第7話 不運な騎士

剛ことアルデバランが生活を営むウッドヴィレッジ領にはもう一人の転生者がいた。

彼の名はヴィクトル。

ライジング・サガのゲーム内にてプレイヤーキャラでは無い物の、高い守備力と後半に入手できる強装備を手に入れる事のできるイベントを持つため好きな人は好きなキャラクターである。

ただし後半は主人公であるプレイヤーキャラが集結するためもっぱら装備を剥がれ野に放たれて、放っておくと敵サイドに吸収されるという不運も背負っている。


「マジかぁ・・・ヴィクトルかぁ・・・」

大学生だった鈴木良平は不運にも量販店へ突っ込んで来たトラックが引き起こした火災に巻き込まれ前世では命を落とした。


彼は生前はライジング・サガというゲームが好きでやり込んでいた。

4週は思い出した頃に小・中・高・大学の夏休みにはクリアしていた。


ヴィクトルは好きなキャラではあるが、主人公である7人の英雄では無いし

彼の一番好きなキャラは正統派主人公のユリウスだった。


しかしゲームの世界と似ている、いや、もしかするとゲーム世界なのかも知れない?

彼はその事に気が付いてスキルポイントを見ると10000ポイントも所持している事に気が付つき、最初の憂鬱を吹き飛ばすくらい爽快な気分になった。


「こんだけポイントがあったら、主人公達よりも強くなれるんじゃね!?

いや、むしろゲームじゃなくてリアルになったんだから俺が主人公って事だよな!!」


夢中になってポイントを割り振り、彼の思う最強のキャラをクリエイトすることにした。


しかしヴィクトルはプレイヤーキャラではなく、序盤の終わり頃に初登場するキャラクターであり、彼のそれまでの人生を知らないのでどうした物かと考えた末、身体の成長を待ち

それから冒険者として金を稼ぎ、その金を元手に帝国士官学校へ入り

メインルートへの参入をしようと決意した。


まだ7歳になったばかりの子供なので彼の序盤では強すぎるステータスや

スキルは隠し、村の子供として潜伏して生活していた。


そんなある朝、家の手伝いの一環として森へ薬草や木材を村の子供達と拾いに行こうと広場に向かうと、彼の日常には居なかったはずの少年がいた。


「おっ、てめーがヴィクトルか!俺はアルデバラン、今日からお前を俺の子分にしてやる!ありがたく思えよ!!ガハハハ!!」


広場に積んである丸太の上からバカそうな顔の金髪DQN小僧がいきなりマウントを取ってきた。


ヴィクトルは意味がわからず少し考えた後に周囲を見渡すと、困った顔の村の友人達が彼の顔を見返してきた。


「こいつ、領地騎士のギュスターヴ様の息子らしいんだけど、

なんかいきなりこんな感じで子分にするって皆に言ってるんだよ。」

「この間まで親父の後ろを引っ付いて回ってる大人しい奴だったのにな、

頭でも打ったんじゃね?」


友人のヘクターとマイルズが困った顔で話しかけてきた。


「おい!お前ら並んで自己紹介をしろ!」


「えぇ・・・なんかだるい奴だなぁ」

ヘクターはボヤきながらも広場にいる子供達5人と一緒に

横一列に並んだ。


「ヘクターにマイルズにトーマス、サリアにヘレンか!よし!覚えたぞ!」

バカそうな口調に反してこのアルデバランという子供は紙に紙にメモを取り

眉間に皺を寄せて真面目に覚えようとしているようだった。


「あのーアルデバラン様、俺たちはこれから村の手伝いで仕事があるんで

今日はこのくらいで解散してもいいでしょうか?」


ヴィクトルが提案するとアルデバランが少し間を置いて答えた。

「あー、そうだよなぁ、あ、アルでいい!!アルと呼べ!

てめぇ、早速ガキのくせに意見するとは生意気な奴だ!懲らしめてやる!

おい、ヘクター、手ごろな棒を2つ持ってこい!!チャンバラで決闘だ!」


「自分だってガキじゃないか」

ヘクターは嫌そうな顔をしながらも棒を拾いに草むらの方へ歩いていった。


「おい!尖ってるやつとか、なんか危ない感じのはダメだぞ!

それから持つ時にトゲが指に刺さらないように注意しろよ!」

アルが大きい声で喚いた。



そうして朝からこっちの世界で初めての狩り以外の戦いを始める事となった。











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