第9話

9ヒルツ大尉西へ9・マカオ

https://www.youtube.com/watch?v=gcE1avXFJb4


マカオ空港のロビーを金だけは持ってそうなもっさいおっさんと、息をのむほど美しいブロンドの女が指を絡ませながら歩く。ココシャネルの香りが甘く二人を包む。


その男の突き出た腹はベルトを隠し不摂生の美食家を思わせた。茶色い角刈り、薄い紫のサングラス、ブランドものセカンドバックを小脇に抱え、どこからがアゴなのかわからない口は金歯で輝き小粒のダイヤまで入れている。その口の周りは泥棒無精ひげで覆われていた。

いかにもどこかの富裕層親父が、金に飽かせて囲っている愛人とのバカンスのようだ。


「もっと俺の肩にもたれろ。手足の力を抜け。足運びのリズムを崩せ。「スパイ抜きに」に抜かれるぞ。」

いやらしく指を絡めるオカマ「モールス」を送る。

ヒルツと小早川だ。

所詮付け焼刃、まだまだ動きが固い


大戦の傷痕、負傷した兵士の欠損部分を補うためにバイオテクノロジーと機械工学が異常に発達した。本物と見分けがつかない程の義手、サイボーグ化し戦闘能力を強化する者(ウヒョー!)もいる。

「霜月」のエージェントは全て身体能力強化処理を受けていた。

例外・ヒルツ大尉


その技術を使っての変装。

最新のフェイス識別センサーでも見破るのは困難だ。

しかし、経験豊富で鋭い勘を持ち、特別な訓練を受けた人間の眼をごまかすのは至難である。

ちなみに小早川は胸あり、竿付、玉在り。

その手の趣味人は多いので問題なし。

(母上様、盾雄は無事であります)

単独行動の時、ヒルツはそんなことナ~ンも気にせずぶらぶら歩くが今回は事情が違う。


空港のコンシェルジェに行き、ホテルの予約と銃携帯許可資格を持ったボディーガードを手配する。

この二人には必要ないが、金持ちは皆そうする。返って目立たない。

「シャロンお前の美貌は周りを霞ませるぜ。俺様を困らせるほどにな、いっそ玉とっちゃおうか?かっかっかっか!」

「んもう!パパったら意地悪っ!こっちの方が好きなくせにン!」

シャロン(小早川)がヒルツの横っ腹を思いっきりつねる

ど目立ち!

小早川のささやかな復讐。


ホテルのチェックインを済ませ、観光地をブラつき、ドックレースに興じる。

「サソリ」に見つけさせるためだ」

軍資金はたっぷりせしめた。あそんじゃおーっと。

ヒルツ大尉超ご機嫌!小早川少尉超不機嫌!この男(今オカマ)とても真面目、資金の乱用には特にうるさい。しかし表情にはけっして出さなかった。「ジグラット」での訓練の成果である。

「キャーパパ!また勝っちゃった~すっごーい!あたしシャネルのティアラがほしぃーのー。ねぇ~買って~」

小早川もーヤケクソ。

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