第20話

 今日は同い年の女の子達と集まっておままごと。

 俺としては訓練をしていたいのだが、ジャトやライザックに遊ぶのも子供の仕事だと口を揃えて言われてはどうしようもない。

 俺達の歳にもなってくると男女が混ざって遊ぶより、男子は男子同士、女子は女子同士で集まることの方が多くなるようで、心は男でも体は女の子な俺は腕を引かれて女子グループに強制連行である。

 正直お裁縫やおままごと、月一でくる商人から買った服やら装飾品の見せ合いっこなどをするより、男子連中の追いかけっこやチャンバラにまじっていた方が性に合ってるのだが.....


「やっぱりユウちゃんにはリボンの方が似合うよ〜」

「こっちの髪留めも似合うと思うけどな〜」

「ねぇねぇ、次はこっち着けてみてよ」

「それならこっちのと合わせるといいんじゃない?」


 ご覧の有様である。

 人を着せ替え人形か何かだと勘違いしているのではなかろうか?

 君らおままごとするんじゃなかったの?なんかよくわからん鳥の人形を持たされて、髪型を弄られたり、装飾品を取っ替え引っ替えされたり。

 これはいったいいつまで続くんだ?


「ねぇみんな、なんで私にばかりおしゃれさせるの?みんなも着ければいいのに」

「だってユウちゃん何着ても似合うんだもん」

「そうそう、それにユウちゃんあんまりおしゃれに興味ないでしょ?だから私達が代わりに目一杯可愛くするの」


 なぜそうなる?

 いったい彼女達の何がそうさせるのか、喋りながらも熱心に髪を結っている。

 小さくとも子供であろうともやはり女の子、おしゃれに余念がないらしい。

 内心溜息を吐きつつ彼女らが飽きるのを待っていると、女の子の1人が妙なことを言い出す。


「可愛くなった方がケイト君も喜ぶよ」

「えっと...どうしてそこでケイト君の名前が出てくるの?」

「え〜、だって2人ともよく一緒にいるでしょ?」

「聞いたよ、2人とも自警団に入ったんだってね?」

「しかもケイト君はユウちゃんの後から入ったんだって」

「それってそれって、ケイト君がユウちゃんを追いかけてってことだよね?」

「お嫁さんに傷が付いたら大変だもんね〜」

「「「ね〜」」」


 当事者である俺を差し置いて勝手に話が広がっていく。

 俺は何も口にしてないのにね〜?おかしいね〜?

 やはり女の子が1番盛り上がる話題と言ったら恋話、それは異世界であろうと変わりないようで、女の子達はあることないこと話を広げては楽しそうに談笑している。


「やっぱり〜、ユウのことは俺が守る!ってことなんじゃない!」

「ケイト君カッコいいー!」

「そして背中を預けて戦う中で深まる愛情!」

「2人の恋は燃え上がり!」

「永遠の絆で結ばれた夫婦になるの!」

「「「キャーー!!」」」


 キャーー、女の子の妄想力ってこわーい。

 どこからそんな知識を仕入れてくるのか、やたらとませていらっしゃる。

 そして彼女らの脳内では壮絶な戦いが繰り広げられ、共に生き抜いた俺とケイトが愛を誓い合って子宝に恵まれる所まで話が進んでる様子。

 「2人の子供ならきっと可愛くなるね」とか「かっこいい子になるね」とか、もう何を言おうと聞く耳を持ってもらえそうにない。

 どうにもこの子達は俺とケイトの仲を誤解している。

 俺は純粋に技術を学ぶために自警団見習いとなり、ケイトも父親と同じ道を歩もうとしているだけだ。

 確かに自警団見習いという前例を作ったことでケイトも自警団見習いとなったが、そこに恋愛だの運命だの甘酸っぱい要素は何もない。

 強いて言うなら汗と土に塗れた泥臭さくらいのものだ。

 その事実を懇切丁寧に説明したところ——


「ユウちゃん照れちゃって可愛い〜!」

「大丈夫、私達応援してるから!」

「お母さん言ってた、胃袋を掴めば男はてごめにできるって」


 ——などと返ってきた。

 君ら一旦頭の中見せてみ?きっと側頭葉辺りに問題あるから。

 いっそのこと侵食世界で記憶を書き換えてやろうか?などと考えを過ったが、さすがに人に使うと人体にどんな影響が出るからわからないのでやめた。


「はぁ....どうしてみんなそんなに私とケイト君をくっつけたがるかな?」

「だって今のうちから旦那様を見つけられたら将来安泰じゃない」

「ケイト君ならしっかりしてるし面倒見もいい、きっと子供ができてからも優しく面倒見てくれるよ」

「だから、私とケイト君はそういう関係じゃないって。それに今から旦那様とか子供とか早くない?」


 最年少組で1番背が小さい俺が目算130㎝だとして、1番大きくとも140〜150の間くらい。

 詳しい年齢は把握してないが身長からして10〜15才、この世界の大人の身長がやや高めなのを考えるとそれより低いかもしれない。にも関わらず夫婦だ子供だと気が早すぎるのではなかろうか?

 だがそう思っているのは俺だけらしく、他の子はそれが当たり前らしい。


「早いうちから男捕まえないと後々苦労するってお母さんよく言ってるよ?」

「そうそう、良さそうな男がいたらとりあえず唾つけとけって」


 ちょっと異世界の奥様方?いったい子供に何教えてるんですか?


「成人の儀が最後のチャンスだから最悪の場合その場でキセイジジツを作ればいいんだって」

「なにそれ?」

「さぁ〜?」


 キセイジジツ.........既成事実!?

 ちょっと異世界の奥様方!?いったい子供にナニ教えてるんですか!?

 少なくともこんな子供に教えていい言葉じゃないと思いますが!?


「ユウちゃん知ってる?」

「い、いやー、私も知らないなー」


 異世界の貞操感に辟易しつつしらを切る。

 よそ様の子供にそんなこと説明できるか!!

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