第9話 極星騎士団
最初の決闘から3か月が経ったある日、ウッドビレッジ領を収める領主ギュスターヴ・ヒューラー騎士伯の息子である
アルデバラン・ヒューラーは村の子供たちを集めて演説を始めていた。
「えー、諸君!!我々はこのウッドビレッジを近い将来担う者である!
であるからして、我々も大人になるまでに兵士としての基礎を学び、
自警に努めるべきであると、私は考えている!!
諸君!!この村は好きか!!」
ウォオオオオオ!!
「この村を、守り、たいかーーー!!」
ウォオオオオ!!
どういうわけか、ヴィクトル以外の子供達は熱狂しているかの如く
熱が入ったように声を上げていてさながらライブのコール&レスポンスと化していた
アルデバラン「では、我々はここに!自警団組織極星騎士団の創立を宣言する!!」
ウォオオオオ!!
「では入団希望者はこのペンダントを一人1つずつ受け取り、身に着けておくように!!以上!解散!!」
そうしてヘクター達、以前の決闘の際に集まった子供達が村の子供達に木彫りの
プレートに※のようなマークの入ったものを紐で括り付けたドッグタグのような物を配り始めた。
ヘレナがヴィクトルにもペンダントを配ってくれた。
「はい、これ。一生懸命私たちが作ったんだから、つけてよね!アル様ったら全然手伝ってくれないんだから...」
ヘレナは複雑そうな顔をしてヴィクトルに手渡した。
(い、いらねぇー)
とは思ったが、そう言われると無下にするのも心が痛むのでヴィクトルは笑顔で
「ありがとう、とても良くできているね。大切にするよ」
と、思ってもいない労いの言葉をかけて受け取った。
その後、何度か村の子供達を集めてアルデバラン指導の下で
剣の扱いや体力づくりのランニング、素振りや
約束組手のような訓練が行われていった。
そして数か月の時が流れたある日だった。
昼になる1時間から2時間ほど前に広場にあつまり子供達でいつも訓練を行っているのだが、今日はその広場に子供たちが円をつくり
アルデバランとヴィクトルを囲んでいた。
アルデバラン「おい!ヴィクトル!!今日は兵士としての必要な訓練である
防具を使った防御の訓練を行うぞ!盾を持て!
お前は防ぐのが得意なようだからなぁ、しっかり防御に専念しろよ~」
そう言ってアルデバランはニヤニヤして木剣を構えた。
どういう効果を狙ってかわからないが、剣は刃が均一に刃の部分が
飛び飛びに切り取られており、
ノコギリの刃のような形状をしていた。
(中二病か・・・?こいつ・・?)
ヴィクトルは
真剣であっても正直なところ、刃の耐久度が低くてこの世界の切るというより
叩きつける、に近いスタイルの剣では意味が有るのか?
と問いたくなってモヤモヤしてきていた。
アルデバラン「おっと、良いか、反撃するなよ。避けるんじゃねーぞ!防御に徹しろ!お手本にならないからな!
まぁ、盾じゃ反撃できてもたかが知れているだろうがな(笑)」
そうしてヴィクトルにも盾が渡され、両者は向かい合った。
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木の盾 防御力5
使い込まれた訓練用の盾
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アルデバラン「行くぞ!!」
アルデバランは数か月前の頼りない構え方と違い、体軸が安定した
構えから一点に向けた鋭い突きを放った。
時間にしてわずか一瞬の事であったが、
キャラクターのレベルこそ低いものの、ステータスがカンストレベルである
ヴィクトルは集中力も跳ね上がっている。
加えて始まる直前にスキル集中を発動しておいたので
アスリートで言うゾーンに入っている状態となっていたために
体感時間は長く、スローモーションのように感じていた。
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スキル 集中(Lv.MAX)
ステータス精神力の高さに応じて命中・回避・クリティカルの確率が高まる
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この世界がゲーム世界だった際は体感時間が延びるなんて副産物の効果は
もちろんなかったので、この効果にヴィクトルは少し驚いていた。
ヴィクトルは平行して考えていた。
このアルデバランの行為はおそらくヴィクトルへの初めての決闘の際の腹いせなのだろう。
このノコギリ刃が突きを使う事へのフェイクだったのだとしたら中々狡猾だなと
ヴィクトルはこの数か月でのアルデバランの剣の稽古を人知れず頑張っていたのかも知れない事と、
子供達を手名付けた求心力、狡猾さに感心していた。
自分への報復のためとはいえ、子供の努力に少し微笑ましい気持ちが胸の中に芽生えた。
甘んじて受ける事も考えたが、ここで黙っていたぶられては彼の努力に答えていないことになると思い、受け止める事にした。
パリィ!
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パリィ 剣・小剣・盾などで出来るカウンター技
対象の物理攻撃を防ぐ事ができる
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盾で剣の軌道を逸らし、勢いを上体に流した
アルデバンは構えが崩れ両手を上げた状態になって一瞬硬直した。
アルデバン「なっ!?なに!?」
キッと睨みつけ振り下ろす攻撃に切り替えて
木剣を叩きつけてくる
パリィ!
またしてもヴィクトルは防いだ。
その後もアルデバンは攻撃を続けたがすべてパリィによって
振り払われてしまった。
おそらくパリィが成功していなければこの使い古された木の盾は
破壊されていた。
アルデバンの剣も彼の膂力に耐え切れず破壊されていただろう。
子供ながらに体格も良く
鍛錬を積んでいるからなのか中々の剛腕に感じた。
アルデバン「ハァ、ハァ・・・な、なんて、やつだ・・・」
さすがに全力で剣を振り続けたせいかアルデバンは疲労困憊になってきたようだった。
アルデバン「きょ、今日のところは!このくらいにしておいてやる!、俺は少し休む!いいか、お前らも盾の訓練を怠るなよ!」
ヘクター「ま、まってくださいょお~ アル様ー!」
いつの間にか取り巻きと化したヘクター達が小物ムーブをかまして
ついていった。
その後は他の子供たちに「す、すげー!!俺にも教えて!!」
と、取り囲まれ
自身も子供の身体で在りながら、人生2週目のヴィクトルは子供達に
盾の基礎的な使い方を教え、精神的に疲労感を覚えたのであった。
異世界redemption @kyoumahouooin
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