賢淵の化け蜘蛛

夕日ゆうや

化け蜘蛛

 宮城県仙台市のとある場所で釣りをしていると、弱い陽光が照らし出す。

「ああ。今日もボウズだったな」

 ふと見ると小さな蜘蛛くもが糸を垂らしていた。

 最初は気にもとめなかったその蜘蛛。

 何度も何度も目にしていると妙な気分になる。

 同時に恐怖を感じてきた。

 このままそばにあるやなぎの木と蜘蛛の糸が釣り具にからんでいる。

 押し返す力が強くなっていき、やがて釣り具ごと、柳の木に固定される。

 俺は慌てて立ち去ろうとするが、足までもが糸にからんできた。

「くそ。外れろ。くそ!」

 慌てふためくが、今更遅い。

 俺は顔を真っ青にしてその蜘蛛の糸と一緒に川へ、大きな川のふちへ落ちていく。

「賢いやつめ。賢いから、こうして人間を貶めたのだな! 蜘蛛め。化け蜘蛛め!」

「そちらが油断しているのが、悪い。人間は滅ぶべきだ。地球を汚しておいて」

 賢い蜘蛛がいたものだ。

 それ以降、この淵を賢淵かしこぶちと呼ぶようになったそうな。

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賢淵の化け蜘蛛 夕日ゆうや @PT03wing

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