第18話
自警団見習いとして訓練を受けはじめて数日。
畑の仕事をこなしつつ村民の手伝いも合間に行い多忙を極めている今日この頃。
今日も今日とて自警団詰め所に向かうと、今世の家族と同じくらい見慣れた少年の姿があった。
「あれ?こんな所でどうしたのケイト君?」
「俺も自警団見習いにしてもらったから一緒に訓練を受けるんだよ」
「ケイト君も自警団見習いに?」
まさかケイトも自警団見習いになるとは思っていなかったため、驚き半分と喜びも半分ほど湧いてきた。
うん?なぜ喜んだのだろうか?
あれか?仲のいい友達がこれから一緒に訓練することになって嬉しい、みたいなやつだろうか?
まったくこれだからもとボッチは、ちょっとしたことで喜んじゃって、チョロインじゃないんだから。
それにしてもケイトが自警団見習いか〜、まぁでも、よく考えてみれば納得はできる。
ケイトは同年代の中でも頭一つ抜けて動きがよかった。
それもそのはず、ケイトの父親は自警団に入団しており、父親から手解きを受けていたからだ。
そのため同年代の中でも剣の扱いは上手な方で、体力もそこそこある。
そんなケイトなのだから父親と同じ道を進みたいと思い志願してもおかしくない。
おおかた俺が特例で自警団見習いになったことでそれに便乗したのだろう。
「おっ?なんだ2人共もう来てたのか。やる気満々だな」
「おはようライザック」
「おはようございます!」
「おう、おはようさん。今日は新人を交えての訓練だ、自己紹介は...必要ないな?」
「はい、ケイト君のことはよく知ってるから大丈夫」
この村では俺とケイトがよく一緒のいることは同年代の子供や最年長組はおろか、大人達にまで周知されている。
まぁ土地が広いとはいえ娯楽の少ない農村だ、誰が誰とよく遊んでるだの誰が誰を好いているだのはあっという間に広がってしまう。
それしか話すことがないからな。
「あの、ライザック」
「なんだ?」
「もしかしてケイト君も大人と同じ訓練をするんですか?」
「とりあえず今日のところはそうなる」
「大丈夫かな?」
「ユウも大人と同じ訓練やってるんだろ?なら俺も大人と同じでいい」
ケイトの言うとおり俺は大人と同じ訓練メニューで参加している。
訓練初日は子供には少しハードな訓練メニューをライザックが用意してくれていたのだが、俺が涼しい顔でこなしているのを見ると即座に大人と同じメニューに移行した。
だがこの体の高性能さはその程度で音を上げるほど柔ではなかった。
ランニングや筋トレ、素振りや打ち込み稽古など、一通り訓練を終えても軽く疲労感が出る程度で平然とこなしてしまえる。
他の大人達は肩で息をしていたり、地面に寝そべって滝のように汗をかいているというのにだ。
ちなみにライザックも同じメニューをこなしているが汗一つかいていない。
つまり同類である。
そういった意味でもケイトには荷が重いのではないかと心配なのだが、本人はやる気十分な様子。
子供がこれだけ意欲的に行動しているのだ、頭ごなしに否定するのはよろしくないな。
それに男が強くなるために頑張ろうとしているのだ、ここで止めるのは野暮ってもんだろう。
「そっか、なら一緒に頑張ろうケイト君!」
「ああ、置いていかれないよう頑張るよ」
こうして日々の訓練にケイトが加わることとなった。
「ケイトく〜ん、大丈夫〜?」
「も、もう.....無理....だ....」
案の定というか予想通りというか、ケイトは訓練の途中で力尽きてしまった。
「まぁ、ここまで頑張れたのは大したもんだ。ユウ、突いてないでケイトを背負ってやれ」
「は〜い」
汗で滑りそうなケイトを苦戦しながら背負い、自警団詰め所前にある広場に寝かせる。
そこにはランニングを終えて小休憩をしている正規の自警団員がおり、ダウン中のケイトを見て「やっぱりこうなったか」や「子供にしてはよく頑張った」などを口々に言っている。
そしてなぜか全員ほっとしたような表情を浮かべていた。
何故に?
「いや〜、これでケイトまで平然と訓練こなしてたら俺達大人の面目が立たねぇよな?」
「そうそう、俺達にも自警団としてのプライドがあるからな」
「とか言いつつ昨日ユウに模擬戦挑んで瞬殺された奴が何言ってんだか」
「う、うっせぇ!ならお前もやってみろよ!」
なるほど、俺に続いてケイトまで見習いになったことで子供に先を越されるのではないかと不安だったわけだ。
そんな感じで話が盛り上がりはじめた所にライザックの声が響く。
「ほう?お前ら余裕そうだな?いいだろう、この後の筋トレは倍にしてやる」
「う、嘘だろ....」
「そんなぁぁぁ!!」
「悪魔だ、悪魔がここにいる!」
「口ばっか動かしてねぇでさっさとやれ!少しは新人にいいとこ見せねぇか!」
哀れな男達はライザックに怒号を浴びせられながら、喋ることすらままならない状態まで絞られた。
ちなみに俺も参加したが余裕でした。
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