第10話
10ヒルツ大尉西へ10・マカオ2
「おい、蟹と北京ダックの旨い店に連れていけ」
セキュリティ会社からの派遣ガードマン、ジャック・デンプシーに命令した。どうせ傭兵崩れ野郎だ、好きな名前を付けるてるに決まってる。ジャッキー・チェンの方が笑えるのに。
「それなら翡翠楼などは・・・」「だめだ、だめだ!高級店なんか食い飽きた、そうだダウンタウンで適当に探そう」
ジャックがニガイ面しながら
「ダウンタウンでは安全上責任が持てません」
「それをどーにかすんのがお前の仕事だろ?上乗せした日当分働け!ボーナスが欲しくねえのか?」
まさにわがままな金持ち
「ヤダ、パパっ恐~い!」ヒルツの腕にまとわりつく、板についてきた小早川
「大丈夫だって、この俺がついてるだろ?いざとなりゃ必殺の紅蓮拳をお見舞いしてやるぜ!」
「キャ~パパったら頼もしいぃ!」
うんざり顔のジャック・デンプシー。弾倉を防弾チョッキのフォルダーに追加した。慣れている。
コロニアル様式の優美な建物とゴチャッっとした鉄筋コンクリートが混在し方々におめでたい赤地に金字のお札が張られていた。
どこの下町も似たような喧噪に溢れている。
マカオは比較的安全な街だった。戦後当然様相は変わり
マフィアがしのぎを削る街に戻った。
今も金持ち丸出しのヒルツ一行に獣の視線を送る奴らが何人かいる。
その男はそこに居た。
表情も分からないほど排気ガスで煤けた顔、元が何色だったかも想像できない程垢じみた衣服、Tシャツの背中は破れ、むき出しになった背骨とあばらの浮き彫りが皮一枚をへだてて、この世を呪っている。そいつは背中を丸め世界中の誰からも相手にされず座っていた。
その「アスファルトの染み」に、ニヤケ面しながらヒルツはポケットから取り出したマネークリップに挟まれた札束を無造作に放り投げた。
「こいつでなんか旨いもんでも食いな」
「アウアエアアアウアウアアアアアウアア!」
意味不明な咆哮を発し、きびすを返して何処ともなく走り去った。
クリップから数枚の札を引き抜き天に向かって散らしながら。
それに群がる人々。
「ンもう!何であんな奴にお金なんかあげるの!」
小早川(オカマ)が猛烈に抗議した
「シャロン(小早川)、こうやって功徳を積むと天国にいけるんだぜ?それに面白れーだろ?あいつが何を買うのか想像してみな、食いもんか?酒か?女か?ヤクか?いずれにしても誰からも相手にされないだろうぜ。ひゃはははははは!」
「もう知らない!」(この腐れ外道!いつかこの手で殺してやる)
小早川(オカマ)の怒りは沸点に達していた。
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