第2章 戦いは続く。

第7話 現実世界・恋愛ジャンルに挑み……長編に挫折し、短編を、書く!



 この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは、ほぼほぼ関係ありませんので、まあ、あんまり深くは気にしないで下さい。


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 燃え尽き症候群から半年かけて復活したおれは、気ままに恋愛小説を書き始めた。新たなジャンルで気分を一新して。


 前作の『ボインの伝説』で主人公ボインがサッカーに否定的な発言を繰り返すシーンがあったのだが、おれ自身はワールドカップサッカーとか、欧州チャンピオンシップとか、プレミアリーグとか、超見るタイプ。

 サッカーは実は好きだ。

 もちろん、オフサイドのルールも理解してるし、女の子に聞かれたら説明できる。ただし、女の子からオフサイドについて聞かれたことは残念ながらない。


 とにかくそんな感じで書き進めた恋愛小説のタイトルは『スリーバック』で、サッカーのディフェンスラインと、登場人物3人の背景を意識した物語を書いていく。


 主人公はサッカー部のDFで長身の男子高校生と、中学時代の同級生で県外の強豪校へ進学したサイドバック、その二人と中学から仲が良かった女の子の三人。


 県外へ出ていったサイドバックが大怪我をして、強豪校のサッカー部をやめて戻ってくる。そのまま同じクラスに転校してきて、中学校時代のまま止まってしまっていた3人の恋模様が高校で動き出す……。


 そんなお話を『小説家になったろう』の現実世界恋愛ジャンルへと投稿した。


 しかし……。


「……いや、マジで。ほっとんど読んでもらえねぇ……」


 とにかく、読んでもらえなかったのだ。


 初投稿の日のアクセスは75アクセス。『ボインの伝説』で1日あたり10万オーバーのアクセスを経験していたおれにはものすごく少なく感じた。


 そして、そのアクセスは1週間後にはたったの20アクセスへと減少していた。最初の75アクセスが一番多いという状態だったのだ……。


 復活したばかりだというのに、おれはまたしても心を折られそうになっていた。






 なぜ読んでもらえないのか。


 おれはそのことについて考え始めるようになっていた。


 文章力については、今さらだ。ひたすら書き続けて、高めていくしかないし、他人が詳しく評価してくれるものでもない。『小説家になったろう』のポイントぐらいしか、判断基準がない上に、前作は5万ポイント超えで、今作は100ポイント未満だ。文章力がどうなのか、という参考にはならない。


 タイトルも『小説家になったろう』では珍しいシンプルなものにしていた。これも内容が伝わらないことが読んでもらえない一因だと考えられる。


「そもそも、高校生の恋愛ってだけだと、難しいのか……? あと、『なったろう』的な題名も意識して……」


 そこでおれは、注目されそうな部分として、幼馴染というものに目を向けた。

 幼馴染ものの現実世界恋愛は、ジャンル別のランキングの中で大きな割合を占めている。勝ちヒロインとしても、負けヒロインとしても、だ。


 そして、色々と考えた結果、『二人の間に礼儀あり? おれと幼馴染は何マイル? ~幼馴染との距離が縮まらなくてつらい~』を書き始めた。


 現実世界恋愛には幼馴染が山ほどいる。これなら、読んでもらえるんじゃないか。そんな安直な考えを持っていた。

 また、タイトルも、シンプルで短い『スリーバック』とは違って、『なったろう』的な長いものにしてみた。


「『なったろう』読者のニーズである幼馴染、ここをピンポイントで攻める!」


 ポイントだけではなく、初めて、『なったろう』読者のニーズというものを意識した瞬間がここだったのかもしれない。


 しかし……。


 またしてもこの作品は読んでもらえなかった。


 おれは、現実世界恋愛の高い壁に敗北したのだった。






「な、なんで……なんで読んでもらえないんだ……」


 再びおれは考え続けた。


 今、書いている現実世界恋愛ジャンルの作品は、連載で長編だ。

 以前、書いていた『ボイ伝』は異世界転生転移ファンタジージャンルだった。


 ……読者層が違うのか? いや、でも、おれはどっちでも読むんだが?


 こういう時は、自分を基準にしてはならない。


「あ……そうか……」


 自分を基準にして考えると、おれには、恋愛経験が……いや、恋愛における成功体験が、存在しない。

 それで現実世界の恋愛を書こうなどと、妄想が過ぎる。

 おれにあるのは失敗体験……つまり、失恋体験だけだ。


 恋愛を描くにはリアリティがなさすぎたのだ。


 おれにとって甘い恋愛などもはやファンタジー。『ボイ伝』のような異世界でしかもファンタジーなゲーム世界なら、好きに書いてもいいだろうが、現実世界恋愛ではそうもいかないのではないか。


 そこに思考が辿り着いた時、おれは閃いたのだ。


「失恋ものを……書く……」


 そこには、おれの中のリアリティが存在していた。それでいて『なったろう』読者のニーズに答えつつ、読んでもらうためには……。


「失恋で……幼馴染なら、すれ違い、か……そして、長編連載じゃなくて、短編で……」


 そうしておれは現実世界恋愛短編小説『千年も恋は続かない ~すれ違い幼馴染の不仕合せな結論~』を書いたのだった。





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