第5話長い長い長い旅の始まり
さきほどまでは笑ったと思ったら怒鳴り声をあげてわめき散らかしたり、
情緒不安定でサイコパスなライジング・サガ運営チーム所長
ランサム=エアが穏やかに、そしてにこやかな笑顔で
いよいよ確信に触れて行く。
「なーに、難しい話ではないさ。確かに君たちには自由なんかない。
当然さ、罪を犯した咎人なんだよ?君達は。
だけど拘束もしない、刑期も無い。人助けと贖罪も出来る。
それに君たちは自分で言ったハズだよ。誰でも良いから助けてくれ、
なんでもするー贖罪がしたいーってね。」
参加者一同は逡巡し、次の瞬間には絶句していた。
恐らく剛と同じように何者かに他殺されここへ送られてきたのだろう。
だが、あのシルエット女は誰が殺したのかは言及していなかった。
そう、嘘は付いてはいないのだ。
ランサムは続ける。
「君たちにして欲しい事を説明するよ。
まぁ簡単に言って、NPCのフリをして欲しい。って感じかな。」
剛はよくわからないので聞き返す。
「どういう事だ??NPCのフリ?普段は普通に生活していて良いのか??
本当に彼らは運営の事や自分たちがゲーム世界のキャラクターだっていう事を知らないって事なのか?」
「そそ、NPCの人達っていうのはこの世界で生活する現地人なんだよね。
だから一部の選ばれたプレイヤーのために裏方をやってくれとか、都合よくこういう
シナリオに迎合するムーブをしておくれ?なんてお願い出来ないんだよ。」
他の参加者が次の質問をする。
「ランサムさんよぉ、俺らのこの贖罪スキルとかよくわからんスキルについて説明してくれねぇかな。」
ランサムは両手を小さく広げて話す
「あぁ、そうだったね。その贖罪という名のスキルは君達キャストのための固有スキルだよ。
簡潔に言えば、良い事をしたり運営に協力的な事をすれば少しずつレベルが下がっていく。
逆にさっきのメールに書いてあったような違反行為をした場合はレベルは上がっていく。
贖罪スキルが消えれば君たちは許されたと思ってくれて好きに行動してくれて良い。
もしも望むなら元の世界に返してあげても良い。」
「あ、それからその他の固有スキルは我々運営が君達の個性に合わせた贈り物だ。
普段は君達もこの世界の現地人として生活してもうから、当然その中でのサヴァイヴァルは自力でしてもらうからね。」
参加者の一人が質問をランサムに投げかける。
「そ、それって、もし私たちが死んじゃったらどうする気なの・・・?」
参加者の姿はアイコンで見えないが、声からは恐れている事が伝わってくる。
ランサムは小さな子供でも宥めるように、
やさしく答える。
「大丈夫だよ、そうそう簡単に死なせないための固有スキルだ、何の心配もない。」
その答えを聞いて安心した参加者達はホッと胸を撫でおろすかのような溜息が続いた。
「さて、今日の所は話は以上だ。
まだまだ赤ん坊の身体では不自由だとは思うが、チュートリアルの一環だとでも
思って、任務に備えてくれ。
キャストとしての任務が有る際は必ず連絡する。」
ウィンドウが消え、参加者達が赤子を演じ始めた頃、
ランサムは頬杖を付きながら煙管を吹かしてからもう誰も聞いていない空間に
先ほどの質問の答えを一人告げる。
「そう、大丈夫だよ。君達の代わりなんていくらでも居るからね」
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