT03wing

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