第8話 不運の騎士2

ヴィクトルは自然体で構え冷静に対峙している少年を見据えた。

前世では喧嘩もろくにしたこともないし、剣どころか棒すら振るったことなどなかったが、これがパッシブスキル剣術Lv50(MAX)や割り振ったステータスの恩恵なのか?

いやに冷静な自分に内心少し驚いていた。

まるで小学生に凄まれている大人のような?とはいえ前世ならそれでもドギマギしていた事だろうが今はまったく脅威も不快感もない。


アルデバランが大声を出す

「おい!ガキ!俺は言っておくが父様や衛兵達から剣術や兵法の指南を受けているんだぞ!降参して今後俺の子分になると誓うならこの決闘は俺の勝ちという事にしてやっても良いんだぞ、失う物はお前の元々ないプライドだけだからなぁ!ギャハハハハハハ!!!」


ヴィクトルは呆れながら返す

「いや、別に子分でも良いですけど。そもそも訓練をされてるならアルデバラン様が万が一負けた方が失う物が多いからメリットが無いのでは・・・?まぁ、良いんですけど。」


アルデバラン「キィイイイ!!いちいち的確に突っ込むんじゃねぇよ!この時間を楽しみやがれ!しゃーんなろーーー!!」


不意にアルデバランが大振りに上段から踏み込み袈裟切りの形で切り込もうとしてくるが


アルデバラン「ウッ・・・!!?」


ヴィクトルはほぼ無意識に木の棒の剣ならば柄に当たる部分を

最小限の踏み込みでアルデバランの鳩尾に当て、アルデバラン自身の踏み込みで食い込ませるカウンターを当てた。


溜まらずアルデバランは悶絶し辺りをゴロゴロと転がり、ひとしきり吐しゃ物を吐いてから荒い呼吸で言葉を吐き出した。


「く、くそが、よ、よくも子分たちの前で恥をかかせてくれたなぁ!!

俺への尊敬や忠誠心が薄れたらどうしてくれるんだぁあ!あぁん!ゴラァ!!」


ヘクター「いや、尊敬とか別にねぇけど・・・」

マイルズ「さっき話したばっかのキャラ変したてのイキリ陰キャだしなぁ」


アルデバラン「そういう事じゃねぇんだよ!あーもう!!いや、わかったよ。

どうやらお前には本気で行かなきゃいけねぇみたいだな。」


アルデバランの構えが先ほどまでの一応剣の心得がある者の構えから

両手を広げ大きく威嚇するような獣のような構えへと変わり

心なしかヴィクトルには彼の肉体が少し大きくなったように感じ

目つきが変わったように感じた。


ギャラリーも雰囲気の変化に固唾をのみ込んだその時だった


「い、イヤァアアアアアアアアアアアア!!!」


観戦していたヘレンが大声を上げた


サリナ「ヘレン!!どうしたの!!」


どうやらヘレンのいた場所に蛇が木から降りてきたらしく反射的にサリナが蛇の首根っこを掴みぶん投げた


蛇は寄生であっけに取られていたヴィクトルとアルデバランの方へと投げられたが

ヴィクトルは一瞬でサッと木の棒で蛇を払い、その棒はそのままアルデバランの目に当たり

アルデバラン「ひでぶっ!!」

目を閉じている間に驚いた蛇アルデバランは股間を噛みつかれてしまった


アルデバラン「うひゃああああああああああ!!お、俺の股間がリヴァイアサンに!!いたたったたた!!」


その後、全員で蛇を追い払いアルデバランを領主の屋敷まで連れて行き

治療してもらい事なきを得たが、

アルデバランは村の子供に一方的に不遜な態度を取り、喧嘩を売った上に返り討ちにあった事で領主でもある父親からキツくお叱りを受けた。


しかしその後もアルデバランは事ある事にヴィクトルを目の敵にして

絡み続けてくるのであった。







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