第7話

7ヒルツ大尉西へ・小早川の受難

「ハイ!ハイ!ハイ!飲んでグルグル飲んでグルグル吐いちゃダメ!

吐いちゃダメ!ぴょぴょんのピョン吉・・・」

小早川はしたたか飲まされた。意識が亡くなるまで。


翌朝、耳朶に熱い桃色吐息「お・き・て・♡チュッ」

小早川はバネに弾かれたように飛び起きた。

ベッドの傍らにはお化けのピン子ちゃんがピンクのネグリジェ姿で横たわっている。

めまいがした。

士官学校時代、先輩に血反吐を吐くまで飲まされていた小早川は酒には強い。

このめまいは別物だ。

「朝食食べたらママがダンスルームに来てだって、ンフッ♡」

ジグラットには寮もある。外では暮らせない人々もいるのだ。それ以外の理由で住んでいる、女や男達」

ダンスルームには既にサイケデリック(ヒー!)なレオタード姿の長谷川巌が立っていた。

「よく眠れて?さっそくレッスンを開始するわよ。女子の所作叩き込んであげるわ」

「はっ、宜しくお願いします」

「馬鹿者!貴様いつまで軍人気取りでいるかー!」凄まじい激が飛ぶ

小早川フリーズ!

「あら、ごめんあそばせ。同じ言葉でももっとニッコリ、ソフトに抑揚に気を配って言うのよ。先ずはウォーキングね、ピン子とジュディお手本を魅せてやって」

「はーい♡」二人共ノリノリ

ピン子が華麗におどけながらバレーのステップを踏み、ジュディが紗なり紗なりと妖艶に歩く。

小早川がガチガチながらもどうにかこなす。

「ちょっといらっしゃい♡」“マライヒ”(巌)ちゃんに呼ばれる

ロココ調のソファーに二人して座る。

指を絡めながらマライヒちゃんが小早川の耳元でささやく。

「いいこと、貴方の歩き方、男というより軍人そのものよ。一発でばれるわ、先ずはそれよ。それからあなたの知らないモールスを教えてあげるわ。

お昼はそのレッスン、夜はお店でお姐さんについて接客なさい。時間はないのよ死んだ気でやりなさい。」


長谷川巌(マライヒちゃん)彼に男色の趣味はない。

むしろ女好きで通っていた、妻と子もいる。

乙女になった時、離婚したが。

暇があれば花街通い、愛人の影も常に付きまとっていた。

その彼が軍を突如辞め「乙女」になった時、周囲は驚き戸惑った。


彼は幼い頃から、綺麗な服を着ている姉や妹に憧れていた。

自分も紅をさし着飾ってみたい・・・。

厳格な家庭環境がそれを許さなかった。

派手な女遊びも着飾った美女たちを見て、うっとりするのが本当の目的だった。

それをおくびにも出さず、ひたすらじっと憧れていた。

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