第12話
「—いっ!?んぅぅぅ!」
「痛いだろうけど我慢してね」
ジャトに服を捲られ白い軟膏のような物をお腹に塗られる。
訓練を終えた子供達は皆ふらつく足取りで帰って行き、俺もお腹へのダメージでふらつきながら帰ろうとすると、ケイトが自分もぼろぼろだというのに肩を貸して我が家まで送り届けてくれた。
あらやだ男前!うっかりときめいちゃうところだったわ!
まぁ冗談は置いといて、後でお礼を言っておかないければなるまい。
だが今は、お腹を触られるたびに走る激痛に悶え苦しむので精一杯だ。
もしや内臓が傷ついてたりしないだろうな?
「それにしてもこっ酷くやられたな」
「お帰りなさいガリルさん、ケイト君の様子はどうでしたか?」
「家に着いた途端眠っちまったよ。体力の限界だったみたいだ」
送り届けてくれたケイトも当然ながらフラフラで、それを見かねたガリルはケイトを送り届けてくれていた。
「女の子にこんな大きな痣を作るなんて、ちょっとやりすぎなんじゃない?」
「ライザックは見込みのある奴に対しては強めに痛めつけるんだよ。それがあいつなりの評価の仕方なんだ」
「知ってるわよぉ〜、それでもユウちゃんの柔肌に傷をつけられたのが許せないのぉ〜」
ジャトは子供のように頬を膨らませて不貞腐れている。
あの大男、ライザックって名前なのか。
どこぞのダイエットのCMが脳裏を過ったが、これ以上は考えないようにしよう。でないと顔を合わせるたびに黒い壁をバックにポーズをとったライザックがゆっくり回転していく姿を想像してしまう。
あっやべ、想像してしまった....
「ククッ—痛ッ!」
シュールな光景に笑ってしまったためお腹に激痛が走り、軽く地獄を味わってしまった。
おのれライザックめ、いつか仕返しに腹に痣作って笑わしの行くからな。
「ユウ!!」
突然、扉を壊さん勢いで駆け込んできたのは、汗だくのジルだった。
彼は俺が訓練に参加している間、俺の分の畑仕事も引き受けてくれていたため、いつもより帰るのが遅くなるはずだったのだが...
「ジル、畑仕事は終わったのか?」
「ううん、ユウの様子が気になったから一区切りつけて戻ってきた、続きは後でやるよ。それより今はユウ方だ、大丈夫?結構酷い怪我だって他の子が言ってたけど」
ジルは鬼気迫る表情で肩を掴み安否を確認をしてくる。
勢い余って顔が触れてしまうのではないかというくらい迫ってくるジルに戸惑いながらも、ジルの顔を押し退けて応える。
「だ、大丈夫です。動いたり笑ったりすると痛みますが、安静にしていれば—」
「そうか、よかった。して欲しいことがあったら言ってね、僕が手を貸すから。それと怪我が治るまでは僕がユウの分の仕事をやるからちゃんと休んでおくように、いいね?」
「は、はい....ありがとう、ございます?」
「お礼なんていいよ、僕はお兄ちゃんだからね」
ジルはお兄ちゃん風を吹かせたいのか、隙あらば俺に頼って欲しそうにしてくる。
少々鬱陶しい時もあるが、まぁそういうお年頃なのだろうと思って目を瞑っている。
それに、今回ばかりはこの申し出はありがたいしな。
権能を使えばすぐさま完治することもできるだろうが、この痛みも訓練の内と考えてあえて治さないようにしている。
そのため動くだけで痛む状態で畑仕事はなかなか苦しいものがある。
「今日はもう休みなさい」
「はい、そうします」
俺はジャトに言われた通り休むことに決め、ベットへと潜り込んだ。
鼻を突く軟膏の臭いとズキズキ痛む腹のせいで今日は安眠できそうにない。
〜4日後〜
お腹の痣は跡形もなく無くなり、元の綺麗な肌に戻っていた。
他の子供達も訓練の傷が癒えてすでに外を出歩いていたが、痣が残っている者が多く、明らかに俺の回復速度が早いのがわかる。
ガリルの話では2週間程は痣が残るとの話だったのだが、これも神様が言っていた高いあれこれとかいうこの体の詳細不明な性能なのだろう。
いい加減取説とかもらえませんかね?自分の身体なのにあまりにも把握していない性能がありすぎる。
こればっかりは自分で確かめるしかないか。
「おはようございます」
「おはよう、ユウちゃん。お腹は大丈夫そう?」
「はい、もう治ったみたいです」
そう言い朝ごはんを作っていたジャトに服をたくし上げてお腹を見せる。
「あらあら、本当。子供の回復力って凄いわね」
「おはよう母さん、ユ....ウ.....」
ジャトにお腹の具合を確認してもらっていると、ジルが目を擦りながら居間に入ってくるが、俺が目に入ると動きが止まり何故か微動だにしなくなった。
「ちょ、ユウ!?女の子がなんて格好をしてるんだ!?」
「はい?」
改めて今の自分の状況を確認する。
俺はジャトが用意し、すっかり着慣れてしまったワンピースの裾をたくし上げ、胸の位置まで持っていっている。
そうすることでお腹が見えていると同時にパンツまで晒してしまっている。
そのことに気づいた俺は急激に体温が上昇していくのを感じ、咄嗟に腕を下ろしてパンツを隠す。
「し、失礼しました!」
「い、いや、うん。これからは気をつけてね?」
「はい.....」
な、なんだ今の羞恥心は!?
顔だけでなく耳まで真っ赤になった自覚のある頬を両手で包む。
案の定手に伝わる体温は普段より高くなっており、なおさら羞恥心が刺激されてしまった。
たかだか男に下着を見られたぐらいだぞ?
俺は元々男だ、同性に下着を見られるくらいなんてことないはずなのに、どうしてこんなにも恥ずかしく思ってしまうんだ!?
自分の中の未知の感覚に戸惑いながら、今日一日、一歩半程ジルと距離を離して過ごした。
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