第8話
8ヒルツ大尉西へ・8小早川の涙
「クラブ☣ジグラットの魔女」
豪奢な食事、酒、華麗なダンス、スリリングなギャンブル、そしてあらゆる客の嗜好に答える、春をひさぐ男と女。
各界のVIP御用達の魔城。お忍び用の秘密の地下道も備えた空にそびえる
極彩色の城♪。
小早川はメークさんに仕立ててもらい、胡蝶蘭のようなドレスを着た。
元々端正な顔立ちであったため、そこいらの女より美しくなってしまった。
その姿を見て大喜びしたのはお化けちゃんとゲイセクションのマッチョ達。
それが災いした。
綺麗どころのお姐様達の凄まじい嫉妬とひんしゅくを買った。
初日には、官給品の軍服や私物の着替えなどビリビリに引き裂かれり、客の前でマドラーを鼻の穴に突っ込まれ、やすき節を踊らされた。
そして毎日ヒールに画鋲を入れらりたり、スタッフ専用ドレッシングルームでは接客態度や、しぐさ、声の出し方、笑うタイミングまでネチネチと底意地悪く指摘された。
「口答え、威圧、強がり、男がやることすべて禁止よ」マライヒちゃんの厳命。
ジグラットではイジメはご法度。
しかし、小早川に対しては
「好きなようになさい」
解禁令が出された。
小早川は一通りの対拷問、洗脳の訓練は受けている。
多少の拷問では奴の口を割らすことは出来ないだろう。
その男が三日目の晩、ドレッシングルームのトイレで声を殺して泣いた
男小早川盾雄のより所、すべての羽を徹底的もがれて。
「おのれヒルツ、絶対昇進して貴様を地獄へ叩き込んでやる!」
その憎しみだけが今の盾雄を支えていた。
真っ赤に眼を腫らしてトイレから出ると、お化けのピン子がお絞りを持って立っていた。
「お化粧直してあげる。」
実は盾雄を最も苦しめていたのはこいつだ。
夜な夜な夜這いをかけては盾雄の貞操を奪わんとしていた。
盾雄には一秒たりとも気が休まる時間は無い。
マライヒは女を集めるのが趣味だ。
これぞと思う女はすぐ欲しくなる。当然軋轢が起こる。
新興の愚連隊。ひも、ふっかけられた金額の三分一を渡して、後は力ずく。
潰した組織は幾つだろう。長年の花町通い。黒社会にも顔が利く。官警も見てみぬ振り。何時しかジグラットは駆け込み寺となった
それぞれにあった仕事も与えた。
苦界でしか生きられない者、そこから這い上がりたい者、一端堕ちたら並大抵のことでは這い上がれない。
マライヒを仏と仰ぐ者、吸血鬼と呪う者。それぞれが持たれかかり生きている。
所詮は「偽善」巌は自覚している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます