第4話 悪意ある感想と……それを塗り替える、新たな感想が、支えとなる……。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは、ほぼほぼ関係ありませんので、まあ、あんまり深くは気にしないで下さい。
特に、どことなく聞いたことがあるような作品名とか作者名とかが出てきたとしても、そのへんはさらっとスルーして下さいね。
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フツーのサラリーマンとして働いている限り、どうしても平日は仕事で苦しい。執筆の時間も限られてくる。そして、平日は1話更新となる。
ならば休日はと、時間の許す限り頑張って休日限定の4話更新を努力する。
しかし……。
「平日の1話更新じゃ、日間ランキングのトップ10からあっさり陥落すんのかよ……」
とにかく『小説家になったろう』のランキングの現実は厳しかった。
成人の日を含む土日からの3連休での1日4話更新の後、平日1話更新だと、すぐに日間トップ10から陥落したのだ。
「……きっと、読んでる人たちも、期待してくれてる。やるしかない」
ここからはもう、趣味とは言えない世界に突入したのだ。
平日は2話更新、休日は4話更新。一週間で18話の更新だ。
ひたすら猛スピードで物語を進めていく。
睡眠時間もどんどん削られて行く。その結果、仕事中に、後輩や上司、下手するとクライアントからも顔色を心配されたりしつつ。
迎えた2021年1月22日。
月間ランキングでついに11位になっていた。
「あと、ひとつ……」
だが。
その、あとひとつが厳しい。
12位とのポイント差は60ポイントなのに。
10位との差はなんと6000ポイント。
大きな壁が立ちはだかっていた。素人作家と、プロ作家の違い、なのかもしれなかった。
「……ポイントでおれの後押しをしてくれる人がいれば、他の先生方の後押しをしてる人だって、当然、いるんだよな。くそっ。あきらめねぇ!」
こうなったら『ボインの伝説』をよりおもしろい作品に仕上げるしかない。
ふらふらになりながらも戦いは続く。ポイントがおれの心の支えだ。
この時点で『ボインの伝説』は、表紙には載らないにしてもランキング上位には違いなく。
更新スピードの早さもあって。
1日のアクセスは10万オーバーという感じで、とにかくアクセス数は伸びていた。1日に10万ものアクセスなどというのは考えられないことだった。それがランキング上位の日常なのだ。
レビューを頂いたりして、喜んだりすることもあれば、感想欄にはちらちらと否定的な内容も混じってくる。アクセス数が増えるというのは、いいことばかりではなかった。
『うわぁ。なんだこれ? 評価高いのに? 即ブラバでした』
『別のサイトで、これがおもしろいって聞いたけど、全然じゃん。なにこれ?』
『1話は読んだけど2話の前書きでもう終わった』
『知り合いから面白いとおすすめされたから読もうとしたけど、読む気も失せる』
『ガチで、めちゃくちゃ気持ち悪い。このボインって主人公、ゲーム知識とったら長所が何一つ見当たらない薄っぺらいキャラ。逆ハーレムタグも付けない規約違反を放置するくらいのクソボケ作者の作品だからかキャラ達から気持ち悪さが滲み出て、作者の趣味思考言動がリンクしてると考えるとこの最低な主人公が創作されたのも納得だな』
『もう読まないあほくさいから』
などと、ネガティブな感想にガリゴリ精神を削られていくことも。
それでも応援してくれるポイントがおれの背中を先へと押し出す。
ポイントはまさに蒸気機関車の石炭! 徹夜明けの仕事のエナドリ! おれに翼をくれるのだ!
2021年1月24日。
累計でPV500万アクセスを突破し、総合ポイントはこの時点で3万ポイントを突破していた。
だが、年始でゆったりしていた仕事は、年度末へと向けて忙しさを増し、毎朝のハンバーガーがおれの体重を増加させ、プロット修正をかける通勤電車では眠ることもなく。
そろそろ、肉体的にも、精神的にも、おれには限界がきていたのだ……。
1日のポイントがだいたい600で、月18000ポイント。それでも表紙に届かないという『小説家になったろう』におけるランキング挑戦での厳しい現実。
辛うじて指がキーボードを叩くのは、そのポイントがおれの心を激しく揺さぶるから。
そのポイントの向こうにいる読者の皆さんが待っていてくれると信じられるから!
さらには……。
「あれ、この感想の、NAGURIマジ、って人、ひょっとして……」
感想欄からクリックして、その人の自分ページへ。
「やっぱり! 『大都会の少年騎士』のNAGURIマジ先生じゃん! 読んでくれてんのか! うっわ、めっちゃ嬉しいやん! マジでかーっ!」
それは書籍化、コミカライズまで達成している大作家からの感想だったのだ! 素人作家にはたまらないご褒美である! たとえそれが登場した敵モンスターへのごくごく短い一言しかない応援だったとしても、だ!
「うおおっ、書いてて、よかったなぁ……」
擦り切れていた心に、水が与えられたように、ほろりと涙が出る。涙が出る時点で、何かがおかしいのだと気づくべきだった。
そうして、『ボインの伝説』という物語は完結へと進みつつあった……。
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