第4話長い旅の始まり2

新着メッセージを開いて見るとさきほどまでとは違い

チュートリアルの文言などではなく、いかにも業務連絡と言った感じの

文章が書いてある。


ライジング・サガ運営チーム

贖罪プログラム参加者への周知事項 ◇.zip

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 贖罪プログラムへの自主的参加をして頂きありがとうございます。

参加者の皆様方におかれましては、これより運営チームの元で

ライジング・サガプロジェクトを共に盛り上げ、

前世世界での未練を当ゲーム内にて

昇華させるべくキャストの一員として業務に励みますようお願い申し上げます。


尚、当プログラムでは参加に当たって下記の条件の厳守を徹底してください。


1.プログラム参加者は運営の指示無くプレイヤーへの接触を禁止する。

2.プレイヤーへのキャストの開示、公表を禁止する。

3.不正行為(チート行為等)、公序良俗に反する行為を禁止する。

又はそれらの行為を発見した場合は速やかに運営に報告すること。


※規定外事項 1-1および1~6までに該当する



---------------------------------------------------------------------------------------------

・・・・

・・・

・・

(だ、だめだ、何が書いてあるのかさっぱりわからない。

何を言っているのかわからねぇと思うが、ありのままの感想を言うぜ。

言語は理解できるのに理解できねぇ。)


剛は昔から堅苦しい文章は苦手で、こういった文章を見るだけで頭痛がするのだった。


(ん??何か添付してあるぞ??つうかなんだよコレ、

バインアプリとかメッセージアプリだろ今時使うんならよぉ。

グループバインにすりゃ良いじゃねーか)


と、前世で流行していたメッセージアプリの事を思い出しつつ、

添付されているファイルを展開するようイメージした。


すると動画らしきウィンドウが浮かび上がり、

動画の横に小さな窓やアイコンらしきものが羅列された。


(あ、これ、動画じゃなくてリアルタイム会議のアプリだったのか)


真ん中の大きなウィンドウに映った青年がしゃべり始めた。


「やぁやぁ、初めまして贖罪プログラム参加者諸君。

私がライジング・サガ運営チーム代表のランサム=エアだ。よろしく頼むよ。

ガハハハ」


白銀の挑発に薄化粧でもしているのか肌は白く、道化師かマジシャンのような

あからさまに怪しい恰好と名前。

仰々しい台詞のような言い回しも怪しさに拍車をかけている。


参加者から画面越しに同様の声が伝わる。

参加者の声だろうか、サブウィンドウのアイコンが光った後に

声がいくつか飛び交う。


「いいから早くスタートしてよ」

「なげーんだよ!チートライフしたいのにまだぶっ壊れスキルがねぇぞ!」

「マジかよ、ライサガならアリーシャちゃんとかいるんかなぁ・・・へへ」


ランサムは終始ニヤニヤしながら機嫌良さそうに語り続ける。

「一応説明はしておこう。

異世界転生と聞いて第2の人生をチートスキルやゲーム知識で無双ライフ!

辺境に追放されたがのびのびスローライフでもすると思ったかな??

答えは~~~・・・・」


「NOだ。」


突然厳しい顔つきになり、眼も座り始めたランサム。


「てめぇらクズの重犯罪者がなぜか許されて第2の人生だと・・・

ぶち殺すぞ、このゴミめら」


急な態度の急降下にこのバーチャル会議内が鎮まり返った。


「この世界は前世の世界で死に物狂いで研鑽し生き抜いたが

報われる事の無かった者達の最期の拠り所、救済措置の場だ。

彼らは英雄になるもよし、

破壊者になるも良し、

スローライフを送るも良し、

前世世界へ帰還するも良し。

基本的指針はプレイヤーの動向に合わせている。」


(ん・・?プレイヤー・・・?は俺たちなんじゃないのか?)


「だーがー、近年、イレギュラーが頻発し、

ほぼコンシューマーゲームだったライジング・サガは突発的にプレイ人口が増え、

今やMMO運営状態だ・・・」


会議参加者がぼやく


「猫も杓子も異世界転生だもんな、やりすぎなんだよ」

「そういやトラック自爆テロとかあったからかなぁ」


ランサムが怒鳴る


「黙れ!!良いか!!貴様らのようなゴミ共が犠牲者を増やし続けるせいで、

こっちは家に帰って寝てねぇんだよ!!

満員御礼超えてんだよ!!プレイヤーは文句ばっかりだしよぉ!!」


ランサムは机を強く叩いて震えた。


参加者のひそひそ声が聞こえてくる。

(運営サイドの経営能力の問題なんじゃ・・・)

(増員すりゃいいじゃん・・・)


ランサムがそのひそひそ話をかき消すように叫ぶ

「黙れ!!そんな急に増員出来るほど楽な商売じゃねぇんだよ!!

ぶっ殺すゾ!!」


言い切った後に急に暖かな人当たりの良い笑顔になるランサム

「だが、つい先日24時間365日働く工作員、いや、アトラクションキャストが

ついに見つかったのさ。」


その声はとても穏やかだった。


彼の態度の豹変が得体のしれない恐怖を参加者一同に与えた。


(さ、サイコパスじゃねぇーか・・・とんだサイコパス上司じゃねぇーか・・!!)


もちろん、剛も怯えた。

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