第3話 可能性があるのなら……「おれもランキング上位に……なりたい……」
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは、ほぼほぼ関係ありませんので、まあ、あんまり深くは気にしないで下さい。
特に、どことなく聞いたことがあるような作品名が出てきたとしても、スルーして下さいね。
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おれは『ボインの伝説』の執筆に入った。隙間時間を使って。
通勤電車の車内でタブレットを使ってプロットをメール送信し、職場の最寄り駅に着いたら、マクドデカクドのハンバーガーを食べながら、ノパソで本文を書き上げていく。
メールからワープロソフトへとプロットをコピペして、集中力を高め、本文を次々と打ち込んでいく。主人公のボインになりきり、その言動をトレースしていく。
そして、『小説家になったろう』の自分ページの創作報告で、『1月1日より、ボイ伝、第4章、スタートします!』と発表して、さらに自分自身を追い込んでいく。こういう予定の宣言は自分を追い詰めるプレッシャーとしてちょうどいいのだ。
電話でおふくろに連絡して「今年は帰らない」と伝え、一方、職場には「実家に帰省するので休暇を下さい」と嘘をつき、年末年始に休暇を確保する。よいこはマネしちゃダメだからな?
年末に抱えてた案件はかなり重くて、こだわりのあるクライアントだったが、なんとなくできるフリしたチャラ男っぽく、ですよねー、ですよねーという感じで乗り切って、ほぼ無理矢理な感じで一段落させた。
仕事にケリを付けたら、年末休暇はアパートに引き籠って、ひたすらノパソと向き合う日々を過ごす。
そして。
2021年1月1日、0時00分。
予約していた『ボインの伝説』第4章第1話が、完結設定を外して再開更新され、その中では復活した主人公ボインによるボイントークが全開だった。
この時点で『ボインの伝説』はPV数2205231、総合ポイント14854、異世界転生転移ファンタジー部門ランキング、月間17位、週間19位、日間15位だった。約1か月もの間、更新もないのにランキング上位に居座ったままだったのだ。
「素人作家のおれがいったいどこまでイケるのか。やってやる!」
1月1日は気合で1日4話更新を達成した。
ポイントと、その結果としてのランキングが。
おれの背中に重くのしかかっていた。
2021年1月3日。
いつもの「バカ」が口癖の読専の知人からまた連絡が入った。
『早く異世界転生転移ファンタジー、日間ランキング見ろ! すぐ消えるぞ、バカ!』
口癖なのは知ってるんだが、「バカ」はいい加減やめてほしい。そしてランキングからすぐ消えるとか言わないでほしい。お願いだから。
……もちろん、ランキングは確認した。
日間ファンタジー異世界転生転移ジャンル別のランキングで、なんと8位。『小説家になったろう』でネット小説を書き始めて、初めてのひとケタ順位だった。
「これ、あれか……? 5位になったらランキングまとめページの載るヤツだよな?」
マジか? おれが8位だって?
身震いしつつ、気合も入る。それだけ、認めてもらえているということだ。1月1日の元旦と、その翌日の1月2日はどちらも1日4話更新だった。その影響もあったのかもしれない。
「……1月5日までは休暇で、仕事始めはそれほど忙しくないにしても、成人式が終わったらそれなりに厳しいか。いや、それでも……」
もう、こうなったらやるしかない。
ポイントの後押しを信じて。それと、自分がここまで書き続けてきた『ボインの伝説』の面白さを信じて。
休暇が終わって仕事が再開してしまった。
これまでと同じく、通勤電車でプロットを書き進め、マクドデカクドでハンバーガーをほおばりながらノパソのキーボードを打つ。
時間ギリギリに職場へ向かい、昼食時間も惜しんで仕事を片付け、帰りの電車でプロットを立てながら、アパートに戻るとノパソを開いて本文を書き進めていく。
そして2021年1月8日。
ついにボイ伝が20000ポイントを突破した。ランキングも異世界転生転移ファンタジー、日間8位、週間8位、月間12位。
……月間で12位とか、マジかよ?
この頃には、おれは知人に言われるまでもなく、自分でランキングを確認するようになっていた。
月間10位以内は『小説家になったろう』の表紙ランキング入りだ。
「……まさか、表紙まであと2ランクアップ?」
表紙とはいっても、ジャンル別の方で、総合にはとても手が届かない。
「でも、ここまでいったら、1回くらい、『小説家になったろう』の表紙に載ってみたい……」
ついに。
ポイントの後押しは、おれにそんな欲を持たせたのだ。持たせて、しまったのだ。
だがしかし、上位陣は『地獄もーど』とか『たっかいエルフはすろーなライフに飽きてきた』など、全て書籍化、または書籍化予定の作家たち。しかも、『百足ですが何も?』や『無職先生』など、アニメ化が決定した作品まであったのだ。
「ライバルが強すぎるが、ポイントを下さるみなさん、おれに力を!」
そうして、おれはただひたすらに指を動かすのだった。
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